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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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お誘い

「ほんと!? 助かる~。こっちに来てから、未だ友達ができてなかったから」

 千夏ちゃんは苦笑しながらそう言った。

 正直、本来の千夏ちゃんの性格や態度なら友達を作るのに苦労しそうに無いとは思うのだけど、一人小学校からの持ち上がりでなかったり、目を引くほどの美少女だったりと、周りが一歩引いてしまったのだろう。

 クラスは違うけど、私たちとの付き合いが切っ掛けになってゆとりが出来れば、千夏ちゃんなら自分のクラスに友達を増やすのも簡単なはずだ。

 そんな事を考えて板からか、私は何も考えず「友達が増えても、仲良くしてね」と口にしてしまう。

 すると、千夏ちゃんは「あら、やだ、可愛い」と言って抱きしめてきた。

「ち、千夏ちゃん!?」

「いやぁ、ほんとかわいいなぁ、凛花ちゃん」

 抱きしめたままでしみじみという千夏ちゃんに、何故か悲しんでるような気配を感じた私は、その背中を可能な限り優しく叩く。

 すると、背中を叩いたことに反応したのであろう千夏ちゃんが、息を呑んだのが伝わってきた。

 それだけでなんとなく、これまでの千夏ちゃんは、一生懸命背伸びをしていたんじゃないかと閃く。

 演技が上手だった千夏ちゃんが、普段から演技をしていたというのはあり得ることじゃないかと思った。

 何かしっかりとした確信があるわけじゃないけれど、千夏ちゃんが懸命に頑張ってきてたんだなと思うと、つい繰り返し背中を叩いてしまう。

 けど、お姉ちゃんもユミリンも、そして背を叩かれている本人も、止めたり嫌がったりはしていないので、千夏ちゃんが離れるまでと決めて、私は彼女の背を叩き続けた。


「なんか、んー……言葉に出来ないや」

 私から離れた千夏ちゃんは、照れたような表情でうつむき加減にそう言った。

「アンタもいろいろあったのね、チー坊」

「何それ、急に馴れ馴れしくなったわね。ユミリンさん」

 何故か絡みにいったユミリンと千夏ちゃんが、お互いに不敵な笑みを浮かべて向き合う。

 なんだか、事件でも起きそうな気配に、止めた方が良いかなと思ったところで、お姉ちゃんが私の前に立って「はい、二人とも、仲良くしないと、凛花が悲しむわよ~」と言い出した。

「嫌だなぁ、良枝お姉ちゃん。なかよしだよ、私たち、ねぇ、チー坊?」

「そうよねぇ、ユミリンさん」

 ぜ、全然仲よさそうに見えないけど、ぶつかり合いそうな気配は去ったので、余り望みすぎは良くないと考えて納得することにする。

「じゃ、遅くなったら、良くないし、早く帰りな、チー坊」

 ユミリンは後ろのマンションを指さしながら、千夏ちゃんにそう告げた。

 明らかに早く帰れといワンばかりだけど、確かに日が暮れてきているので、家族に心配を掛けないためにも帰った方が良い。

 けど、千夏ちゃんは「大丈夫よ。今日も私一人だし」と、小さな声で呟いた。

「あー、じゃあ、ウチにご飯食べに来る?」

 それを聞いたお姉ちゃんが、サラリと千夏ちゃんを誘う。

「「えっ!?」」

 驚きの声を重ねたのはユミリンと千夏ちゃんだった。

「ウチは家が大きい方だし、お母さんは人が来の好きだし」

 お姉ちゃんはそこまで言うと、私に振り返って「ね、凛花?」と聞いてくる。

 私は「うん」と頷いてから「でも、急に誘っても千夏ちゃん大丈夫?」と尋ねた。

 すると、かなり食い気味に「行きたい、大丈夫だから、行きたいですっ!」と千夏ちゃんは私とお姉ちゃんの手を取る。

「うん。それじゃあ行こう……あ、泊まる?」

 お姉ちゃんの流れるような問い掛けに、千夏ちゃんは驚きから感激、笑顔とクルクル表情を換えて「いいんですか!?」と声を弾ませた。

「大丈夫よ、家族が良いなら」

 お姉ちゃんがそう答えると、私の意見も確認するためか千夏ちゃんの目が私に向く。

 私も問題ないという意味を込めて頷いてからユミリンを指さした。

「ユミリンも、家族がいない日はウチに来て泊まったりしてるから、大丈夫だよ」

 私はここで更にさっき再燃した情熱に背中を押されて「何なら、勉強もしよう! ユミリンとお姉ちゃんはすぐ遊ぼうとするから」と言い加える。

「ちょ、凛花!」

「リンリン、勉強なんてしたいヤツそうそういないんだよ」

 抗議してくるお姉ちゃんとユミリンとは違って、千夏ちゃんは「いいの!? ほんと? 私どう勉強して良いかわからなくて困ってたんだ」と私の誘いを喜んでくれた。

 この千夏ちゃんの反応に、私の中の教師魂が激しく燃え上がる。

「うん! 任せて、これでも教えるのはそれなりに得意なんだ!」

 私が教員免許を取ったのは京一だった時で、しかも当時の記憶は多少曖昧ではあるし、その時と現時点では各教科の内容に違いがあるものの、勉強の仕方の基本に変わりは無いので、ちゃんと千夏ちゃんの支えになれる自信があった。

「すごい……ちゃんと自信があることだと凛花ちゃんってこんなに頼もしいんだね」

 驚いた様子で目を瞬かせている千夏ちゃんに、私は「なんだか、普段の私が頼りないみたいじゃないですか!」と冗談めかしてツッコむ。

 けど、千夏ちゃんにはスッと目を逸らされてしまって、無駄なダメージを負うことになった。

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