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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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納得の答え

『主様がこの世界を後にすれば、消えてなくなる可能性が高い』

 リンリン様の言葉は悪魔の囁きも同然だった。

 それならば、リンリン様とオリジンの推測通りだったならば、自分の思うままに行動してもいいんじゃないかと思えてしまう。

 対して、リンリン様も『この先、何が起こるかわからない以上、その時に精神的に主様が安定していること、落ち着いていることは肝要じゃな』と背中を押してきた。


「はじめ先輩、雅子先輩」

 呼びかけると二人が私に期待の籠もった視線を向けてきた。

 求められている言葉も、私が言おうとしている言葉も同じだという確信が、妙に心地良い。

「あの、本格的に入部してみようかと思います」

 雅子先輩が嬉しそうに、でも驚いたような顔で「ほんと? ほんとに!?」と聞いてきた。

 はじめ先輩は「歓迎するわ」と微笑んでくれる。

 本当はお姉ちゃんとか、ユミリン達の意見を聞いてからの方が良かったかもしれないけど、今の私の気持ちとしては、入部以外の選択肢はないので、反対意見が出てしまったら、ちゃんと説得しようと心に決めた。


 一応、お姉ちゃん達を説得するつもりだったんだけど、私の入部したいという意見は、演劇部の皆に歓迎して貰った。

 ユミリン達も入部に反対はないだけでなく、一緒に入ってくれるらしい。

 意外にも一番喜んでくれたのは、斎藤さん……改め千夏ちゃんだった。

 一年生で演技メインの子がこれまでいなかったので、仲間が増えた事を純粋に喜んでくれたのである。

 そんなわけで、気持ちを固め、入部も決めた私だったけど、そこで新たな課題が出てきた。


「ちゃんと説明すればわかってくれると思うから一緒にお話しに行きましょう」

 お姉ちゃんの言葉に、私は緊張しながらも「うん」と頷いた。

 部活を変える以上、元々入部していた剣道部に天部の説明をしないわけにはいかない。

 そんなわけで、まずは顧問の先生に自分の意思を伝えることになった。


 顧問の先生は、丁度部活を見ている時間だったので、私は活動場所である体育館へと向かった。

 付き添いはお姉ちゃんである。

 ユミリンや史ちゃんも申し出てくれたんだけど、部T量であり家族であるお姉ちゃんが付き添って説明するのが、シンプルで大事にならないだろうという判断で、お姉ちゃんだけに決まった。

 体育館へと続く渡り廊下を歩きながら、お姉ちゃんに「部活をしないって言う方法もあると思うんだけど、本当に演劇部に移動していいの?」と主に私の体調を気遣うような質問を投げられる。

 ちょっと前は、この世界の私という遠慮するという下記を使う相手がいたけども、リンリン様のお陰で、いないかもしれないとなった今、その質問に、私自身の考えだけで応えることが出来るようになっていた。

 なので「何か部活はしたいなって思っているし、剣道部を続けようかって思いもあったけど、お医者さんに止めなさいって言われると、止めた方が良いだろうし……その、演劇部なら殺陣(たて)もあるでしょう?」と冗談気味に返す。

 すると、お姉ちゃんは苦笑しながら「流石に、殺陣はないわよ」と返してきた。

「まどか先輩とか、はじめ先輩とか、普通にこなせそうなのに?」

 間を置かずそう踏み込んでみた私の問いに、お姉ちゃんは「まあ、やりたいっていう希望はあるけど、流石に本格的なものは、中学の演劇では難しいわね」と首を振られてしまう。

「確かに、危ないもんね」

 素直に頷くと、お姉ちゃんは「凛花って、時代劇好きだったっけ? 殺陣に興味があったのね」と目を瞬かせた。

「そういうわけじゃないけど……」

 私の返しに、お姉ちゃんは「じゃあ、なんで剣道?」と尋ねてくる。

 この世界の私……この世界の設定だと、お姉ちゃんと部活選びの理由についての話はしてないんだなと考えた私は、元の世界の理由を少しぼかして答えることにした。

「ちょっと、憧れがあった……のかな、強くなりたいみたいに」

「え!? 凛花が?」

 何故か大きく驚かれてしまったけことに、少し不満を感じながら「おかしいかな?」と聞いてみる。

 お姉ちゃんは私の反応に、無理矢理真面目な顔を作って「おかしくはないわよ」と返してきた。

 何か配慮してくれたんだろうなと察した私は少し話題をズラしてみることにする。

「ほら、剣道三倍段っていうでしょ?」

「さんば……ああ、えっと、刀を持った相手に勝つには三倍実力が上じゃ薙いだダメとかだったっけ?」

 疑問符交じりに言うお姉ちゃんに、私は「だいたいそんな感じ」と答えてから「だから、剣道が出来たら身を守れるかなと思って」と付け足した。

 けど、ピンとこなかったのか、お姉ちゃんがリアクションを取ってくれなかったので、更に「合気道とかあったら、そっちの方が良かったんだけど……」と様子を覗いつつ言い加えてみる。

 すると、お姉ちゃんは「なるほどね!」と突7女として大きく頷いた。

「なんで、凛花が急に剣道を始めたのかと思ったら、護身術ね。納得だわ!」

 まるで長年の難問が解けたかのようなすっきりとした笑顔で繰り返すお姉ちゃんに、私は圧倒されてしまう。

「これからは護られるだけじゃダメって思ったのね! とっても良いことだと思うわ!」

 そう言って抱きしめた私の身体を振り回すようにして、お姉ちゃんはクルクルと回り始めた。

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