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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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演技力

 どうやら私が降臨した女神で、目の前の三人の星座騎士はそれに仕える存在ということで間違いなさそうだ。

 加えて、私は自分が女神である自覚がないと言うことも、まどか先輩のセリフから予測が立つ。

 ストーリーと言うべきか、設定と言うべきか、下地は理解できたものの、だからといって、自分がどう動けば良いかを上手く組み立てられるわけではなかった。

 騎士も三人登場して、どう動けば良いのかと思っていると、予想外の事態が起きる。

「あ、あなたたち、なんなんですか!? 凛花さまをどうするつもりですか!?」

 私を庇うように両手を広げて、史ちゃんがお姉ちゃん達星座の騎士の前に立ち塞がった。

 てっきり、皆が星座の騎士役をするのかと思っていただけに、史ちゃんの騎士じゃないという役付けという柔軟な発想に驚かせる。

 しかも、演技とは思えない程しっかりとした立ち振る舞いは、演心から心配してくれてる友達にしか見えなかった。

 演技の練習をしたことは無さそうだったのになりきれてしまっている史ちゃんの背中は実際よりもかなり大きく見える。

「ふ、史ちゃん」

 思わず名前を呼んでしまった私を振り返った史ちゃんは「大丈夫、凛花さまは私が護るから!」と少し引きつった笑顔を浮かべた。

 よく見れば僅かに広げた手が震えている。

 史ちゃんが勇気を振り絞って参加しているんだと理解した瞬間、私は「ありがとう史ちゃん!」と口にしていた。

「凛花さま?」

 私の名前を呼んだ史ちゃんに頷いてから、その前に出る。

 そしてお姉ちゃん達に「私は、その、女神というのに、全く心当たりが無いんですけど……」とうつむき加減に上目遣いで告げた。

 すると、新たに三年生の先輩が「女神……いえ、凛花さま。そして、お供の方、説明もせず失礼致しました」と口にして前に出る。

 その先輩は長い髪をなびかせながら、綺麗な足取りで歩み寄ってきた。

 驚いたのは書の所作の綺麗さもあったけど、顔の角度もあって科まるで目を閉じているように見える。

 実際の閉じているのかもしれないけど、素直に凄いと思った。

「私は乙女座の騎士を拝命している菅原一恵。与えられている星は三つです」

 穏やかな口調で言う菅原先輩は、やはり目を閉じているように見える。

 私はその事に気を取られていると、後ろから前に出てきた史ちゃんが、また私を庇うように背にしながら「私は凛花さまの……凛花お嬢様の侍女で、飯野史子です」と言い放った。

 いつの間にか、お嬢様と侍女になっている事にビックリだけど、史ちゃんが言ってしまった以上、このエチュードではそれが真実になる。

「へぇ~侍女のくせに、お嬢様に庇わせたんだぁ」

 急に即興劇に参加してきたのは、残る最後の三年生の先輩だった。

 長身なのもあって、史ちゃんを顎を上げて見下ろす姿にはもの凄い威圧がある。

 未だ名乗っていない先輩に対して、菅原先輩がそれまでの穏やかな口調ではなく、低く聞いてるだけで怒っているのがわかる声で「控えなさい。女神の御前ですよ」と言い放った。

 言われた長身の先輩は、わかりやすく動揺を上体を揺らしながら少し仰け反ることで示すと「す、すまない」と声を震わせる。

 たったそれだけの動きで、菅原先輩の演じる騎士に恐れを抱いているのがわかってしまった。

 その反応を見た菅原先輩は表情を変えずに「女神様に名乗りなさい」と告げる。

 言われた先輩はすぐさま私と史ちゃんの前に膝をついて、両手を指を絡ませるように組み合わせると、自分の頭より高いいていに上げて、下を向いた。

「し、失礼しました。女神様、オレ……い、いやワタクシは、蟹座の三つ星騎士大下佳奈と申します」

 怯えているのと慌てているのがちゃんと伝わってくる大下先輩の演技にまたも私は驚く。

 そんな大下先輩に視線を向けていると、菅原先輩が「凛花さまがご不快のようでしたら、このものは私の手で始末いたしますが?」と表情一つ変えずに言い放った。

 大下先輩は「ひっ! お、お許しを!」と口にして、更に深く頭を下げる。

 とても即興とは思えない二人のやりとりに、驚きでドキドキしながら「い、いいのです。ね、ねぇ、史?」と史ちゃんに声を掛けた。

「はい。お嬢様のお心のままに」

 笑みを浮かべて頷く史ちゃんもとても演技経験が無いとは思えない。

 自分との差に軽いショックを覚えたけど、話を振って返事を貰えたことで、気持ちの上ではかなり落ち着けた。

「凛花さまの寛大なお心に感謝しろ、佳奈」

 菅原先輩はそう言うと、私たちから距離を取る。

 大下先輩は、離れた菅原先輩を見送ってから、まるでそれまで息を止めていたかのように「プハッ」と息を吐き出した。

 両手をついた状態で見てわかるほど大きく肩を動かしながら荒い息をし始める。

 これが即興劇の途中じゃなかったら駆け寄ってしまいそうなほど迫真に迫っていた。


「さて、他の者達はいないのか?」

 まどか先輩が自分たちを囲むように立つ残る演劇部のメンバーを見た。

 三年生は全員、二年生の先輩は一人、それに史ちゃんが加わっている。

 残るのは、一、二年のメンバーとユミリンと加代ちゃんだ。

 これで終わりなのかもしれないと思ったところで、一年生の子が前に出る。

「はい! まどか様。私もいます!」

 見覚えが無いので、1年F組(うちのクラス)でもないし、体育で合同だったE組でも無いと思われる彼女は、髪の毛を左右の耳の上で結んだもの凄く女の子という見た目の子だった。

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