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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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過剰反応

「じゃあ、正解にしましょう」

 はじめ先輩の言葉に、何故だかもの凄く嬉しくなってしまって、私と雅子先輩は勢いでパァンと手を合わせてハイタッチを交わした。

「やりましたね!」

「正解だね、凛花ちゃん」

 答えに辿り着けた喜びを雅子先輩と分かち合った私は、大事なことを言っていないことに気が付いて、行動に出る。

「えっと、はじめ先輩」

 雅子先輩と盛り上がっていたところで急に話を振ったからか、はじめ先輩は「何かしら?」と言いながら目を瞬かせた。

 丁度視線が私に向いたので「私が答えられたのは、はじめ先輩の演技が凄く上手かったからです。もうまさに火が燃えてるって感じでした」と思うままを言葉にする。

 私の発言に、雅子先輩も「人の演技じゃないのにわかるのは本当に凄いと思います。あと、あと、ヒントがスゴイです。一つ動きを足しただけで、一気にイメージが絞り込めました!」と興奮気味に続いた。

「ま、まって、二人とも! 流石に、ちょっと恥ずかしいわ」

 はじめ先輩はそう言って鼻から下を両手で隠しながら、わずかに後退る。

 隠れていない耳の先が真っ赤だったので、照れさせてしまったみたいだ。

 私は慌ててフォローせねばと「ゴメンなさい。あまりにもはじめ先輩の演技が凄かったので、つい熱が籠もっちゃいました」と悪気が無いコトを伝える。

 同じ発想に至ったのであろう雅子先輩も「はじめ先輩の演技が凄く上手なのは知っていましたけど、パント……マイムでしたっけ? そのセリフも無しに何か伝えちゃうのが凄いなって! そう思ったら言わずにはいられなくなってしまって」と申し訳なさそうに続いた。

 けど、その内容を聞いた私は、思わず「そうですよね!」と口にしてしまう。

 自分の言葉のどこに私が同意したのかわからないといった風に、雅子先輩がこちらに視線を向けたので、すぐに「セリフもないのにわかるのスゴイですよね!」と言い加えた。

「だよね、そうだよね。凛花ちゃんもそう思った?」

「はい、思いました。はじめ先輩はスゴイです!」

 盛り上がってしまった私たちは、改めてハイタッチを交わす。

 ここで、はじめ先輩に「ご、ごめんね。嬉しいのだけど、恥ずかしいから、ちょ、ちょっと、気持ちを立て直す間、待って貰って良いかしら!?」と強めに言われ、雅子先輩と顔を見合わせることになってしまった。


「はぁ=」

 パタパタと掌で顔に風を送るはじめ先輩を前に、私と雅子先輩は申し訳ない気持ちで小さくなっていた。

 どうやらはじめ先輩も、落ち着いてきたように見えたので、私は「ゴメンなさい、はじめ先輩。興奮してしまって」と伝える。

「いいのいいの。私も不意打ちだったから、過剰に反応しちゃっただけだから……素直に嬉しかったわ。ありがとうね。二人とも、私なりに頑張ってきたことが向く回れた気分だわ」

 はじめ先輩はそう口にしてから「ちょっと大袈裟だったかしら」とチラリと舌を出した。

 演技の最中は大柄に見える先輩も実際には私と変わらない小柄な容姿なので、もの凄く可愛く見える。

 花子さんとかがこの場にいたら大騒ぎしてただろうなと思うと。いろんな側面を持っているスゴイ先輩だなと思った。

 そんなことを思っていると、頭の中でリンリン様の声が響く。

『目標にしてみるのも良いかも知れぬのじゃ』

 思わず、リンリン様の名前を呼びそうになって、私は慌てて口を押さえる。

 声はどうにか漏れなかったものの、突然口を押さえるというは為からは奇妙な動きをしてしまったせいで、先輩達の目が私に向けられてしまった。

 その上で「凛花ちゃん大丈夫?」と雅子先輩から声を掛けられ、何かに気付いたようにハッとした表情のはじめ先輩からは「調子が悪くなったなら、保健室に行きましょう」と優しく言われてしまう。

「だ、大丈夫です」

 そう答えて、一応二人は納得してくれたものの、それ以外の人は私の様子を見ていなかったのもあって、過剰な反応を示してしまった。

「大丈夫、凛花、もう帰りましょう!” おうちで休んだ方が……はっ! 病院? 病院に行く!?」

 もの凄い勢いで駆け寄ってきたお姉ちゃんが、かなりの大声でまくし立てる。

 続いて、まどか先輩が「落ち着け、良枝! こういうときは、私が保健室に送る。その間に救急車を要請しよう!」と言い出した。

 私はともかく状況を収めようと「だ、大丈夫です!」と可能な限りの声を張る。

 そのお陰で皆の動きを止める事に成功した私は、個々で次の一手が思い付かずに固まってしまった。

 が、救世主は思いがけないところから現れる。

 脳内に響いたリンリン様のアイデアに合わせて口を開いた。

「あ、あの、その……くしゃみが出そうで、口を押さえただけで……五、誤解させて申し訳ありません」

 そう言って頭を下げると、皆gくぃちように安堵の溜め息を漏らす。

 納得してくれたらしく労いの言葉や、騒がして申し訳ないという謝罪の言葉を残してお姉ちゃんやまどか先輩、心配そうに見てくれていた人たちも、元のグループの立ち位置に散っていった。

 皆の心配に感謝しつつ、胸を撫で下ろした私に、救世主が囁く。

『主様の演技力もなかなかで、あったのじゃ』

 くしゃみという言い訳を提示してくれたリンリン様に、私は心の中で感謝を伝えた。

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