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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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量産へ

「スゴイです!」

 興奮気味に言うオカルリちゃんの目の前には、私の具現化したテレビがあった。

 映像が見えれば良いだろうというリーちゃんの言葉と、送られてきたイメージに沿って具現化したんだけど、オカルリちゃんの興奮度はかなり高い。

 どうしたんだろうと思っていると、オカルリちゃんは震えながら「これは、ひょっとして液晶モニターではありませんか?」と言って、こちらを見てきた。

 私は具現化しただけなので、真実はわからず、どうなのかと思ってリーちゃんに視線を向ける。

 リーちゃんは『その通りじゃ!』と少し得意げに答え、オカルリちゃんは「やはり!」といってテンションを上げた。

 私としては液晶というのはそれほど珍しくないのにと一瞬思ったのだけど、冷静に思い返すとこの時代のテレビは大きくて厚かったことを思い出す。

 そうだった、この時代は未だブラウン管という部品が使われているのが普通だった。

「リ、リーちゃん?」

 少し慌ててリーちゃんに声を掛けると、落ち着いた声で『大丈夫じゃ、5年ほど前に発売開始されておるのじゃ』と言う。

『ただ、多少レアではあるがの』

 リーちゃんの付け足すような言葉に多少不安は覚えたものの、オカルリちゃんはテキパキと作業を始めていたので、暴走には繋がらなそうだと判断して様子を覗うことにした。


 機能をチェックするように、オカルリちゃんは様々なダイアルやスイッチを押したり回したりしてから、接続用の端子のチェックをしていった。

 オカルリちゃんの目はらんらんと好奇心で輝いているが、そのチェックの目は鋭い。

「凛花様、ぬいぐるみのカメラをお貸し頂けますか?」

 こちらを振り返りながら手を出してきたオカルリちゃんの手に「はい」と手渡した。

 オカルリちゃんは、シャー君モデルのぬいぐるみをわしわしと触っていじり回すと、接続用の端子を見つけてコードを接続していく。

 別にぬいぐるみだから気にするのは自意識過剰かもしれないけど、私のモデルの者じゃなくて良かったなと思ってしまった。


 手早く接続を確認したオカルリちゃんは「テープも具現化してくれているようなので、撮影してみますね」と言ってカメラをこちらに向けてきた。

「千夏さんも、凛花様に並んで貰えますか?」

 私のぬいぐるみに頬ずりを続けていた千夏ちゃんは「え、なに?」と名前を呼ばれたことに少し驚いた表情を見せる。

「ビデオカメラの動作確認をしたいので、凛花様と一緒に手を振ってください。動いてる映像を撮りたいので」

 オカルリちゃんがそう説明すると、千夏ちゃんは「任せて」といって私の腕に自らの腕を絡めた。

 千夏ちゃんと私がくっついたことで、準備完了と判断したのであろうオカルリちゃんは「それじゃあ、撮影しますね」と宣言する。

 直後、ジーという音がして、撮影が始まったのだとわかった。


「では、録画できているかどうか確認しますね」

 オカルリちゃんはそう宣言すると、一旦外していたコードを差し直して液晶モニターに映像を映し出した。

 映し出された映像に、千夏ちゃんが「おーー」と歓声を上げる。

 一方、オカルリちゃんは「スゴイです、ちらつきもないですし、これ、最新モデルでしょうか」と真剣な顔で手を振る私と千夏ちゃんの映像を食い入るように見詰めていた。

 二人が熱中しているのが私の映った映像であることに加えて、あくまで具現化のテストなので「確認できたなら、一旦消すよ」と伝える。

「「えっ!!」」

 二人が同時に驚いた声を上げた後、ほぼ同時に悲しそうな顔を見せた。

 その表情だけで、罪悪感がチクチクと胸に刺さる。

 だが、お母さんは私の事情もリーちゃんも知っているとは言え、お父さんは知らないのだ。

 どのみち区切りは付けないといけないので「実証実験は出来たし、一旦消してもいいでしょ?」と踏み込む。

 すると、オカルリちゃんは「そう……ですね。凛花様への負担になるかも知れませんしね、具現化の継続は」と言って頷いてくれた。

 一方千夏ちゃんは、私モデルのぬいぐるみを抱きかかえて「これは、だめ?」と目を潤ませて聞いてくる。

「千夏さん、型紙を貰って、作りますから……」

 すぐにフォローに入ってくれたオカルリちゃんも、自分の手の中のぬいぐるみをチラチラ見ながら苦渋の決断と言いたげな表情を浮かべていた。

 具現化してしまった以上、ぬいぐるみは単独で存在しているので、私には負担はかからないし、機械でもないので、問題は無い。

 何より、二人の表情を曇らせたくないという思いで、私は二人にぬいぐるみは消さないことを伝えた。

 直後、二人からの感謝の言葉を貰い。

 戻ってきたお姉ちゃんやユミリン、更にはお母さんにまで存在を知られ、私モデルのぬいぐるみを量産することになってしまった。

 とはいえ、千夏ちゃんやオカルリちゃんの残念そうな顔を見続けなくて良かったとホッとしてしまっている。

 多少恥ずかしさはあるけど、求められているウチが花だと言い聞かせて、私は人数分の手のひらサイズのぬいぐるみを具現化していった。

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