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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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ビデオカメラの具現

「はい」

 頷いたオカルリちゃんに「詳しく聞かせて」と私は説明を求めた。

「えっと、凛花様に負担を強いることになるかもしれないんですが……」

 何かを覗う様に言うオカルリちゃんに、私は「うん。大丈夫だから、教えて」と伝える。

「その、凛花様なら、今回使ったビデオカメラを具現化出来ませんか?」

 オカルリちゃんの答えに、私は即座に応えられなかった。

 単純に、出来るか、出来無いかで言えば、多分出来ると思う。

 でも、簡単に実行して良いかとなると、判断に迷うところだった。

「私は出来るのでは無いかと思うのですが……」

 グッと顔を近づけてくるオカルリちゃんの圧に、私は視線を逸らすと共に逃げの一手を打つ。

「えーと、リーちゃんに、確認してみるね?」

 私の返しに、オカルリちゃんは目を輝かせて「はい!」と大きく頷いた。


『出来るぞ』

 頭に響く容赦ない断言に、私は『リーちゃん』と思わず低めの声で不満をぶつけてしまった。

 対してリーちゃんは『はて?』とわざとらしく返してくる。

 完全に遊ばれているのを感じながら『オカルリちゃんのビデオカメラを具現化出来るのはわかったけど、何か問題は起こらないかな? あれはこの時代でも未だ試作品なんでしょう?』と尋ねた。

『ふむ』

 リーちゃんはそこから少し間を開けて『まあ、主様だからでキルでごり押しすれば良いのではないかの?』と思ってもいない方法を提示してくる。

『え?』

 思わず驚きの声が出てしまった私に対して『要はこの時代ではオーパーツになることを懸念しているようじゃが、正直今更じゃ。元の世界でいくつやらかしたと思っているのじゃ、主様?』と口にしたリーちゃんの言葉には、微妙に呆れが混じっていた。

『それは、そう……かも知れないけど……』

 そう煮え切らない事を口にした私に、リーちゃんは『そもそも、ここは異世界なワケじゃ。元の世界よりも制約は少ない。ルリは主様の協力を願っているわけじゃから、どうしても聞き届けたくないと思っておらぬのであれば、答えてやっても良いのではないかの?』と言う。

 明らかに私の心情を読み切っての言葉だったし、ほぼ私が誘導したという自覚もあったが、私はその言葉に従うことにした。

『わかった、ありがとう、リーちゃん』


「たぶん、出来るって……その、リーちゃんが保証してくれた、よ?」

 私の答えに、オカルリちゃんは興奮気味に「やはり! 流石、凛花様です!」と私の手を取って大きく上下に振った。

 オカルリちゃんの勢いに飲まれて、どうにか私は「う、うん」と返す。

「では、早速……」

 私はオカルリちゃんのその言葉で、一気に冷静さを取り戻した。

「ま、待って、オカルリちゃん!」

「もちろんです、凛花様」

 大きく頷いてニコニコしながら私の言葉の続きを待つオカルリちゃんを前に、どうしようという思いで頭がいっぱいになる。

 ここで、助け船が入った。

「待て待て、ルリ、外で話す内容じゃないぞ」

 ユミリンの言葉に、オカルリちゃんはハッとした表情を見せてから周囲を見回す。

「そ、そうですね、つい熱が入ってしまいました」

 申し訳なさそうに頭を下げるオカルリちゃんに、私は慌てて「だ、大丈夫、私も道で聞き返差無ければ良かった。配慮不足だった。ごめんね」と頭を下げた。

 今度はオカルリちゃんが慌てた様子で「い、いえ、そもそも、後先を考えずに聞いてしまったのは私ですし!」と言う。

「こらこら、今度は謝罪合戦になっているから、後でにしないかい?」

 今度はまどか先輩が間に入ってくれた。

 お陰で、冷静さを取り戻した私とオカルリちゃんは、苦笑しながら顔を見合わせる。

 照れ笑いを交わし合って、後で話すということで決着した。


「すみません、お邪魔してしまって」

 結局、我が家の夕食の席に加わることになったオカルリちゃんは、そう言って謝ってきた。

「ウチはいつでも構わないから、気にしないでね、ルリちゃん」

 お母さんがそう言ってオカルリちゃんに微笑みかける。

「あ、ありがとうございます!」

 緊張した様子で返したオカルリちゃんに、お母さんは「あらあら」とだけ返して台所に移動していった。

「今日は、私が手伝うわ」

 そう言ってお姉ちゃんがお母さんの後を追う。

「私も行ってくる、千夏、ルリとリンリンを頼んだ」

 ユミリンも立ち上がるなりそう言って、私と、オカルリちゃん、千夏ちゃんの三人だけが今に残された。

 実はこのメンバーはオカルリちゃん指名のメンバーだったりする。

「……それで、なんでこの三人なの?」

 千夏ちゃんがチラチラと私を見ながらオカルリちゃんに問い掛けた。

 オカルリちゃんは真剣な表情を浮かべてから、声を潜めて「先ほど途中で言いかけましたが、凛花様がビデオカメラを具現化出来るなら、それを千夏さんの自宅に仕掛けられるのではと思ったんです」と言う。

 更にオカルリちゃんは「私が両親から借りている試作品を提供することは出来ますが、凛花様が具現化出来るのであれば、そちらを使った方が、脚が着かないのではと思ったんです」と続けた。

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