新アイリーンの歩き方3 アイリーン探訪ツアーにようこそ
アイリーン探訪ツアーにようこそ。
それではこれより花の都をご案内いたします。
ここ西の街門をスタートいたしまして南、中央、東とまわり、またここに戻ってまいります。
北ブロックは治安も悪く、見るべき観光スポットもありませんので、今回のツアーでは立ち寄りません。
さて、それでは出発いたします。
王都のことについては道々ご説明いたしますので、お耳を拝借。
アイリーンは五つのブロックから成り立っています。
商業地帯の西ブロック。
王城や役所などがある中央ブロック。
港や歓楽街のある東ブロック。
アイリーン大聖堂お各種学校のある南ブロック。
スラムなどが点在する北ブロック。
にぎやかなのは西と東ですね。
陸と海の玄関口です。
世界各地の富と情報は、この東西の窓からアイリーンに入り、そしてまた各地へと散っていきます。
ちなみに各種のショップがあるのも西ブロックですね。
新進の武器メーカー「メルヴェール」も、ここに本社を構えていますよ。
南ブロックには、アイリーン大聖堂があります。
あの立派な建物がそうですね。
至高神アイリーンを奉じるものたちの総本山です。
こちらで傷を癒してもらったり、呪いを解いてもらったりすることができますよ。聖水なども販売しています。
また、この南ブロックには軍学校や魔法学院などの学校も揃っています。
まさに頭脳都市ですね。
ここから彼の常勝将軍、白薔薇の騎士などが巣立ってゆきました。
図書館等の施設も充実していますし、魔法使いギルドのアイリン支部があるのもこの地区です。
治安も、中央ブロックに次いで良好ですが、そもそもここは夜歩きなどをするような場所ではありません。
学問と宗教のおごそかな雰囲気こそがよく似合います。
まあ、ちょっと退屈な街かもしれませんね。一般人にとっては。
次にご案内するのは中央ブロックです。
世界の中心アイリーンの中でも、本当の中心。
ご覧ください。あのアイリーン城の姿を。
名君マーツ陛下の居城にして、世界でもっと壮麗な宮殿です。
かつてこの街に天空魔城インダーラが攻めてきました。ですがアイリーン城は小揺るぎもせず、敢然と魔王を迎え撃ちました。
この城には花木蘭将軍やガドミール・カイトス将軍、宰相ビゼンテ侯爵に「信義の人」スタンニ公爵、そのほか数え切れないほどの名臣、名将が綺羅星のように集い、世界の中心を支えています。
王妃優蘭陛下も、もちろんそのお一人ですね。
先年、王国の人々すべてが待ち望んでいた王子アルム殿下が誕生し、ご母堂としてマーツ陛下の補佐役として、ますますの活躍をしておいでです。
ご成婚当初は、木蘭さまの身代わりだとか、残酷な噂も立ちましたが、とんでもありません。
王妃陛下は、アイリンの母として木蘭さまにまったく見劣りしないお方でした。
さて、アイリーン城を取り巻くように建っているのが、各政庁や軍関係の施設です。
有名な青の軍の司令部も、こちらにあります。
あのスカイブルーの軍旗が翻っている建物がそうですね。
ちなみに、その奥に見える辛気くさい建物が財務庁舎です。あそこにいるのが木蘭さまのライバルとして悪名高いファフテンさまです。
ええ。あの木蘭嫌いで有名な、あの方ですよ。
ほんと、いやですよねぇ。
それではお待たせいたしました。
世界最大の歓楽街、東ブロックへとご案内いたしましょう。
咲き狂う毒花のような危険な美しさ、誘蛾灯のように人々を引き寄せる、など、アイリーンを表した言葉はたくさんありますが、この多くは東ブロックに捧げられたものです。
数百軒をかぞえる娼館。それに数倍する飲食店。
最高の酒と、最高の女と、最高のサービスが、この街には溢れています。
その気になれば、エオス中の快楽を享受することもできるでしょう。
もちろん、相応の代価が必要ですが。
中央大陸最大級のカジノがあるのもこの街です。
一攫千金の夢が広がりますね。
南ブロックなどに比べると治安は良くありませんが、それでも他の都市の歓楽街に比べれば格段に良好です。
というのも先年、裏町を牛耳っていた盗賊ギルドが壊滅し、犯罪者の数が激減したからです。
カジノに入って身ぐるみ剥がれた、などというのは犯罪でもなんでもありませんよ?
遊ぶ側に自制心が欠けているだけです。
そろそろこのツアーも終盤に近づいてまいりました。
最後に皆さんを、この世で最もむ怖ろしい場所へとご案内いたしましょう。
運が悪ければ、歴史の生き証人になれるかもしれませんよ?
見えてきました。
彼の常勝将軍、花木蘭さまが建てた冒険者の店。
暁の女神亭です。
~王都アイリーンで開催されている人気のツアーより~