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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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放課後

「それじゃあ、また後でね、凛花」

 最後に私を抱きしめてから、お姉ちゃんは、もうすぐ五時間目、午後の授業が始まるのに、帰りたくないとごねたまどか先輩を引き摺るようにして去って行った。

 まどか先輩を一撃で黙らせてから、引き摺るまでの流れが余りに手慣れすぎて、苦笑で見送ること痔か出来なかったほどである。

 そんなわけで、まどか先輩とお姉ちゃんの登場で、昼休みのほとんどを浪費してしまったのだけど、意外にも訪れた変化は大きかった。

 茜ちゃんが自宅にお客さんを呼ぶ機会が増えそうで嬉しいと喜んでくれて、委員長は文化祭のはっきりした目標が出来たと奮起して、体育祭のダンスからの繋がりも考えたいとか壮大なプランを立て始めている。

 史ちゃん、加代ちゃんは、演劇部への見学が楽しみなようで、早速今日、行ってみるみたいだ。

 私も、委員長と綾川先生から話を聞いたらお邪魔しようと思って、既にお姉ちゃんやまどか先輩に伝えてある。

 まどか先輩だけでなく、お姉ちゃんも楽しみと言ってくれたのが嬉しかった。


 午後の授業、掃除を終えて放課後を迎えた私と委員長は早速綾川先生に話を聞きに職員室に向かった。

 既に、お昼に話をしていたからか、綾川先生はちゃんと会議室代わりに空き教室を抑えてくれていて、皆で向かう。

 この後、演劇部の見学もあるので、私と委員長に加え、ユミリン、史ちゃん、加代ちゃん、茜ちゃんに沙織さんが一緒に来てくれていた。

 クラスの女子は21人なので、1/3が参加してることになる。

 お百合なんか、この場にいないこの中にも参加したがってた子もいた。

 ただ、部活でも既に一年のエースであるお百合や、塾や習い事のある子たちなので、参加は出来なかったのでちゃんと後で説明しなければと、私は一人気合を入れる。

 そんな中、綾川先生の口から最初に出たのは、私の話だった。


「水上先生から聞いているが、剣道部は防具を着けているとはいえ、竹刀で打ち合うわけだから、お医者さんの言うとおり、頭への衝撃を避けるなら、しばらく参加しない方が良いだろう……そういう意味では、演劇部と剣舞というのは良いかもしれないな。林田のお姉さんも属しているしな」

 綾川先生にそう言われて、念のために打ち合うような稽古は見学するように言われたのを、すっきり忘れてしまっていたことに気付かされた。

 まどか先輩という強烈な個性との出会いがあったとは言え、午前中に言われたことが抜けるような状況では、注意するから大丈夫とは言えない。

「でも、剣道部の先輩や皆さんに、申し訳ないというか……」

 あと、この世界で剣道部を選んだ元の私にも悪い気がしていた。

 それ故の発言だったのだが、綾川先生は「まあ、仮入部期間だからな、辞めるのも自由なわけだが……籍を残して兼部とかも出来なくはない……顧問の先生や先輩方と話してみると良い」と提案してくれる。

 私としても、話をするのが一番だとは思うのだけど、現状が全く把握出来ていないのが問題だった。

 何しろ私の知っている剣道部の面々は、間違いなくこの時代というか、この世界にはいない。

 もしかしたら、この世界のお姉ちゃんみたいに、元いた世界の剣道部メンバーの親が所属しているとかはあるかもしれないけど、当然本人ではないので、結局は知らないも同然だ。

 軽い記憶喪失を装ってみる手も考えたけど、自体が余計ややこしくなる気がする。

 お百合が近くで、私が剣道部にいるのを見ていたとはいえ、部活自体が違うので、これまでの交流状況を聞けるわけではなかった。

 これはもう、失礼だと思われたり、怒られてでも直接出向いて状況を見ながら納めるしか無いと思う。

 そう心に決めて「ちゃんと自分で話してこようと思います」と綾川先生に伝えた。

 綾川先生は大きく頷いて「なにかあれば、いつでも相談しに来なさい」と言ってくれる。

 私は「はい」と答えて、早速興にでも入ってみることに決めた。


「それじゃあ、選曲からして良いんですね?」

 綾川先生から渡された資料を見終えた委員長が、興奮気味に問い掛けた。

 軽く頷いた綾川先生は、委員長が誤解しないように、釘を刺す。

「ダンスは各学年ごとに、女子合同だからな。木元やウチのクラスの案がそのまま通るわけじゃないぞ」

 委員長は頷きながら「体育祭実行委員会で話し合われるんですか?」と尋ねると、綾川先生は「いや」と首を振った。

「体育祭実行委員会は当日の運営がメインだし、時間的に間に合わないからな。ダンスの振り付けは私たち体育教師がとりまとめて、授業のタイミングで各クラスに確認しながら決める形だ」

 綾川先生の説明に委員長は「なるほど」と口にして頷く。

 そんな委員長に対して、綾川先生は「正直、一年生でダンスの振り付けを提案してくるなんて珍しいんだ……採用率は高いと思うぞ……難易度が高すぎたり、余り学生にふさわしくないのは採用できないがな」と言い加えた。

 採用率が高いと言うことに、委員長は更なるやる気を抱いた様だが、気になることがあったようで僅かに眉を寄せる。

「……学生にふさわしくないっていうのは?」

 真面目な顔で聞く委員長に苦笑染みた表情で「ストリップとか、エッチな踊りだな」と返した。

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