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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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急報

「あの、その姫様というのは……」

 落ち着かないのでやめて欲しいのだけど、かなで先輩の返しは「女神様の方が良いですか?」という予想の斜め上を突っ走るものだった。

「お、恐れ多いので、凛花で、いいでしょうか……?」

 どんな反応をされるかわからなかったので恐る恐る聞いてみると、かなで先輩は「凛花さまですね」と笑顔を見せる。

 史ちゃんの時もそうだけど、これ以上は修正できないのを確信してしまった。

 悟りの境地に達した私に、まどか先輩が「かなでは自分が納得しないと改めるようなヤツじゃないから、仕方ないね。凛花ちゃん」と笑いかけてくる。

「姫様よりは、いいです」

 流石に上級生から『姫様』呼びされたらヤバイ……って、よく考えたら『凛花様』でも十分にヤバいことに気が付いてしまった。

 ただ、まどか先輩の結うとおりの性格なら私がどうこう言ってもどうにもならないと思う。

 そう考えた瞬間、頭に声が響いた。

『ならば、命じたら良いのじゃ。人目があるゆえ『様付け』はゆるさぬと』

 なんだか懐かしさも感じる聞き慣れた声に、私は「リンリン……」と口にしてしまって、慌てて口を抑える。

 だが、出した声を押しとどめられるわけもなく「リンリン様ですか?」と、かなで先輩にしっかりと聞かれてしまっていた。

 そして、間の悪いことに口元を押さえる私よりも先に『リンリン』呼びを始めたユミリンが反応してしまう。

「それ、私が付けたあだ名なんです……もしかして、リンリン、他の人にも使って欲しいくらい気に入ってくれたの!?」

 もの凄く嬉しそうに言われてしまった私に、違うと否定することは出来なかった。


 面白がってまどか先輩が「じゃあ、リンリン様、次の練習に貼りたいと思います」と言い出した。

 ツッコみたいところだけど、それは喜ばせるだけだと判断して「お願いします」とだけ返す。

「よし、リンリン様のお許しが出たので、説明を始めちゃうよー」

 まどか先輩は燥いだ声で皆に宣言した。

 最早どう返しても、弄られるだけだなと、確信すると『そのようじゃの』とリンリン様の声が聞こえてくる。

『リンリン様、何か変わったことはありましたか?』

 話しかけてきた以上、何かあったのではないかと思いそう尋ねると、リンリン様からは『方針を変更したのじゃ』と返ってきた。

『方針の変更ですか?』

 リンリン様は『まず、前提として、こちらの世界では二日目になっておるようじゃが、元の世界での時間経過は10分ちょっとじゃ』と言う。

 少なくともこちらでは二十四時間以上は経過しているので、ざっくりだけど百倍くらいの差がありそうだ。

『それじゃあ、新情報は……無いです……ね?』

 私が残念そうに言ったからか、リンリン様は少し慌てたように『待て待て、主様。未だ無いとは言っておらぬのじゃ』と言う。

 現金だなとは思うものの、リンリン様の返しに『本当ですか?』と少しテンションが上がってしまった。

『うむ』

 自信ありと思わせる力強いリンリン様の肯定の声に、何が起こったのだろうかと言う気持ちが強まる。

『時間経過していないのは報告の通りjじゃ、ゆえに、主の期待を裏切るようで申し訳ないが、東雲の小僧や月子達との意思疎通は行えておらぬのじゃ』

 確かに時間経過が僅かであるなら、私の状況の連絡はされていても意見や考えを聞く余裕はなかったはずだ。

 まあ、その事実確認よりも、東雲先輩と月子お母さんの名前が出たことの方が気になったのだけど、リンリン様はあっさりと『あるズ様が男女それぞれの一番信を置いておる相手じゃ』と、理由を語る。

 まあ、自覚があるのでそうだろうなと素直に納得してしまった。

 なんだかんだで一番とくぁよっているの派月子お母さんだし、元自分である京一お父さんよりも、東雲先輩の方が信頼できる。

 というか、先輩が横にいてくれるだけで、絶対折れないだろうなという確信もあって……。

『待て、待て、待て、待つのじゃ! 惚気は後にして、わらわの報告を聞いて欲しいのじゃ!』

 のろっ……リンリン様の強い訴えに、自分の意識がちょっと本筋からズレてしまっていたことに気が付いて、私は背筋を伸ばして気持ちを改めた。

『……どうぞ、続きをお願いします』

『う、うむ』

 同意したリンリン様は、一拍間を開けてから『これは観測データから得た情報なのかが……』と語り出す。

『主様の通う中学校の周囲から、多くのエネルギー体が一切消失しておるようじゃ』

 リンリン様の言うエネルギー体とは、いわゆる幽霊とか、あるいは妖怪とか、精霊とか、多くの人の目には映らない存在の事だ。

 緋馬織が封じていた『種』のような災厄を引き起こすものよりは遙かに影響が小さく、害をなさない限り放置されているような存在である。

 エネルギー体は個々に性質や種類が異なっていて、中には個別の意識を持つものもいた。

 それが一切消失しているなら、理由、原因は同じということになる。

 つまりは、私の放り込まれたこの異世界が、係わっているのではと思い至った。

『主様の推測通り、中学校の上空に巨大なエネルギーの塊が出現しており、それが消失したエネルギー体のエネルギー総量に近しいことがわかったのじゃ』



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