「暁の女神亭にいらっしゃいませ♪」~バロック奮闘記~
いらっしゃいませ~♪
外は寒かったでしょう。暖まっていってくださいねぇ。
お食事ですか?それともお酒?
はい。お酒ですね。
カウンター席へどうぞ。
お客さまは、暁の女神亭ははじめてですか?
あたしチーフウェイトレスのバロックっていいますぅ。どうかよろしくです☆
えへへ☆チーフっていっても一人の部下もいないんですけどね。
え?他の店員ですか?
ええっとですねぇ。
オーナーの木蘭さん。店長のキースさん。コックのデュークさん。
ほかにも何人かいますよ☆。
お母さんはもっと増やすって言ってましたけどぉ。
あ、お母さんっていうのは、木蘭さんのことです☆
養女なんですよ。あたし。
美人母娘がいる店☆
なんちゃって♪お母さんが店に来ることはほとんどないんです♪
はいどうぞ。エール酒です。おつまみはなにが良いですか?
チーズとナッツですか?はい。承知しました☆
部屋をお取りになるときは、店員におっしゃってくださいね。
個室と大部屋がありますから。
あ、大部屋ってのは相部屋です。
個室の方は一日三食が付いて、銀貨七枚。
大部屋は素泊まりで、銀貨四枚です。
パーティーで宿泊するなら、大部屋の方が便利ですよ~
でもまあ、女性お一人なら個室の方が安心でしょうけど。
個室にはちゃんと洗面所もありますしね☆
お風呂ですか?
えっと大浴場があります。内風呂ですけどちゃんと男女わかれてますから☆
あ、でも、酔っぱらってお風呂にはいるのはダメですよ?
溺れちゃいますからね☆
それから、女風呂を覗いたりしたら鉄拳制裁されますから、注意してくださいね♪
え?武器を持ってるから平気ですって?
あはははーダメダメです。
暁の女神亭では、室内での抜刀を例外なく禁止していますから☆
刃のついていない武器なら良いって意味じゃないですよ。
ようするに、人に怪我をさせるような道具の使用は、ここでは全部禁止なんです。
あと、攻撃魔法も禁止ですね。
酒場なんで、多少の喧嘩はあるでしょうけど。
武器とか魔法とか使ったら、殺し合いになっちゃいますからねぇ。
それからっ!
入ってくる時は、ちゃんとドアから入ってきてくださいね☆
当然だろって?
いえ~いるんですよぅ。窓から入ってきたり、床板あけて入ってきたり、
転移魔法でいきなり現れたり、酷いときには屋根突き破って落ちてきたり。
なんというか、常識を破壊する行動をする人が。
困ったものですよ。まったく。
え?
あのピアノですか?
そうですねぇ。ホールの中をざっと説明しましょうか。
いまお客さまのいる場所がカウンター席です。
店員はたいてい、このカウンターのなかにいますから。
注文するときは声をかけてくださいね。
あっちがテーブル席です。
四人がけが一〇席と、八人がけが四席。
パーティーで密談する時なんかは、テーブル席の方が良いでしょうね。
端の方にあるピアノは、誰が弾いても良いんですよ。
横にちょっとしたスペースがあるでしょう?そこで歌うのも良いかもですねー
ええ。立ち寄る吟遊詩人のためにって、わざとスペースをあけてあるんです。
暇な時とか、たまにお母さんが歌ってますよ☆
ピアノ周りにソファーがありますよね。
あそこでくつろぐのも良いですよ。
でも、暖炉が近くてぽかぽか暖かいので、うたた寝なんかしないようにしてくださいね☆
風邪ひいちゃいますよぅ。
奥の通路は、お手洗いとか大浴場につながっています。
お風呂あがりは暑いですけど、タオル一枚とかでホールをうろうろしないでくださいねぇ?
他のお客さまがびっくりしちゃいますから☆
えっと、ホールの説明はそんな感じですねぇ。
あ、そうそう。暁の女神亭はペット同伴OKです。
でもぉ、あんまり大きいのは庭に繋いでおいてくださいね?
馬とか連れて入ってきちゃダメですよ?
危険なペットを連れてくるのもダメです。
キマイラとかケルベロスとか。
本人にはなついていても、他のお客さまは怯えちゃいますから。
怖がらせて楽しもう、なんて、良い趣味じゃないですよぅ。
あれ?
お客さま?
もう酔っちゃいましたか?
仕方ありませんねぇ。
まあ、エールは強いお酒ですから。
うふふふ。酔うからこそお酒は楽しいんですよね。
いくら呑んでも酔わないなら、お酒を飲む楽しみなんて無くなっちゃいますから☆
酔えない人っていますけど、あたしにはむしろ呪いみたいに思えます。
なにもかも忘れて、酔い潰れて眠ってしまいたい夜もあるでしょうに。
でも、自分の酒量を知ることも大切ですよね。
えっと、お客さまはどうなさいますか?
このまま泊まっていかれますか?
あ、お帰りになるのですか。
月がとっても綺麗な夜ですから、歩いているうちに酔いも醒めていくでしょう。
それでは、夜道にお気を付けて。
またのお越しを、心よりお待ちしております☆