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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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正解と三回戦

「り、凛花ちゃんが、き、気合を入れるところじゃないよ、う、な?」

 どうやら気合を入れた私を見て、雅子先輩は狼狽えてしまったようだ。

 慌てて「ああ、ごめんなさい、プレッシャーを掛けるつもりはなかったんです」と口にすると、雅子先輩は「そ、そうだ、よ、ね? 凛花ちゃんはそういう子じゃ無いもんね」と言う。

 確認と言うよりは、そう思い込もうとしているように見えたので、私は敢えて声を掛けずに見守ることにした。

 しばらく動きを止めていた雅子先輩は、手の中の紙を見ては溜め息を吐き出し、見ては溜め息を数回繰り返したところで「あ、改めてやるね」と私とはじめ先輩に向かって宣言する。

 変に声を掛けると、思いもしない反応をされてしまうかもしれないと考えた私は、無言で大きく頷いた。

 はじめ先輩も同じように考えたのか、笑みを浮かべたまま何も言わずに頷く。

 覚悟を決めた雅子先輩も、頷きで応えてから大きく息を吸い込んだ。


「はぁ……は、はらいーーたまえーーーきよめたまえーー」

 一生懸命発声しているのだけど、緊張が強いせいか雅子先輩の声はかなり掠れてしまっていた。

 それでも懸命に頭の上で、縦に重ねた両手の拳を左右に振っている。

 セリフと動きから連想されるものは一つしか無かった。

「はい!」

 答えがわかったので手を挙げてみると、動きを止めた雅子先輩が「は、はい、り、凛花ちゃん」と私を指名してくれる。

「神主さんですか?」

 結構自身のある答えだったんだけど、雅子先輩は「あっ」と声を漏らして固まってしまった。

「雅子ちゃん」

 すぐにはじめ先輩が名前を呼ぶことで雅子先輩はすぐに我に返る。

 けど、どうも微妙に私の答えは違っていたようで、雅子先輩は困ったように「えーと、その……何というか……」と言葉に詰まってしまっていた。

 ならばと、私は別の答えを口にして見る。

「それじゃあ、巫女さんですか?」

 私がそう聞いて見ると、雅子先輩はパァと明るい表情を浮かべて「そ、そう! せ、正解ッ!」とかなり興奮気味に私の手を取って飛び跳ねた。


「やるわね、二人とも」

 正解を出して盛り上がっていた私と雅子先輩が落ち着いた頃合いを見てはじめ先輩が声を掛けてきた。

「はい。初めて正解して貰えました。凛花ちゃんはスゴイです!」

 話しかけられたことで再び興奮してきたのか、雅子先輩は早口でしっかりと言い切る。

 断言されてしまったものの、私の考えとは違うので、慌てて「いや、雅子先輩の演技がわかりやすかったからですよ」と伝えた。

「祝詞も、大幣を振る仕草も特徴的でしたし!」

 そう言い加えると、雅子先輩は首を傾げながら「のりと? おおぬさ?」と目を瞬かせる。

 私は雅子先輩の反応で、夜踊躍一般的な言葉じゃなかったことに気が付いた。

 なので早速説明をすることにした。

「あの、祝詞って言うのは、神主さんと神子さんとか、神職……神社の関係者の人が遣う、お経?みたいなものですね」

「さっきのだと、祓いたまえ、清めたまえっていう文言ね」

 私の言葉の後で、はじめ先輩はそう言い加えて情報を補足してくれる。

 心強さを感じながら、私は更に説明を口にした。

「それで、大幣って言うのは、木の棒に白い紙で作られた紙垂(しで)……えーと、細長く切って四角に折った紙で出来たものを沢山取り付けた……」

 そこまで言ったところで、まさにピッタリな通称をリンリン様に囁かれる。

 一応、多少なりと神道を学んだ身としては言いたくなかったけど、残念ながらわかりやすいので、雅子先輩にわかって貰うために覚悟を決めた。

「い、いわゆる『()()()()』……ですね」

 ちゃんと正式名称で説明したいというプライドを押し込めた甲斐があって、雅子先輩は「なるほど」と納得を示すように何度も頷いてくれる。

 そんな雅子先輩に向かって、はじめ先輩は「私もその二つがヒントとして完璧だったと思うわ」と言いながら、パチパチと拍手をして見せた。

「あ、ありがとうございます!」

 嬉しそうに頭を下げた雅子先輩は、頭を上げると同時に私を見る。

「凛花ちゃん!」

「はい?」

 私が返事をすると、雅子先輩は「次は凛花ちゃんの番だね!」と、もの凄く嬉しそうに言った。

 期待しているのがありありとわかる表情に、私のお腹がキリキリと痛む。

 それでも、私は平然を装って「が、頑張りますね」と答えた。

 はじめ先輩がそのタイミングで「はい」と言いながら目の前にくじ箱を差し出してくる。

『これはやるしかないの』

 頭の中に聞こえてくるリンリン様の言葉に、私は大きく息を吐け出すと、気持ちを決めた。

「それじゃあ、林田凛花、いきます!」

 覚悟を固めるための宣言をした後で、目の前のくじ箱に手を突っ込む。

 無数の紙が手に当たり、くじの数がもの凄く多いことに驚かさせられた。

 ただ、やることは決まっているので、指に触れた一枚を掴む。

「それじゃあ、引きますね」

 そう宣言してから、手にした一枚を箱から引き出して、私はくじに書かれたお題に目を向けた。

「これ……」

 お題を観た私と、今は視界を共有していると思われるリンリン様が『ほほう』と含みのある声で呟く。

 完全に面白がっていると思う声に、私がむっとしたところで、はじめ先輩が心配そに尋ねてきた。

「凛花ちゃん……引き直す?」

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