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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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恐るべき提案

 私たちか仮入部組と演劇部の面々の列に向き合うように立ったまどか先輩が小さく息を吸い込んだ後で、声を張り上げた。

「あっ、いっ、うっ、えっ、おっ、あっ、おっ!」

 さっき説明してくれたとおりお腹に力がこもっているというのがわかるしっかりした声が響く。

 それに驚いている間に私たちのなら武烈の方からも「「あっ、いっ、うっ、えっ、おっ、あっ、おっ!」」と発生が成された。

 出遅れてしまった私に気が付いたのであろうまどか先輩が、掌を見せてストップを掛ける。

「凛花ちゃん、大丈夫?」

「あ、はい、そので遅れてしまっただけです、ごめんなさい」

 恐らく体調を崩して反応できなかった可能性も考えてくれたのであろうまどか先輩に、申し訳ない気持ちで、私はすぐに頭を下げた。

「ああ、大丈夫大丈夫、調子が悪くなったんじゃなければ、問題ないよ」

「……本当にすいません」

 仮入部の私のせいで練習が止まっている。

 そう思うと逃げ出したくなるほど申し訳ない気持ちで一杯になった。


「大丈夫、大丈夫、もう一回最初からやり直そう」

 まどか先輩はそう言ってくれたものの、素直に頷けなかった。

 そんな私を見てまどか先輩は「ねぇ、みんな」と話を演劇部の皆に振る。

 すると口々に、最初は失敗するとか、まどか先輩の圧が強すぎるから仕方が無いとか、次は頑張ろうとか、励ましの言葉を掛けてくれた。

 私は感謝の気持ちで頷きつつ「もう一度お願いします」とまどか先輩に訴える。

 まどか先輩は大きく頷いた後で「それじゃあ、再開しよう。皆も良いかな?」と皆を見渡しながら言った。

 合わせたわけでは無いのに綺麗に揃う「「はいっ」」と揃う部員の皆の声に、またも私は合わせることが出来ない。

 自分の対応力の無さが情けなくなったけど、次こそ合わせると決意を込めて、挑むことにした。


 どうにかタイミングを合わせて『ラ行』まで、ついて行くことが出来た。

 けど、ホッとする間もなくまどか先輩は「良いね、良いね、声が出てるよ」と嬉しそうに言った後で「じゃあ、次は『五十音』だよ」と宣言する。

「『五十音』って……あいうえおと順番に言えば良いのかな」

 思わず呟いた後で、まどか先輩の発生を聞いてくれ返せば良いのだと思い至った。

 余計なことを言ってしまったと思ったのだけど、お姉ちゃんが「そうじゃないわ。北原白秋の『五十音』を言っていくのよ」と教えてくれる。

 うろ覚えだけど、白秋の『五十音』は「確か……あめんぼ、赤いなってやつだったっけ?」と浮かんだものを口にして見た。

「そう、正解。まどかに続いてい言うのは一緒だから、全部覚えてなくても大丈夫……というわけで、やってみましょう」

 パンと手を合わせながら言うお姉ちゃんに、私は「はい!」と頷く。

 史ちゃんや加代ちゃんやユミリンだけじゃなく、演劇部の人たちもいるのに、私が余計なことを言ってペースを乱してしまっているのが申し訳なかったけど、今は発声練習に集中して、謝る派後にしようと決めた。 


 発声練習が終わったので、演劇部の人たちと一緒に、活動場所である空き教室に戻ってきた。

「すみません、この時期に仮入部なんて……その、ペースも乱してしまって」

 教室に戻ってすぐに私はそう言って先輩方や既に入部している一年生の子達に頭を下げる。

 私はずっと申し訳ないと思っていたんだけど、気にしている人は全くいなかった。

 むしろ、人数は消して多くないので参加者は大歓迎と言って貰う。

 というのも、演劇部自体は総勢三十名近い大所帯なのだけど、他の文化部と兼部をしている人が多くて、筋トレに参加している役者メインのメンバーは、九人しかいなかった。

 特に一年生は一人で、三年生は二人、お姉ちゃん達を含めても四人しかいない。

 一番多い二年生ですら六人なので、文化祭や演劇コンクールなどでは、裏方を希望している兼部の人たちにも舞台に上がって貰うそうだ。


「それじゃあ、折角だから、演劇部らしい自己紹介をして見よう!」

 まどか先輩の言葉に、演劇部員の間に緊張が走った。

「あ、あの、まどか先輩……エチュードです……よね?」

 左右の肩の上で髪を束ねたお下げの二年生の先輩が、恐る恐ると言った形で問い掛ける。

 にんまりと笑ったまどか先輩は大きく頷いた。

 直後、演劇部内の緊張感が、更にました気がする。

 ともかく居心地の良い空気ではなかったので「まどか先輩!」と割って入ってみた。

「なにかな、姫?」

 姫呼ばわりはやめて欲しいけど、ここで言っても状況は変わりそうにないので諦めて「そのエチュードというのは何ですか?」と聞いてみる。

「簡単に言うと、即興劇だね。台本無しで、お芝居をするから、センスが思いっきり出る」

「……センス」

 なんとなくだけど、演劇部の人たちが緊張した理由がわかった気がした。

 失敗しても別に怒られたりはしないだろうけど、ヤッパリできないのは嫌だろうと思う。

 特にセンスと言われてしまっては、ダメだったときに情けなくなるのは簡単に想像が付いた。

 出来れば上手くやり遂げたいという気持ちが緊張を招いたんだろう。

 そんな事を考えていると、まどか先輩が「じゃあ、皆、輪になって」と指示を出した。

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