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「暁の女神亭」の世界  作者: 水上雪乃
10/17

「魔法学研究所」~アル教授の課外授業~

 いらっしゃい。

 ようこそ私の研究室、リトルハピネへ。

 あ、その辺のものに触らないでくださいね。

 襲いかかりますよ。


 それで、今日はどのようなご用件ですか?

 ‥‥なるほど。

 魔法の真理ですか。

 少し長い話になりますが、よろしいですか?



 魔法の成り立ちを説明するのは、

 世界のはじまりからお話ししなくてはなりません。

 でもそれは不可能です。

 世界がいつ生まれたか。人々がいつ誕生したか。

 それを答える術は、誰ももっていないのですから。

 魔法学が空前の進化を遂げたのは、

 大陸暦五〇〇年頃のことだと言われています。

 いまから、だいたい一五〇〇年ほど前のことですね。

 大陸暦というのは、旧帝国暦とも呼ばれています。

 昔、この中央大陸全土を支配した強大な帝国がありました。

 その開闢を元年とした暦です。

 これは今でも使われていますね。

 もちろん、それぞれの国の暦も使われていますが。

 ちなみに共通語が開発されたのも、帝国の時代です。

 もう滅び去った帝国ですが、

 その功績は今もなお讃えられているわけですね。

 話が逸れました。

 魔法というのは、最初から学問だったわけではありません。

 人々が雨を願い、親しい人たちの無事を祈る。

 そういうところから始まったんです。

「まじない」といいます。

 それをスタートとして、徐々に体系化されていきました。

 コモンマジックの誕生です。

 コモンというのは、一般的な、という意味ですね。

 すべての魔法学は、コモンマジックが基本になります。

 魔法学の発展に伴い、錬金術も進歩していきました。

 錬金術というと石を金に換えるとか、胡散臭いイメージがありますが。

 現在の科学技術のほとんどが、錬金術をベースにしているんです。

 元素変換テクノロジー、といえば、多少は妖しさが取れるでしょうか。

 ごく単純にいうなら、水素と酸素から水を作る。

 酸素の元素式を換えることによってオゾンを作る。

 そういうようなものです。

 はい。

 魔法も錬金術も、学問なんです。

「ありえざるチカラ」ではありません。

 すべて、法則に基づいて発動しているんです。

 これは呪符をつかった魔術や、魔法陣を使った魔法、召喚魔法なども同じです。

 違うのは、神聖魔法と精霊魔法。それに精神魔術でしょうか。

 つぎは、この3つについてお話ししますね



 神聖魔法は、厳密には魔法と呼べるものではないかもしれません。

 神の奇跡、だからです。

 おもに神官や僧侶たちが用いますが、根源になる力は信仰心です。

 私は詳しくありませんが…そうですね、ジレルさんにでも尋ねると良いでしょう。



 精神魔術というのは、いわゆる不条理の力ですね。

 異世界では「超能力」と、いうらしいです。

 手も触れずにものを動かしたり、他人の心を覗いたり、

 数百メートルの空間を一瞬に跳んだり。

 これらは何の法則性もなく発動します。

 しかも修行や学習によって身に付くものではありません。

 生まれもった力です。

 それゆえにこそ、この力を持った人々は人前で使うことを嫌がります。

 努力で得たものならともかく、そうでないものは必ず嫉妬の対象になりますから。

 モンスター扱いされたりするなど、べつに珍しい話でもありません。



 精霊魔術も、学問とは少し違いますが、超能力とも違います。

 これは、修行で身につけるものです。

 大地、風、水、炎、これら自然に存在するものたちと交信し、友好関係を結ぶことでその力の代弁者たる精霊の力を借りるんです。

 他者の力を借りるという点においては、神聖魔法に近いかもしれません。

 しかし、精霊は神々に比べて、ずっと人間に友好的で、興味を持っています。

 悪戯好きな、風の精霊シルフ。

 短気で攻撃的な、炎の精霊サラマンダー。

 控えめで優しい、水の精霊ウンディーネ。

 頑固者で知的な、大地の精霊ノーム。

 他にもまだまだいますよ。

 森の精霊、酒の精霊、鉄の精霊、山の精霊、川の精霊、エトセトラエトセトラ。

 機会があれば、修行してみるのも良いかもしれません。



 魔法の使い方、ですか?

 うーん‥‥。

 行使より研究にこそ、魔法学の真髄があるのですが。

 でも、あなたのような冒険者なら、たしかに理論より実践ですね。

 魔法はざっと四種類に大別されます。

 攻撃魔法、防御魔法、補助魔法、回復魔法、です。

 どうしても派手な攻撃魔法にばかり目がいってしまいますが。

 補助魔法をどれだけ上手く使いこなすかに、魔法使いの質が問われるといっても過言ではないです。

 魔法は万能の力ではありませんから。

 強大な敵に立ち向かってゆく味方の足に羽を生やし、砂漠を移動する時には大気から水を作り、危険を予知して仲間に助言する。

 そういう役割を、魔法使いは担います。

 サポート役という言い方が、一番近いかもしれませんね。

 地味な役回りです。

 まあ、無責任さと派手好みは、だいたいにおいて比例関係にありますから。



 え?

 憶えた方が良い魔法ですか?

 難しいですねぇ。

 たとえば、武器に魔力を付与する「エンチャントマジック」などはいかがでしょう。

 これで、ゾンビやスケルトンといった

 アンデッドモンスターとも、戦えるようになりますよ。

 でも極意は、「信頼できる魔法使いを仲間にする」です。

 なにもかも自分でできる必要はありません。

 すべてに関して専門知識を持つ必要もありません。

 剣にも魔法にも盗賊技能にも専門家がいますから。



 お帰りですか?

 こんな話でよければ、いつでも聞きにいらしてくださいね。

 あ、その前に。

 受講料は、銀貨二枚です☆

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