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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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教室へ

「良い、お姉さん達ね」

 水上先生の言葉に、私は「はい」と頷いた。

「私としては親交を深める時間を提供してあげたいのはやまやまなのだけど、そろそろ時間が無くなりますよ」

 そう水上先生が言いながら、指さした壁に備え付けられた時計は、次の授業まで5分もないことを示している。

「大変だ、良枝! 凛花ちゃんが授業に遅れてしまうっ!」

「おおよそ、アンタのせいでしょうがっ!」

 直後、またもお姉ちゃんとまどか先輩が掛け合いを始めてしまった。

「誰のせいとか今はいい。それよりも凛花ちゃんが授業に遅れては大変だ」

「そ、それはそうね」

 もの凄い勢いで会話が交わされ、急に二人の視線が私に向く。

「凛花、保健室に登校したのよね?」

 お姉ちゃんからの質問に「え、あ、うん」と曖昧な返事をしてしまった。

 何を聞かれているのかいまいちピンとこなかった私に代わって、水上先生が「妹さんの荷物はそこです」と私の荷物の置かれたテーブル指さす。

 それを見てようやく保健室に私の荷物があるかどうか聞いたんだと理解した。

 直後、またも私の身体が宙に浮く。

 太ももの裏と肩に腕の感触がして、目の前にはまどか先輩の顔が合った。

「えっ!? まどか先輩?」

 またも抱きかかえられてしまったことに驚いていると、まどか先輩は「凛花ちゃんはF組だったよね?」と尋ねられる。

 わけもわからぬまま「そうですけど」と答えると、まどか先生は「承った!」と満面の笑みを浮かべた。

「しっかり捕まって」

「え?」

 私の疑問の声にまどか先輩からの反応はなく、代わりに周りの景色が後ろに飛び始める。

 もの凄い勢いで、廊下に飛び出たまどか先輩はそのまま止まることなく南棟へと駆けた。


「到着だ、凛花ちゃん!」

 満面の笑みで言うまどか先輩にしがみついたままの私はどうにか「ひゃ、ひゃい」と返した。

 教室まで送り届けてくれたのだけど、廊下も階段も走るわ、方向転換に壁を蹴るわで、正直、生きた心地がしない。

 確か保健室に向かったときの方が、階段を飛び降りたりしていたのに、怖さは今の方が大きかった。

 ドキドキとする心臓と、なんだかもの凄く息苦しい呼吸を繰り返すウチに、私はまどか先輩の首にかけた手に力を込めてしまう。

「お、なんだい? 凛花ちゃんも、私と離れたくないのかい?」

 まどか先輩に耳元でそう問われたものの、私は動揺が大きくて、反応を示せなかった。

 代わりに、ぜぇぜぇと荒い息をしたお姉ちゃんが「そんな訳あるか!」とまどか先輩の頭を思い切り叩く。

「いでっ!」

 まどか先輩は叩かれたことで、頭が横に大きく動いたのに、私を支える身体は一切ブレなかった。

「それより早く凛花を降ろしなさいっ!」

 お姉ちゃんの次なる言葉に、まどか先輩は叩かれた直後なのにニヤニヤしながら「いや、でも凛花ちゃんが私と離れたくないって思っているから」と返す。

「凛花のスカートが大変なことになっているから!」

 お姉ちゃんの言葉に私は「へ?」と声を漏らすと共にまどか先輩の顔から自分の脚へと視線を向けた。

 教室までの移動の間に太ももの下にあった腕は膝下に移動している。

 その分、脚の角度はより鋭角になっていた。

 まどか先輩に、太ももに直接、スカートを挟まず腕を通された結果、太ももをほぼ晒すようにスカートがめくれ上がってしまっている。

 私の視線では下着までは見えていないけど、横から見ればどうなっているか……。

「まどか先輩! 降ろして、降ろしてくださいっ!」

 私がそう訴えた直後、お姉ちゃんが「ダメよ、凛花! 足をばたつかせたら余計スカートがめくれるからっ!」と叫んだ。


 教室の前で大騒ぎをしていたので、当然ながら、私たちのやりとりは皆に見られていた。

 もう三時間目が始まるので、お姉ちゃんはまどか先輩を連行して、自分の教室に戻っている。

 そして私はユミリンや史ちゃん、加代ちゃん、委員長と、仲良くなったばかりの面々に囲まれていた。

「と、とりあえず、ブルマ履いとこ」

 小さな声で、加代ちゃんはそう言って泡つぃの肩を叩く。

「う、うん」

 スカートがめくれ上がった結果、私はスカートがめくれ上がり下着を晒すことになってしまったので、いろいろ気を遣った上でのアドバイスだ。

 そもそもまどか先輩が私を運ぼうとしなければ起こらなかった事態だけど、そもそもがよかれと思ってのことなので、怒るのも何か違う気がする。

 スカートがめくれても良いように、ということで、加代ちゃんの言葉に繋がるのだけど、ことある毎に『自衛は大事』と言っていた月子お母さんの言葉が思い出された。

 正直、今ここまでは、元京一の部分があるせいか、あるいは緋馬織が女子ばかりだったからか、見られても平気だと思っていたのだけど、チラ見すると微妙に視線を逸らす周辺の男子を目撃した今は、見られたら良くないと思い直す。

 別に恥ずかしいわけではないけど、なんだか居心地の悪かったのだ。

「と、とりあえず、気をつけるよ……」

 私が皆に向けてそういったところで、チャイムが鳴る。

「あ、チャイム」

「リンちゃん、後でお話ししようね!」

「気を落とさないでね」

「ドンマイ」

 それぞれがそれぞれの言葉を残して、自分の席に踊っていくのを見送りながら、私はこれまでの出来事に大きな溜め息をついた。

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