表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
58/474

演劇部

 話を聞いていたほぼ全員が気まずさで押し黙る中、委員長は「それなら、多分大丈夫です」と平然と言ってのけた。

 綾川先生も笑みを浮かべながら「まあ、真面目な木元の振り付けなら、おかしな事にはならないと思っているぞ」と返す。

 未だ出会って一月も立っていないのに、流石の信頼感だなぁと、私は思わず委員長を見詰めてしまった。

「なに? リンちゃん」

 バッチリ目が合ったことで私が見ているのに気付いた委員長は、瞬きをしながら首を傾げる。

 素直に先ほど思ったままを伝えると、委員長は照れたようで「もう、真面目な顔で何言ってるの!?」と言いながら、私の肩をバシバシ叩いた。

 照れ隠しが混入しているせいか、少し痛い。

 でも、委員長は喜んでくれているみたいだし、苦情は飲み込むことにした。


「それじゃあ、演劇部に行きましょうか!」

 綾川先生にお礼を言って、空き教室を出たところで、ニッコニコの上機嫌な様子で話を振ってきたのは委員長だった。

「え!? 委員長も行くの?」

 私の返しに、委員長は真顔で「ダメかしら?」と首を傾げる。

 左右に首を振りながら、私は「別にダメって事は無いけど、綾川先生に話を聞いたら、委員長の幼児は終わりだと思ってたから……」と直前の発言の理由を伝えた。

 委員長は「まあ、私も付き合って貰ったから、付き合うつもりだったって言うのもあるけど……リンちゃんたちが入る演劇部がどんな感じになるのか、単純に興味があるから、お邪魔させて貰おうかと思って」と付いてくると言った理由を教えてくれる。

 付き合ったお礼だけだったら、付いてこなくても良いよと言っていたところだけど、興味があると言われたなら断わる理由がなかったので「じゃあ、早速行こう」と告げた。


 演劇部の活動場所は、正直わかってなかったのだけど、前々から興味はあったという茜ちゃんのお影で探し回らずに済んだ。

 正確には先導してくれたのが茜ちゃんだっただけで、委員長達も知っていたらしい。

 むしろ、知らなかったのは私だけだった可能性が高かった。

 お姉ちゃんが部長を務める部活なのもあって、変に心配されないように、口にはしなかったけど、察している人はいたと思う。

 そんなわけで、内心ではいろいろあったものの、私たちは無事活動場所に到達することが出来た。


「おーー、姫! 待ちかねたよ!」

 ジャージ姿のまどか先輩に遭遇の直後、私は抱きしめられた。

「あの、まどか先輩」

「なんだい、姫?」

「動けないんですけど……」

「つまり、私の元から離れて行かないって事だね?」

「どういう解釈よ!」

 いつの間にかやってきたジャージ姿のお姉ちゃんに寄って、私はまどか先輩から引き離されて救出される。

 抱きしめられるのは正直嫌じゃなかったけど、いつまでもああしているのはどうかと思うので、丁度良かったかなと思いながら、またも始まってしまったまどか先輩とお姉ちゃんの掛け合いを見詰めることにした。


 お姉ちゃんがまどか先輩と言い合いをしている間に、長身のスラッとした三年生の女子の先輩が声を掛けてきた。

 女子の場合、セーラー服のスカーフの色が学年毎に違っているので見た瞬間にわかる。

 私たち一年が紺、お姉ちゃん達三年生が赤で、二年生が緑だ。

 上履きの色や、男子の学ランの襟に付けるクラス章の色もこの学年カラーに合わせてある。

「部長の妹さんね?」

「はい、林田凛花です」

「私は副部長の春日小夜子です」

「お姉ちゃんがいつもお世話になっています」

 春日先輩に頭を下げると、その頭の上にポンと手が置かれた。

 更にその手が私の頭をなで始める。

 頭を上げると、うっとりした表情で目の前の春日先輩が私の頭をなでていた。

「あの、春日先輩?」

 戸惑いながらも声を掛けると、春日先輩はハッとした表情で「ご、ごめんなさい。目の前に撫でやすい頭があったから……」と慌てて手を引っ込める。

 撫でやすい頭というのに、もの凄い違和感を覚えたものの、春日先輩はもの凄く申し訳なさそうにしているので、敢えてツッコまないことにした。

 ただこのままでは妙な空気になりそうなので、一緒に北内のクラスの面々を紹介していくことにする。

 私たちが簡単な挨拶を終えたくらいのタイミングで、まどか先輩とお姉ちゃんの決着も付いたようで、こちらに近寄ってきた。


 演劇部は意外にも兼部の人が多いのだと春日先輩が教えてくれた。

 美術部や吹奏楽部、家庭科部など、舞台装置や小道具、衣装にBGMなど、役を演じるよりも舞台を後ろから支えるのに重きを置いている人も多くて、プロデュースに興味を持っている委員長や茜ちゃんは目を輝かせて話を聞いている。

 逆に江崎さんは、お父さんが映像系の仕事をしているのもあって、演劇部で将来映画撮影やテレビ方面に進みたい人から話を聞かれていた。

 お姉ちゃんは兼部ではないものの、連携している各部活とのパイプ役であり、裏方を取り仕切っているみたいで、春日先輩とまどか先輩が役者を率いている感じらしい。

 ちなみに、私たちは仮入部という扱いで体験しながら見学させて貰えることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ