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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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難題

 正直、リンリン様の反応に、私はムキなっていた。

 冷静に考えられていたら引き直すべきだったと思う。

 私の手にしていた紙に書かれていたのは『桃』だった。

 引いたくじに書かれた言葉を題材に演技をするというのが、このゲームの根幹である。

 はじめ先輩の『炎』雅子先輩の『巫女』に比べても、お題として『桃』はかなり難しいんじゃないかと思えてきた。

 でも、逃散せずに諦めるのは嫌だったし、無性にリンリン様を驚かせたい気持ちがある。

 それほど本格的に学んだわけではないけれど、元の世界で、潜入作戦の準備として、月子お母さんからは演技指導をして貰っていた。

 ただ、それは設定の女の子になりきる演技であって、お題を元に表現する今回のゲームとは似て非なるものである。

 そういう意味では初挑戦なんだけど、正直、いろんな感情や状況が混ざり合った結果、私はやり遂げたいという気持ちで意思を統一できていた。


 答えて貰うために、まず伝わりやすいのはどんな演技だろうと、私は考えた。

 お題は『桃』なのだから、食べているシーンとか、収穫しているシーンとか、まずは果物であることを表現した方が良いんじゃないかと、方向性を決める。

「それじゃあ、やってみます」

 私が宣言すると、はじめ先輩と雅子先輩がほぼ同時に頷いた。

 二人に頷き返した私は、まずはその場で膝を抱えるようにして丸くなる。

 種から芽が出て、大樹になるイメージを思い描きつつ、膝を抱えていた手を離して膝と胸の前で手を合わせた。

 そのまま腕を上に伸ばして芽が出て、茎が伸びるイメージを表現してみる。

 更に、手を離して、左右ランダムに横へと伸ばして、枝葉が伸びるのを形にしてみた。

 はじめ先輩も雅子先輩も真剣に私の動きを見てくれているものの、流石に未だ情報が足りないので、動きはない。

 私は横に伸ばして枝を表現していた手を戻して、今度は床についてその場で立ち上がった。

 幹を表現したかったので、なるべく足を開かないようにしながら、座った状態でやったのとお同じ、まずは真上に伸ばすジェスチャーを見せた後で、枝葉が左右上下に伸びていく様を見せる。

 両手を斜め上に挙げて、自分の身体でY字を作った。


 相変わらず二人が答える気配はないので、私は左手を斜め上に挙げた姿勢で右手だけを引き戻した。

 間を置かずに、左手のやや下の辺りを右手の人差し指でさしてから、桃を示すために宙に円を描く。

 チラリと先輩方が疑問を抱いていないか表情を確認して、大丈夫そうだと判断した私は右手でその描いた円、仮想の『桃』をもぎ取るのを表現するために、掴んでからひねりを加えた。

 もぎ取った演技をした私は、手にボール状の想像の『桃』を握った状態を保ちながら胸元に引き寄せる。

 お腹の前で、手にした想像の『桃』を上下させてから、口を大きく開けて頬張るジェスチャーをしてみた。

 すると、恐る恐るといった感じで雅子先輩は「ひゃ、ひゃい」と声を裏返らせて手を挙げる。

 伝わったんだろうかと、ちょっとドキドキしながら「はい、雅子先輩」と指してみた。

 雅子先輩はゴクリと喉を鳴らしてから「く、果物狩り」と答える。

 私が表現したかった事は、しっかり伝わったとわかる答えに嬉しくなりながらも、紙に書かれたお題とは違うので「私が表現したものは、雅子先輩の答えてくれた通りなんですけど、お題とはちょっと違います」とはっきりと伝えた。

 すると、今度ははじめ先輩が「それじゃあ」と言って、ハイと手を挙げる。

 指しても良いか確認するために雅子先輩を見ると、私の考えが伝わったのかすぐに頷いてくれた。

 私も頷きで応えてから「それじゃあ、はじめ先輩」と指名する。

 はじめ先輩は「えっと、リンゴかな?」と首を傾げながら答えた。

 果物の名前は合っているものの、残念アガラ種類が違うので「種類が違います」と首を振る。

 すると、雅子先輩が手を挙げながら「そ、それじゃ、ブドウかな?」と種類を変えてきた。

 これも残念ながら違うので、首を左右に振る。

「え、えっと……」

 答えが違ったので、また新たなものを上げようという素振りを雅子先輩が見せたところで、はじめ先輩が「待って、雅子ちゃん。それじゃあ、小台宛ゲームになら無いわ」とローラー作戦を止めた。

 私としては果物を並べて貰って答えに辿り着いてくれても問題は無かったんだけど、確かにゲームの趣旨とは違うので、はじめ先輩が正しい。

 そう思って頷いたところで、はじめ先輩が私を見て「ねぇ、凛花ちゃん、もう少しヒントの演技はできる?」と聞いてきた。

 私は正直、待ってましたと言う気持ちで「はい。考えていたプランがあります」と頷く。

 すると、雅子先輩が「え、スゴイ! さすが凛花ちゃんだね! 演技プランがいくつもあるなんて、本物の女優さんみたい!」と早口で興奮気味に言ってくれた。

 未だ見てないのに絶賛されてしまった私としては恥ずかしくて仕方ないので、少し慌て気味に「それじゃあ見てください」と伝える。

 頭に描いた演技プランに従って、私は演技に入った。

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