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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第三章 検査? 入院?
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検査

「うわぁ」

 全体的に薄暗い上にタイルの目地は黒く染まっていて、個室を区切る木の板は、湿気が多いのか、微妙に歪んでいるように感じられた。

 思わず声が出てしまったのは仕方の無いところだと思う。

「……えぇっと……」

 どうしようかと思っていると、お姉ちゃんが「津田さん」と看護師である津田さんに声を掛けた。

「なにかしら?」

「えっと、凛花は急に足に力が入らなかったりしてたので、一人で個室は危ないかも知れないです」

 お姉ちゃんの言葉に、津田さんはハッとした表情を見せて「確かに、それはそうね」と頷く。

「身体障害者用の御手洗いもあるからそっちに行きましょうか?」

 そう尋ねて来た津田さんに、私はこのトイレを使わなくて済みそうでホッとしながら「検査って凄く時間がかかりますか?」と聞いてみた。

「一応、もう、外来の検査は終わってる時間だから、凛花ちゃん優先で、一時間はかからないと思うけど」

 津田さんの返答を聞いて、私は軽くお腹をさすってみる。

「多分そのくらいなら大丈夫なので、検査室に……」

 そう伝えると、津田さんは頷きながら「念のためだったし、無理には行かなくても良いわよ」と言ってくれた。


 廊下よりも少し冷えた検査室内は、ベッドで入室する人もいるのもあってかなり広かった。

 私をここまで連れてきてくれた津田さんとお姉ちゃんは既に廊下に出ていて、技師の先生に入れ替わっている。

「ベッドの上に乗り移れますか?」

 私は「大丈夫です」と答えて車椅子のステップを上げた。

 そのまま立ち上がって、シートにくるまれた機械に備え付けられたベッドのシートに腰を下ろす。

 お姉ちゃんは部屋の中にはいないけども、技師の先生は男性だし、一応スカートを整えつつ横になった。

 細かい位置を指示されて、髪の毛を背中で踏んでダメージを受けないように気をつけつつ、頭の位置を決めると、すぐに検査に入ると宣言されたので了承する。

 目を閉じていて言いそうなので、寝ないように気をつけながら検査の終わりを待った。


 検査が終了して車椅子で廊下に出ると、ユミリンと千夏ちゃんに取り囲まれてしまった。

「リンリン大丈夫?」

「凛花ちゃん、車椅子が必要なほどなの?」

 もの凄く深刻そうな顔で聞いた来る二人に、私は無理しているように思われないように、変に明るくなり過ぎないように気をつけながら「念のためだよ。体調が悪いわけじゃないよ」と伝える。

「でも、二人とも、心配してくれてありがとう」

 頭を余り動かさないように言われているので、頭を下げない代わりに、感謝の気持を笑顔に込めてみた。

「当たり前でしょ、親友なんだから」

 サラリと言うユミリンに対して、千夏ちゃんは自分で自分の指を弄びながら「そうよ。お友達だもの」と目を逸らして頬を赤らめる。

 千夏ちゃんのリアクションに胸がキュンと締め付けられる感覚がしたけど、私は学習できるのだ。

 気持のままに千夏ちゃんに絡むと、ユミリンが面白くないあろうと考えた私は、ニコニコと微笑むだけに止める。

「凛花」

 名前を呼ばれたので視線を向けると、お母さんが手を振っていた。

「お母さん」

 返事をしてから、気付いた気になることを口にする。

「あの、お姉ちゃんは?」

「いったん帰ったわ。お父さんと一緒に着替えてから戻ってくるって」

 なるほどと思いながらも、話がもの凄い大事になってしまっていることに、後ろめたさを感じてしまった。

「大丈夫よ。お父さんは心配はしても怒ったりはしないわ」

 完全に私の思考を見通したお母さんの言葉に、何も言えなくなってしまう。

「凛花はちゃんと検査を受けて、病気なら治して、お友達のためにも早く元気にならないとね」

 お母さんの言葉に「そうだね」と返した。

 その後でユミリンと千夏ちゃんに「多分大丈夫だから、あんまり心配しすぎないでね!」と伝える。

「まあ、私はリンリンが元気になるって信じてるよ」

 ユミリンに続いて、千夏ちゃんは何を考えているのか、怒ったり悩んだりと百面相をしてから「凛花ちゃん!」と私を指さした。

「は、はい?」

「最初のお泊まり会は駄目になりそうなんだから、ちゃんと責任取って、次のお泊まり会を主催してよ!」

 千夏ちゃんが泣きそうな顔で言うのには、何かありそうだなと思ったけど、敢えてそこには触れずに「うん。楽しみにしてて! というか、今日この後……」と口にしたら、お母さんに割り込まれてしまう。

「あ、凛花、今日は経過を見たいから、泊まっていくようにって言われたわよ」

「はい?」

 サラリと言うお母さんの言葉に理解が老津行かず、私は瞬きを繰り返すことになった。

「泊まるって……」

「検査入院ですって」

 ようやく意味を飲み込めた私は「なるほど」と返す。

 その後で、千夏ちゃんに向き直って「ごめんね。今日は無理みたいだから、やっぱり次の機会を用意するからね」と手を合わせて謝った。

「ちゃんと元気になってからだからね!」

 千夏ちゃんの言葉に「もちろん」と同意したところで、津田さんが「凛花ちゃん」と私の名前を呼びながら近づいてくる。

「あ、津田さん」

 歩み寄ってきた津田さんに返事をすると「あら、お母さんと……お友達?」と周りを見渡しながら聞いてきたので「はい」と答えた。

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