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「暁の女神亭」の世界  作者: 水上雪乃
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「目指せ最強装備」~ピーターのアドバイス~

 よ。奇遇だな。アンタも仕入れかい?

 冒険の装備を調えるって?それで商館にきたのか。

 そいつはちょっと筋違いだなぁ。

 港通りにくるより、西ブロックの武器屋だの道具屋だのをまわった方が良いぜ。

 個人装備なら、とくにそうだ。

 商館は、このピーター・ブラッドみてぇな商人が利用する場所さ。

 え?商人じゃなくて暁の女神亭のコックだろうって?

 ははは。こっちも多角経営でね。

 いろんな商売に手を出してるのさ。

 まあいいや。

 こっちの用件は終わったところだ。

 装備を買いに行くなら付き合ってやるぜ。そういやな顔をしなさんなって。

 俺はこれでも商人連中に顔が利くんだ。一緒に行けば多少は割引してもらえるかもしれねぇぜ。



 まずは武器か。

 オーダーメイドってのが、まあ理想なんだがな。なかなかそうも言ってられねぇだろ。

 しょせん武器も道具のひとつにすぎねぇからな。使えりゃそれでいいのさ。

 で、どんな武器を使うつもりだい?

 近接肉弾戦、接近戦、中距離戦、遠距離戦。いろんな戦い方があらぁな。

 肉弾戦ならクローとかそれ系の武器になるぜ。

 いわゆる暗器ってやつだ。アサシンなんかが好んで使うな。

 接近戦用だと、剣とか打撃武器とかその辺だな。

 中距離なら槍系。

 遠距離武器ってことになると、弓とか魔銃とかだろうな。

 ん?

 魔銃ってのはなにかって?

 よくぞ訊いてくれました。魔銃ってのは、魔法の力で鉛の弾を撃ち出す武器だ。

 これがまた優れものでな。

 俺みてぇな魔法が使えない人間でも使えるんだぜ。

「等化器」なんていわれるな。

 大男にもチビにも、男にも女にも、同じだけのチカラを与えてくれる。誰が撃っても、こいつの威力は変わらねえ。腕力も筋力も関係ねぇんだ。勝負を分けるのは、度胸と技量だけさ。

 異世界じゃ火薬ってのを使うらしいが、ここじゃそんなもんは手に入らないからなぁ。

 お。欲しそうな顔だな。

 けどな、こいつは魔導技術の結晶だ。値の方もかなり張るぜ。本体も弾丸も。

 安い魔銃でも、金貨三〇〇は下らねぇからな。弾丸の方は、一発撃つ金で、安物の剣が一本買えるぜ。なかなか豪気な武器だろ?

 仕方ねぇさ。最新技術だからな。

 普通「魔導砲」っていったら、個人で運用できる大きさや重さじゃないんだぜ。

 要塞とか戦艦に積むんだからな、本来。それをここまで小さくしたんだ。高くなって当然だろうよ。

 広い意味では、こいつもマジックアイテムに入るしな。



 あん?マジックアイテムとはなんだ?

 おいおい、そいつは無知がすぎるってもんだぜ。

 ようするに魔法で強化された道具だな。欲しいなら魔法屋で買うこった。

 もちろん、えれぇ高いぞ。ただで手に入れる方法もあるんだけどな。

 知りてぇか?

 簡単さ。冒険に出て、遺跡だのなんだのから自分で手に入れることだ。自分の欲しいものが手に入るとは、限らないがね。

 それでもまぁ売ればけっこうな金になるからな。損はしないさ。手に入れられればの話だがね。

 なんにしても最初はこのへんに売ってる武器で充分だって。

 この界隈じゃ、最高の品揃えだからな。アイリーンの西ブロックは。

 品質だってしっかりしてるぜ。


 なるほど。ブロードソードにするのか。

 目新しくはねぇが無難な選択だな。ああ、予備にナイフも買っておいた方が良いぜ。

 備えあれば憂いなし、ってな。


 と、次は防具だな。



 まあ、どんな防具を選ぶかは、お前さん次第だが。これだけは憶えておいてくれ。

 完璧な防具なんてねえんだ。

 どんなんでも、多かれ少なかれ弱点がある。

 たとえば防御力の高いフルプレートアーマーなんかは、たしかに固いけどな。重すぎて動きが鈍くなる。

 それこそ魔銃の良い的だぜ。

 こいつはお節介を承知で言うんだが、武器と防具の開発競争は、だいたいにおいて武器の方に軍配があがってる。


 歴史的に見てもそうなんだ。

 重装騎士団が、軽装の長弓部隊に敗北した、なんてのも珍しい話じゃない。

 それにな、冒険者ってのは隠密行動も多くなるだろ。

 あんまりガチャガチャとうるさく鳴る鎧はオススメできないぜ。

 盾だの兜だのを買うのも良いんだが、盾は片手が塞がるし兜は視界が狭くなる。

 こいつらも一長一短だな。


 でもまあ、どんなのを買うとしても、マントも一緒に買った方が良いだろう。

 というのも、これにくるまって寝たりして夜露をしのげるからだ。

 地味な点まで考えるのが、良い冒険者ってものさ。派手に立ち回りを演じるだけが冒険者じゃねえんだぜ。


 お。ブレストプレートにしたのか。

 まあ、それも無難なところだな。


 最後は道具屋だ。



 ここで買うものなんぞ、じつは最初から決まってるがね。

 道具をまとめて入れておくためのリュックに、ウエストポーチ。

 それから戦利品を入れるための袋。ロープにマッチにランタンに予備の油。

 テントや寝袋も買うと良いさ。

 余裕があったらだけどな。


 うん。だいたいこんなもんで装備品は揃ったな。

 え?これで冒険に出る準備はOKかって?

 いいや。

 大事なものがひとつ足りねえ。

 しかも、この最後のは、どんな店を覗いたって絶対に売ってねえのさ。

 んー?

 判らないないかい?

 ははは。しょうがねぇやつだな。教えてやるか。


 冒険者の最大の武器で、最も大切なもの。

 つまり、「仲間」さ。

 こいつばかりは、自分で見つけないとな。

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