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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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委員長

 三時間目が終わり、集まってきた面々に説明を終えたことで、皆はホッとした表情を見せてくれた。

「じゃあ、大丈夫そうなの?」

「一応、血液検査をして貰ってるけど、先生も異常は無さそうだって言ってくれたよ」

 私の返しに、ユミリンはなるほどと大きく頷く。

「皆、心配してくれたみたいでありがとう」

 私がそう言って頭を下げると、皆は笑顔で答えてくれた。

「とりあえず、昨日は調子が悪かっただけで、病気じゃなかったってことよね?」

 委員長が改めてそう聞いてきたので、私は「多分」と頷く。

「それじゃあ、運動しちゃダメって事は無いわよね?」

 一応、部活が『剣道部』だということは、お母さんが先生に伝えた時に、頭に衝撃があるといけないので打ち合う稽古のようなものは、当面見学するようにと言われたけど、それ以外は特に問題ないだろうと言って貰った。

 委員長の想定している『運動』がどの程度かわからないので、私は言われたことをそのまま伝えてみる。

「それじゃあ、飛び跳ねるような、身体を揺さぶる動きは避けたれば、良いかしらね」

 委員長が独り言のように言うので、私はユミリン、史ちゃん、加代ちゃんに「どういうこと?」と聞いてみた。

「体育祭が6月の最初にあるでしょ?」

 私は元の世界と同じタイミングでイベントがあるんだったなと、生徒手帳で確認したスケジュールを思い出しながら「うん」と頷く。

 すると、史ちゃんが「今日の朝のホームルームで、体育祭の種目の発表があったんですけど、その中の学年女子全員で行うオリジナルダンスの振り付けは、皆で決めるからアイデアのある人は出すようにって綾川先生が言っていたんですよ」と続いた。

「私、ダンスが好きで……その、出来れば、振り付けをして見たくて」

 委員長が少し恥ずかしそうに言う。

 私は「委員長! 自分で振り付け考えられるなんてスゴイよ!」と思わず強めに言ってしまった。

 一応、それなりにリズム感もあるし、ステップで苦労したことはないけど、私は自分で振り付けをするということができない。

 自分でステップを組み合わせてダンスを組み上げるテストなんて、基礎ステップを繰り返すだけで、オリジナリティーだとか、意外性だとかは皆無だった。

 そんな背景もあって、私は自分で振り付けを組める上に、挑戦してみようとする委員長がとても眩しい。

 私が尊敬の眼差しを向けていると、委員長が不意にジト目をユミリンに向けて「なによ」と不満そうに言い放った。

 どういうことかわからない、私や史ちゃん、加代ちゃんはお互いの顔を見ながら瞬きをしあう。

 そんな中不敵な笑みを浮かべたユミリンは「ダンスって言うか、委員長がしたいのは、アイドルの振り付けでしょう?」と言い出す。

 対して委員長は「そうだけど?」と平然と返した。

 その上で拳を握りしめた委員長は「まずは体育祭で実績を作って、文化祭でアイドルユニット『おチビッ子クラブ』のデビューの弾みを付けるのよ!」と言い放つ。

 対して、加代ちゃんは「そ、そうなんだね」と多少の気後れを感じさせる言葉を発し、史ちゃんは「頑張りましょうね、凛花様!」と情熱を滾らせた。

 加代ちゃんのどうするのかという様子を覗う視線を受けながら、委員長と史ちゃんからの熱い気持ちを裏切れるわけもなく「私なりに頑張るわ」と返す。

「リンちゃんの負担になら無いダンスを考えるからね!」

 改めて委員長にそう言い切られて、私は「お、お願いします」と頷くことしか出来なかった。


 四時間目の授業を終えると、早速委員長が声を掛けてきた。

「リンちゃん、いいかしら」

「なに、委員長?」

「綾川先生を呼びに行くんだけど、付き合って貰って良い?」

 私はさほど考えず「いいよ」と返事をする。

 すると、史ちゃんが「私も凛花様と一緒に行きたい」と名乗り出た。

 委員長は「まあ、三人くらいなら」と頷いて、さっさと教室を出て行ってしまう。

 私と史ちゃんは頷き合ってから、加代ちゃんやユミリンに言ってくると伝えてその後を追った。


「おー、林田」

 職員室で顔を合わせるなり、ニヤニヤと笑いながら綾川先生は私の名前を口にした。

「な、なんでしょうか……」

 思わず硬い返しになってしまったが、綾川先生は笑みを引っ込めることなく「大騒ぎだったらしいな。水上先生から聞いたぞ」と言う。

「あ、あれは……」

 私の横から顔を出した史ちゃんが「え!? 何があったんですか、綾川先生!」と興味津々と言った態度で尋ねた。

 対して、綾川先生は真面目な顔で「姉とその友人が、妹を取りあって愛憎劇を繰り広げたらしい」と言い放つ。

「あ、あいぞうげき!?」

 驚きからか声を張り上げた史ちゃんは、直後、表情を険しくして「って、なんですか?」と尋ねた。

 椅子から滑り落ちそうになりながら、綾川先生は「ま、まあ、中一には難しいか」と苦笑いを浮かべる。

「り、凛花様はわかりますか?」

 矛先が私に向いてしまったが、ここは「うーん、コントみたいなことかなぁ」と返してみた。

「あ、コントならテレビで見たことあります!」

 なんだか嬉しそうに言う史ちゃんに、多少とは言えミスリードを仕掛けた手前、かなりの罪悪感がある。

 それでもうやむやに出来るなら良いかと思ったのだけど、委員長が「二人とも、違うわよ」とはっきりと言い切ってしまった。

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