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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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交換

「凛花ちゃん、すごいわ、滅茶苦茶可愛い!!」

 具現したばかりのビデオカメラ内蔵のぬいぐるみを抱き上げた千夏ちゃんはギュッと抱きしめた。

 モデルが自分なのもあって、少し複雑な気分である。

「そのぬいぐるみのイメージを作ったのは、リーちゃんなので、感想はリーちゃんに言ってね」

 喜んでいる千夏ちゃんにそう伝えたところで、オカルリちゃんが真剣な顔で「凛花様」と声を掛けてきた。

「な、なに?」

 オカルリちゃんが何を言い出すのかと予測が立たなかったのもあって、私は少し警戒しつつ尋ねると「お願いがあるんですが」と言う。

「え、お願い?」

 私が聞き返すと、オカルリちゃんは「はい。ホントは、私も千夏さんが抱きしめているぬいぐるみが欲しいんですが、それは流石におこがましいので、設計図をください」と言い出した。

「設計図!?」

『ぬいぐるみじゃから、型紙じゃな』

 絶妙にピントのずれたリーちゃんの言葉に、私は「そこじゃないよ!」とついツッコんでしまう。

 だが、私のツッコミに対してリーちゃんは反応を示さなかった。

 一方でオカルリちゃんは「難しいでしょうか?」と旬とした表情を見せる。

「できる! つくれるよ、ねぇ、リーちゃん!?」

『主様が望むならな』

 今度は即座に答えを返してきたリーちゃんに続いて、オカルリちゃんが「是非、お願いします!」と詰め寄ってきた。

 対して、リーちゃんが『ぬいぐるみそのものの具現でなくて良いのかの?』と尋ねる。

「確かにその方がすぐに手にできるかも知れません、が、自分で造り上げる楽しみもあると思います! 何より凛花様に負担を掛けずに、サイズを変えて量産できます!」

『なるほどの』

「私だけでなく、史ちゃんや加代ちゃんも欲しいと思うはずですから、凛花様の負担を増やさずに量産できる体制を作るのは大事だと思うんです!」

『そうじゃな。立派な心がけじゃ!』

 完全に二人の世界で盛り上がるリーちゃんとオカルリちゃんの会話を遠い目で眺めるしかなかった。


「と、とりあえず、動作確認はした方じゃないかな?」

 話の流れを変えるべく、千夏ちゃんにそう提案してみると「え?」と首を傾げられてしまった。

 よっぽど気に入ったのか、具現化からずっと千夏ちゃんはビデオカメラ入りのぬいぐるみを抱きしめ続けている。

「えーと、千夏ちゃんの抱きしめてるの、一応、ビデオカメラだから……」

 私がそう言うと、千夏ちゃんは「あ……」と声を漏らした。

「そう言えば、そうだったわ」

 自分の手の中のぬいぐるみを見て呟いた千夏ちゃんは「これ……設置しちゃうの……よね?」とかのしそうな顔で聞いてくる。

 なんとなく肯定しにくい空気だったけど、私は意を決して「元から、千夏ちゃんの部屋の監視が目的だったから……」と告げた。

 薄らと涙でうるんだ千夏ちゃんの上目遣いに、罪悪感が強く刺激される。

「リーちゃん、外観を変えた方が良いんじゃないかな?」

 私の言葉に、千夏ちゃんはより泣きそうな顔で「え?」と声を漏らした。

 少し焦りながら「設置しておくカメラ付きのぬいぐるみの外見を変えようってだけだよ、このままじゃ、設置で視界でしょ?」と早口で説明する。

 ちゃんと説明したつもりだけど、千夏ちゃんは頷いてはくれなかったので、強硬手段に出ることにした。

 まずは、千夏ちゃんが抱いたままのぬいぐるみの外見を、サメ型に変化させる。

 付き合いが長いのもあって、緋馬織時代、共に過ごすことの多かったシャー君の再現はかなり素早く出来た。

 外見が変わったことで、千夏ちゃんは「ああっ」と悲しそうな声を上げる。

 そのまま本当に泣いてしまいそうだったので、慌ててもう一体ぬいぐるみを作り出した。

「ほら、千夏ちゃん!」

 私がそう言って出現させたばかりのぬいぐるみを千夏ちゃんに差し出す。

「はっ、凛花ちゃん!」

 その反応に若干戸惑ったが、シャー君型になったビデオカメラと交換でぬいぐるみを手渡した。

「ありがとう、凛花ちゃん!」

 千夏ちゃんは満面の笑みで出現した私をモデルにしたぬいぐるみを抱きしめる。

「う、うん」

 これは話し合いの戦力なりそうにないなと判断した私は、千夏ちゃんを諦めて、オカルリちゃんに視線を戻した。


 視線を戻したオカルリちゃんは何か言いたそうな様子でもじもじしていた。

 恐らく正解だと思われる理由が頭に浮かんだ私は、話をスムーズに進めるために、手のひらサイズだが、私をもしたぬいぐるみを出現させる。

「い、いいのですか? 私は、その、型紙をいただけるわけですし……」

 遠慮しているのはわかる物の、視線が私の出現させたぬいぐるみから離れなかった。

「もちろんだよ」

 そう言ってて渡すと、オカルリちゃんは「わぁ」と熱の籠もった声を漏らす。

「そ、それで、ビデオカメラの確認をしたいんだけど……」

 オカルリちゃんが暴走していないか少し不安を感じながら、そう声を掛けた。

 すると、オカルリちゃんは「まずはテレビを具現化して貰えますか? 教室で出して貰った者で」とハキハキとした言葉が返ってくる。

 大丈夫そうだと安心した私は「了解」と答えて、テレビを出現させた。

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