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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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未来予想

「えっと、その、良いの、茜ちゃん?」

 私がそう尋ねると、茜ちゃんは「もちろんよぉ~私アイドル大好きだしぃ。自分のおうちで、アイドルが合宿なんてぇ」と何故かくねくねしながら答えた。

「い、いや、茜ちゃん。アイドルって言っても、素人だからね?」

 なんだか茜ちゃんの中で、爆速で膨らんでそうな期待に少し不安を覚えた私は、一応、念押ししてみる。

 だが、茜ちゃんはシレッと「凛花ちゃん、どんなアイドルさんも初めは素人s団なんだよぉ?」と真面目な顔で返されてしまった。

「え、あ、うん……そうだけど……」

「それに、頑張ってぇ、練習を重ねてぇ、スター発掘番組に出ればデビューへの道が開けるかもしれないでしょ?」

 なんだかもの凄い熱量で段々と早口になる茜ちゃんは「ここが、凛花ちゃんたち、おチビッ子クラブの最初の一歩かもしれないんだよぉ」と興奮気味に訴えてくる。

「いや、茜ちゃん、そんな事には……」

 私がやんわりと宥めようと思った言葉を、横から史ちゃんが遮ってきた。

「凛花さまの可愛さなら、可能性は高いんじゃないかと思います!」

 真っ直ぐな目で言う史ちゃんは、心の底からそう思っているように見える。

「確かに、素材は完璧だと思う」

 今度は委員長までが乗ってきた。

 私の頬を両手で包み込むようにして自分の方を向かせた委員長は「私を信じて、最高のアイドルを目指しましょう!」と真っ直ぐ視線を合わせて言う。

 委員長の圧に思わず同意しそうになってしまった私を、史ちゃんの「委員長ズルイ、私も凛花さまの顔をじっくりと観察したい!」という発言がが救ってくれた。

 タイミングは良かったものの、微妙に救われた気がしないのは、発言内容のせいだと思う。

 けど、微妙に漂う怪しげな気配に踏み込む勇気が、私には無かった。


「これで、私の野望に向けて一歩前進ね」

 満足そうにそう言って委員長は満面の笑みを見せた。

 この笑顔を見せられてしまうと、つい、応えたいと思ってしまう。

「史ちゃん、加代ちゃん、頑張ろう」

 私の言葉に「はい、凛花さま!」と大きく頷いてくれる史ちゃんに対して、加代ちゃんは「うん、頑張るよ」と少し控えめに頷いてくれた。

 それでも、皆で進もうと思っている事がとても嬉しくて、私も思わず笑顔になってしまう。

 ユミリンがそんな私をジッと見てから「ねぇ」と不意に口を開いた。

「ん? なに?」

 首を傾げながら反応を示すと、ユミリンは「この状況で、私の果たすべき役目って、リンリンの履歴書を芸能事務所に送ることかな?」と真顔で聞いてくる。

「は?」

 理解が追いつかなくて、私は瞬きを繰り返すことになった。

 一方で、茜ちゃんが「いいですよねぇ。自分が申し込んだんじゃなくてぇ、付き添いで言ったら合格しちゃったりぃ、街中でスカウトされたりぃ。自分からじゃないところが、清純派な凛花ちゃんには合ってると思いますぅ!」と熱量多めで話し出す。

「あー。私も聞いたことある……うん、確かにリンちゃんの場合、自分でオーディションに申し込まなそうだから、ユミリンが申し込むのはスゴくしっくりくるかも」

 加代ちゃんがそう言って頷くと、ユミリンは「でしょ? 私がグッジョブって讃えられるポジになる未来が見えるわ」と何故か胸を張った。

 どうツッコミを入れたものかと思っていると、史ちゃんが「私は、反対です!」と声を上げてくれる。

 史ちゃんの反対の声に嬉しく思いながら私は「そうだよね、皆夢見すぎだよね」と大きく頷いた。

 けど、史ちゃんは「いえ、凛花さまなら余裕で合格すると思いますけど」とサラリと言い切られてしまう。

「え……っと」

 どう切り返したら良いかが思い付かず、私は言葉に詰まった。

 グイッと顔を寄せて来た史ちゃんに「良いですか、凛花さま!」と詰め寄られる。

 気圧されながら「は、はい」と返事をした私に、史ちゃんは「私はアイドルとして、世の中に凛花さまの存在を知られてしまうと、とっても遠い存在になってしまうと思うんです……私のわがままですけど、凛花さまは私たちの凛花さまであって欲しいので、オーディションとか、ましてやデビューとかして欲しくないのです!」と訴えた。

 その後で、史ちゃんは「凛花さまも、アイドルにはなりたく無さそうですしね」と付け足す。

 最後の一言だけで十分だったのにと思いながら、私は乾いた笑いをするしかなかった。


「フミキチのリンリンを独占したい気持ちは、私にもわかるから、勝手にオーディションに申し込むのは夜亜しておくよ、リンリン!」

 笑顔で言うユミリンに、私は疲労を感じながらも、笑顔で「理解してくれてありがとう」と返した。

「まあ、私はリンリンの親友だからね。親友が嫌がることはしないよ」

 もの凄く良い笑顔で言うユミリンだけど、そもそも自分の役目とか言って、応募すると言い出したのが誰なのか、忘れてしまったらしい。

 とはいえ、ここで変にツッコんでも良い方向に行かないと読んだ私は「ありがとう、ユミリン」と改めて感謝の言葉を伝えて、話を終わらせに向かった。

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