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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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迷走と決意

『私が子供っぽく見えているのは、身体に引き摺られているからであってね。私は成人だったんだから、思考は大人なんだ。姿がそう見えてるだけでね』

 私の強い主張に対して、リンリン様から『口に出さねば伝わらぬぞ、主様』と呆れが滲み出る言葉を掛けられた。

『仕方ないでしょう、私の事情を説明するわけには……』

 そこまで考えたところで閃く。

『あれ? この世界でなら、辻褄とか考えずに、全てを言葉にしても、いいんじゃ?』

 この世界が仮初めで、生まれたばかりなら、この世界のことはこの世界で完結するわけで、それならば多少私のことが伝わってしまっても、問題ないのではと思えてきた。

 対して、リンリン様が『あれじゃのう。いわゆる『無敵の人』と呼ばれるものの、思考じゃの』と冷ややかな指摘が飛んでくる。

 それを聞いた瞬間、一気に冷静さが蘇ってきた。

 何しろ『無敵の人』というのは、私の解釈では『社会的に失うものが無いから、躊躇無くなんでもできる。たとえそれが犯罪だったとしても』という身勝手の極致に達してしまった人である。

 それは悪意と被害を撒き散らす忌むべき存在だと私は考えていた。

 単に私の事情を知ってもらって、私が本当は大人なのだというのを訴えたいだけで、この世界を壊したいわけでも秩序を崩したいわけでもない。

 と考えたところで、リンリン様から『それならば『無敵の人』とは違うかも知れぬのう』という評価も飛んできた。

 良かったと素直に思った私は、それならばと考える。

 けど、リンリン様は告白をしてみようかと考えた私にまたも冷や水を浴びせてきた。

『主様。真実を言ってみれば良いとは思うのじゃが……そもそも、信じて貰えるかは別問題じゃと思うのじゃ』

 私は内心の動揺を隠しながら『ど、どういうことかしら?』と問う。

 対してリンリン様からはすぐに返事が齎された。

『例えばじゃ。主様の使える能力のいくつかは実演も出来るし、納得させることは容易いじゃろう』

『う、うん』

『しかしじゃ、主様が元々は成人男性だったというのをどう説明……いや、証明するのじゃ?』

 リンリン様の言いたいところがよくわからずに、私は反応できない。

 私の理解が追いついていないことは、リンリン様にも伝わっているので、アプローチを変えた問い掛けが来た。

『例えば、京一の姿に変身したとして、それが元の姿だと証明できるかの?』

 リンリン様の言葉に、私は『できないかも』と直感的に思ってしまう。

 成人男性に変身できることは証明できても、それが元の私だという証明にはなら無いのだ。

『そもそも、この世界では姉も母も父もおるわけじゃが、その状況で自分の元の姿とか、本当の姿という類いの話がすんなり受け入れられるとは思えぬのじゃが?』

 容赦の無いリンリン様の指摘に、私は何の反論も出来なくなってしまう。

 けど、リンリン様はそこで手を止めてくれたりはしなかった。

『別のアプローチとして、成人男性だった記憶があると主張したとして、未来の世界で成人だったというのかの?』

 この昭和の世界では、平成ですら存在していないのに、更にその先の時代で生きているなんて話が通じるとは思わないし、そこで大人だったって言う主張をした場合、生暖かい目で見られる自信がある。

 ならば大人だったという事だけ訴えたらどうかと考えたのだけど、リンリン様に『のう、主様。頭の中を白紙にして考えて欲しいのじゃが、少女が以前は成人男性だったと主張したとして、普通はそれを前世の記憶と受け取られたりはせんかの?』と言われてしまった。

 更に『八方塞がりではないかの?』ととどめを刺されてしまう。

 結論として、私には白旗をあげる以外の選択肢はなかった。


 子供っぽいと思われているなら、頑張って大人っぽい立ち振る舞いをすれば良いと私は考えを改めた。

 生まれたばかりの世界に積み重ねはない。

 故に、外見に釣られて、幼い印象を与えてしまっていたかもしれないけど、立ち振る舞いはこれから積み重なっていくものだ。

 言葉で無理矢理言いくるめるよりも、態度で納得させる方がスマートで格好いい。

 決して、納得出来る証拠がなくて怯んだりあきr溜めたからではないと、リンリン様には強めに訴えておくことを忘れない私に抜かりはなかった。

 自己満即でほくほく顔になった私の頭にポンと手が置かれる。

「え?」

 手の主を確認しようと視線を動かせば、底には満面の笑みを浮かべるお姉ちゃんがいた。

「凛花、ご機嫌ね。私も凛花が嬉しそうだと嬉しくなるわ」

 そう言いながら頭に乗せた手を動かして頭を撫でてくる。

 すぐにやめて欲しいと言いたかったけども、嬉しそうにするお姉ちゃんの表情を曇らせたくなくて、私は踏み止まった。

 元はお姉ちゃんよりも大人だった私である。

 仮初めとはいえ、嬉しそうな姉の為に、甘んじて状況を受け入れるのも大人の反応というものだ。

 決して頭を撫でて貰えて嬉しいとか、心地良いというわけはない。

 リンリン様が勘違いしてはいけないので、心の中で私の心境を説明して、しばらくはお姉ちゃんの気分に身を任せることにした。

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