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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
468/477

逆の

「あー、と、機械に詳しい人います?」

 オカルリちゃんの問いに、委員長が「多少は」と手を上げて答えた。

「じゃあ、私も立ち位置に入るんで、ファインダーの枠内に収まるか、一応確認して貰って良いですか?」

 委員長は「了解」と返して二人が入れ替わる。

 オカルリちゃんが立ち位置に立った後で、ファインダーを確認して、委員長は「うん、問題ないと思うわ」とまったく調整をせずに報告した。

「わっかりました」

 オカルリちゃんはそう言うと、自分の荷物から、今度は粘着テープを取り出して、三脚の立っている床の上ににバッテンにしてはり付ける。

「ああ、三脚位置バミったのか」

 まどか先輩の言葉に、加代ちゃんが「ばみ?」と首を傾げた。

 即座に千夏ちゃんが床のバッテンを指さしながら「あれよ、舞台とかで、あーいう風に、テープとかで、立ち位置に目印を付けることを『バミる』っていうのよ」と説明する。

「場を見ると言うのが語源だとか、まあ、平たく言えば、目印だね」

 千夏ちゃんの説明の後で、まどか先輩がそう続けた。

 一方、オカルリちゃんは委員長に向かって「美保さん、テープ不味かったら、後で距離記録して剥がしますんで」と巻き尺を取り出しながら言う。

 委員長は「空き教室だから、その程度大丈夫だと思うけど、一応確認しておくわ」と返し、お姉ちゃんが「申請書なら、任して頂戴」と胸を叩いて見せた。

「お二人とも、ありがとうございます。解散までに計っておくんで、後の確認は小間返します」

 そう言って頭を下げたオカルリちゃんに、ユミリンが「今測っちゃえば良いんじゃないか?」と言って立ち位置から外れてオカルリちゃんに歩み寄る。

「いや、折角立ち位置に付いてますし、先に……」

 オカルリちゃんがそう言ってる間に巻き尺の先端を持ったユミリンは「そんなこと言って遠慮している間に、図った方が早いだろう」と言った。

「それもそうよね」

 今度は千夏ちゃんが、巻き尺のリール側を持って、ユミリンと反対側に移動する。

 二人の行動の早さに驚きと戸惑いの混じった表情で固まっているオカルリちゃんに、二人はほぼ同時に声を掛けた。

「ほら、早く計っちゃおう」「早く計ろうぜ」


 三脚の位置を記録したところで、まずは全体のフォーメーションを確認するために、軽く待ってみることにした。

 急に振り付けを直すのは難しいので、当初の予定通り、私がコレまでとは反対の動きで待ってみる。

 リーちゃんのサポートがあるので大きな失敗はないはずだ。

 そう説明して配置につくと、オカルリちゃんが忙しなく動き出す。

 最初に、ビデオカメラの録画を開始してから、中瀬古先生提供のラジカセの再生ボタンを押した。

 既にダビングによって、曲の開始までを少し長く調整してあるので、オカルリちゃんが列に戻るのも比較的余裕がある。

 実際、オカルリちゃんが舞いの出だしのポーズを取ってから、曲の始まりまで数秒の余裕があった。


「大丈夫そうです。中身はテレビが無いので確認できませんが……」

 ビデオの動作状況を確認したオカルリちゃんがそう言って、機械を操作して録画状況、正確にはテープが回っているかを確認して報告をしてくれた。

 元の世界では動画もスマホで撮影できたが、この時代はアナログテープに記録していく。

 しかも、映像の確認はテレビに投影しないと確認できないのだ。

 手持ちの録画機材で動画をチェックというのは、この時代より先に一般化する技術で、この当時は望むべくもない。

 というわけで、実際の映像を見ての検証は、先送りとなり、今日のところは、体感での話し合いと言うことになった。


「凛花が振り付けを左右反転してくれただけだけど、自分たちの動きと真逆って言うのはやっぱり目立つわね」

 お姉ちゃんの感想は皆も思っていたことであるようで、皆口々に賛同していった。

 一人、皆と振りが反対だった私は、少し冗談めかして「なんだか、私だけ振り付けを間違っているって気がしてきて、なんどか、舞いが止まりそうになったよ」と自分の体感を口にする。

 対して、史ちゃんが「そうは見えませんでしたよ。いつも通り綺麗でした……お恥ずかしながら、そのせいで、私の方が吊られそうでした」と言って頬を赤らめた。

 史ちゃんの発言に対して、茜ちゃんは「まあ~、凛花ちゃんの舞いはぁ、お手本だからぁ、仕方ないよぉ」と伝える。

 さらにユミリンが「確かに、急にお手本の動きが、反対になるって言うのは、ちょっと頭が混乱するよな:」と腕組みをして深く頷いた。

「でも、皆、大きなミスはなく踊れてたし、急な振りの変更だったけど、それなりに成功じゃないかしら?」

 お姉ちゃんがそう言った後で、まどか先輩が「ますます、結果が気になってきたな」と言いながら設置されたままのビデをカメラを見る。

「そうですね、こんなことなら、テレビも持ってきた方が良かったですね」

 真面目な顔で言うオカルリちゃんに、私は「流石に、テレビを毎回持ち歩くのは大変じゃない?」と苦笑気味に行ってみた。

 すると、私を見たオカルリちゃんは「あっ」と声をあげる。

 そうしたのかと視線を向けるとオカルリちゃんは「凛花さま、テレビ出せたりしませんか?」と突拍子も無いことを言い出した。

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