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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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内心で

「実は知っていたよ、ぶちょーの妹で、もの凄い美少女がいるって、有名だもんね」

 私の手を握りながら、斎藤さんはとんでもないことを口走った。

「そんなことはないおも……うよ?」

 未だこの世界では二日目、正確には目覚めてから一日ちょっとしか経っていないので、以前がどうだったかはわからない。

 その事が私の返答に、妙な間を生んでしまった。

「そんなこと言って、自覚があるんでしょ、返事に間があったもね」

 的確に間が合ったことから推測してきた斎藤さんに、私は首を左右に振って「正直、そういう話は聞いたことがなくて」と正直に伝える。

 すると、斎藤さんはジッと私の目を見て「ふぅん……本当っぽいね。なるほどぉ……凛花ちゃん、面白いね」と言うと、なんだかゾクリと背筋が冷える引き込まれるような魅力を漂わせる笑みを見せた。

「ねぇ、史ちゃん。私も凛花ちゃんとお友達になっても良い?」

 何故か、斎藤さんは私ではなく史ちゃんに尋ねる。

 史ちゃんは「凛花さまが良いなら、私は良いですよ」と即答した。

「というわけで、良いかな、凛花ちゃん」

 再び私に、斎藤さんの視線が戻ってくる。

 キラキラとした笑顔に、私は「もちろんです、よろしくお願いします。斎藤さん」と慌てて答えた。

 対して斎藤さんは、私の目と鼻の先で人差し指を左右に振る。

「え?」

「私が凛花ちゃんって呼ぶんだから、凛花ちゃんにも千夏か、ちーって呼んで欲しいわ」

 この流れは緋馬織でも何度か体験した流れなので、私は素直に「じゃあ、千夏さんで」と呼び方を決めた。

 けど、千夏さん的には未だ納得がいかないらしく「さん? ちゃんでしょ?」と片目を瞑りながら言ってくる。

 自分から求めてくれたので、私は何の躊躇いもなく「よろしくおね、千夏ちゃん」と言い直した。


「それで……残りのこの名前も聞いていいかな?」

 首を傾げながら、加代ちゃんとユミリンを見た千夏ちゃんは「二人も一年生だよね? 凛花ちゃん、史ちゃんと同じクラス?」と質問を重ねた。

「うん。そう。リンリンとフミキチと同じクラスで、根元由美子」

 軽く右手を挙げて名乗るユミリンに続いて、加代ちゃんも「私も同じクラスで、久瀬加代子です」と続く。

 千夏ちゃんはうんうんと頷きながら「F組だよね?」と聞き返すと、ユミリンが「そう」と頷いた。

「教室の場所、そっちは三階か~、うちは二階だから、ちょっと羨ましいなー」

 そう言って千夏ちゃんは苦笑を浮かべる。

 全8クラスもあるので、一つの階に一年生の教室全てを納めきれないため、A~C組が二階D~H組が三階という配置になっていた。

 千夏ちゃんに対して頷きながら「確かに、見晴らしは良いかもねー」とユミリンが言う。

 その後で「もう友達だし、興味があるならいつでも遊びに来なよ」と提案すると、少し驚いた表情を浮かべた後で、千夏ちゃんはクスクスと笑って「そうね」と頷いた。


 千夏ちゃんは、二年生の先輩達の方に視線を向けると「と、いうことで、今日の見学は1年F組の林田千夏さん、飯野史子さん、根本由美子さん、久瀬加代子さんの四人です」とそれぞれに手を向けて改めて名前を伝えてくれた。

 一度でフルネームを覚えるのは、流石だなと思う。

 そんな風に思って見ていると、千夏ちゃんは二年生の先輩方に向かって「それじゃあ、先輩方も自己紹介してください!」と笑顔で言い放った。

 その呼びかけに反応をすぐに示す先輩がいなかったので、千夏ちゃんは「もしよければ、私が紹介しましょうか?」と更に問い掛ける。

 迷いも躊躇いもなく放たれたどこか挑発しているように聞こえる言い回しは、エチュードに参加しなかったことを怒ってるように感じられた。

 それは先輩方も同じだったのか、軽く動揺している先輩が多いように見える。

 既にエチュードに加わることが出来なかった弱みがある上に、一年の千夏ちゃんから下に見るような視線を浴びて、名乗り出すのはかなり精神力が要るはずだ。

 先輩方はお互いにお互いの様子を確かめるようにその場で小さく回転して、お互いの様子を確認するだけで、その先へは進もうとしない。

 そのまま嫌な空気が漂い始めたところで、盛大に溜め息が解き放たれた。


「はぁ~~~~~」

 明らかに呆れた様子で溜め息を吐き出し終えたまどか先輩が「エチュードに参加しろってワケじゃないんだから、名乗りぐらい自主的にやって欲しかったよ」と斬寝そうに言い放った。

 元々明るい性格のまどか先輩のがっかりした態度は、ダメ出しをされていない私にも結構来るものがある。

 当人である先輩からしたら、最悪生きた心地がしないはずだ。

 そんな中でようやくエチュードに参加しなかった二年生の先輩の一人が意を決して「まどか先輩、自己紹介させて貰って良いですか?」と問い掛ける。

 まどか先輩は勇気を振り絞ったと思われる先輩に全力で頷いて「もちろんだ。早速頼む」と表情を輝かせた。

 名乗り出た先輩は意を決したのか大きく頷いてから、スゥッと息を吸い込む。

 そして「今日は見学に来てくれてありがとう。二年の尾本香織です! よろしくお願いします」と言って頭を下げると背中で一本にまとめていた三つ編みのお下げが大きく跳ねた。

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