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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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テレビの具現

 廊下を覗いて確認した後でドアを閉めたオカルリちゃんと茜ちゃんから両腕で丸を作るサインを受け取ったユミリンが「よし、良さそうだ」と私に言った。

 頷きで返すと同時に、具現化のための集中に入る。

「凛花ちゃん、頑張って!」

「凛花様、無理を成されませんように」

 千夏ちゃんと史ちゃんの言葉に頷いて、全身から手と手の間、胸の前の空間にエネルギーを集中挿せた。

『主様、その位置では落下してしまう』

 リーちゃんからの指摘に、私は片目を開けて、場所を改める。

 上に荷物の載っていない机の前に移動して、具現化への最終ステップに入った。

 周囲の光景が3Dモデルのような線画として頭に浮かび上がる。

 移動した机の上に、リーちゃんから提供して貰ったテレビのイメージが出現した。

『リーちゃん、大丈夫そう?』

 私からの最後の確認に対して、リーちゃんは『問題なしじゃ』と太鼓判を押してくれる。

「みんな、いくよ」

 そう宣言してから胸の前に集めたエネルギーに変化を命じた。


「さっすっがです! 凛花様!!」

 もの凄く興奮した様子で目を輝かせてそう言ったのはオカルリちゃんだ。

 リーちゃんの具現化は見せていたけど、あからさまな機械の類いは初めてなのも大きいとは思う。

 まあ、リーちゃん自体、見た目こそぬいぐるみだけど、中身はヴァイアなので、機械の仲間ではあるのだけど、見た目からしっかり機械なのは初めてだ。

 そのせいもあってだろうか、もの凄くワクワクした目で「あの、凛花様、触れて良いでしょうか?」と私を見上げてくる。

 なんとなく、お預けされている子犬が思い浮かんだ。

 待たせるのも可哀想だし、そもそも機材の接続はオカルリちゃんに頼むつもりだったので「うん。もちろん。機械の接続は任せるね」と伝える。

 私がそう言うと「お任せください!!」とオカルリちゃんは言うなり、出現したばかりのテレビに頬ずりを始めた。


「アイツ、オカルト好きだと思っていたが、機械も好きだったんだぁ」

 しみじみとユミリンは言った。

 正直、頬ずりまでするとは思っていなかったので、私も少し驚いてはいたけど、まあ、オカルリちゃんは好きな物にはまっしぐらなイメージはあるので違和感はない。

 その様子からオカルトより機械の方が好きなのかと思ったけど、リーちゃんの『主様の具現で出現したテレビだからじゃないかの?』という指摘に、なるほどと思った。

「リーちゃんが、私の具現化と機械の複合だからじゃないかって」

 私がリーちゃんの考えをそう言葉に出すと、皆も納得がいったらしく、なるほどと頷く。

「まあ、凛花様が作り出したモノに惹かれる気持ちはとてもわかりますね」

 史ちゃんがそう言って、加代ちゃんが「凜ちゃん、私も触ってみて良い?」と尋ねて来たので「もちろん」と頷いた。


 あっという間にコードを接続し、テレビを調整してしまったオカルリちゃんは、早速、録画した舞いの様子を映した映像を確認して「おお、映りも良いですね!」と声を弾ませた。

「へぇ、すぐ確認できるのは良いわね」

 オカルリちゃんの後ろからテレビをのぞき込んだお姉ちゃんも大きく頷く。

「もちろん、続きも見られるんだよね?」

 まどか先輩からの質問に、オカルリちゃんは「もちろんです」と答えて、再生ボタンを押した。

 曲が流れ、皆が舞いを踊り出すと、誰からともなく「お~」と歓声が上がる。

「セーラー服も良いわね。スカートがふわりふわりと舞うのが可愛いわ」

 委員長の感想に、茜ちゃんが「そうだねぇ、皆でぇ、同じ衣装なのもぉ、良いんだと思う~」と頷いた。

「巫女装束も良さそうだけど……」

 加代ちゃんがそう呟くと、史ちゃんが「どっちも似合うと思います。凛花様なら、どちらも可愛いです!」と言い出す。

「ちょっと、皆も舞うんだからね!?」

 私がそうツッコむと、まどか先輩が小さく笑ってから「まあ、神社の時は巫女装束、文化祭は制服でも良いんじゃないかな?」と言った。

「そうね、その方向で行きましょうか」

 まどか先輩の意見に同意したお姉ちゃんは「……ところで、視聴覚室の件はどうする?」と委員長に話を振る。

 お姉ちゃんの見解では、今、動画再生が出来る状況になったのでテレビが不要になったのでは?という判断のようだ。

 対して、委員長はチラリとオカルリちゃんを見る。

 オカルリちゃんはその視線に気付いて顔を上げると「お任せします!」と満面の笑みを見せた。

 結果、決断を迫られた委員長は苦笑してから「やはり、使用希望へ継続しましょう。そもそもこのテレビの説明は出来ませんし、ちゃんと、視聴覚室を使って、アリバイを立てて、凛花ちゃんのことが広まらないようにしましょう」と言う。

 理路整然とした理由の説明に反対の声が上がるわけもなく、委員長の提案は全員納得で承認された。


「さすが、委員長」

 私の心からの言葉に、委員長は「話の流れを参考にしてまとめただけよ」と何でも無いことのように言った。

「いや、私だったら、急に決断を任されたら、それだけで戸惑う自信があるよ」

 そう伝えると、委員長は「凛花ちゃんは考えすぎなのよ」と言う。

「できる事が多いから迷うんだわ。私みたいに手札が限られていると、自然と身につくものよ」

 委員長はそう言って少し寂しそうに笑った。

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