試験が終わって
試験初日の午後、昼食をそれぞれ終えて集まった私たちは試験勉強に勤しんでいた。
案外、試験日に集まるというのは、以前の京一の記憶を含めても経験が無いので、少し不思議な感じもする。
とはいえ、この一週間、部活動も同好会も休止だったこともあって、ずっと一緒に勉強してはいるので、その点はいつも通りだ。
リーちゃんの作った試験問題や私のまとめたノートを元に、皆が真剣に試験勉強に励んでいる。
お母さんはリーちゃんのことはよくわかっているので、茜ちゃんの家よりもリーちゃんは生き生きと指導をしていた。
よく考えると緋馬織の皆とか、東雲先輩にウチの家族、何よりヴァイア仲間と、話し相手がそれなりに多かったリーちゃんだけに、こちらに来て私としか話せない環境にストレスを感じていたのかもしれない。
『ほれ、主様、手が止まっておるのじゃ!』
リーちゃんのことを考えていたら、その張本人から声がかかった。
「あ、うん、ゴメン、考え事してた」
リーちゃんのことを考えていたとは言わずに、そう返すと『あと一日じゃ、気を抜かずに頑張るのじゃ』とエールを送ってくれる。
「そうだね、頑張るよ」
そう返して、私は問題を解くのに、意識を集中した。
翌日に未だ、試験最終日が控えていることもあって、お母さんは皆が夕飯を食べて帰れるように、普段より早めに夕飯を準備してくれた。
賑やかな夕飯を終えると、暗くなる前に帰宅組は帰って行く。
流石に人数が半分以下になるので、少しサビ石井なと思うと共に、先日の茜ちゃんの涙のお別れを思い出した。
明日会うとわかっていても、寂しいなと思う気持ちはわかる気がする。
皆の去り行く姿を見送りながらそんな事を思っていた。
それぞれお風呂も済ませて、ユミリン、千夏ちゃん、お姉ちゃんに私の四人は早めに寝ることになった。
明日は試験最終日であると同時に、部活動、同好会の解禁日でもある。
火曜日なので、明日は同好会の方が活動予定だ。
茜ちゃんの家でも軽く舞いを舞って、高評価を貰ったので、早速三様の舞について組み立てていく。
皆揃って踊る単一振り付けとは違い華やかさも、広がりも出てくるとどんな仕上がりになるか楽しみだ。
まあ、私だけは先代からの引き継ぎで振り付けを習得できているという余裕もあるので、ちょっと高みの見物のような感覚もあるので、正直申し訳ないかなと思うところもある。
とはいえ、完成が楽しみなのは事実だし、皆で造り上げていくというのはやっぱり楽しいのだ。
少し早めに寝床を出たのは、今日からお弁当作りが再開だからだ。
再開と言っても、土曜、日曜、昨日と無かっただけでそれほど久しぶりというほどでも無い。
とはいえ、お母さんと話しながらお弁当箱に、おかずやご飯を詰めるのは、思った以上に心を落ち着かせてくれた。
味付けの感想を伝えたり、こっそり味見をさせてもらいながら、お父さんを含めて五人分のお弁当が完成したところで、お姉ちゃんが起きてくる。
「あら、今日は参加しようと思ったのに」
そういうお姉ちゃんに「今日も試験なんだから、試験に集中して!」と伝えると「凛花もでしょう」と返されてしまった。
皆と合流しつつ学校へ向かった。
流石に集団登校が無い地域なので、私たちの集団は目立つ。
しかも社交性の高いメンバーが多いので、すれ違う小学セイント目が合えば手を振って上げるし、家の前の掃き掃除をしている方にも挨拶をしていくので、最近では声を掛けられることも多くなってきた。
元の世界だと、少し希薄になってきている気がする近所づきあいだとか、同じ地域という感触が未だ色濃いのは、この世界では昭和が続いているからなのかもしれない。
実際の『種』にそういう感情があるかはわからないけど、この昭和がずっと続いてほしいという思いは、多かれ少なかれあって、それが形になったのがココなんじゃ無いかとも思ったりもした。
試験最終日、一年は社会と理科の試験が行われた。
今回も別学年を教える先制が監督に就いている。
既に試験としては4回目になるので、注意事項などはかなり省略された。
それでも、試験開始まで答案用紙、解答用紙は裏返しで置いておく、何か落としたり、トイレを催したり体調に不調を感じたら手を挙げるなどは、重要と考えているからだろう。
今回も繰り返し説明があった。
試験終了後、私たちは千夏ちゃんの合流を待ってから、委員長と共に空き教室の鍵を受け取って、早速全員で向かった。
流石に最高学年となると、少し連絡事項など亜多いのか、お姉ちゃん達は遅れての合流となる。
全員が揃ったところで、今日までの試験を振り返りながらお弁当の時間となった。
今日までは試験期間中ということで、牛乳の配布はないので、水筒に入れて持ってきたお茶を皆で回し飲みする。
意外なことだけど、この世界のこの学校では、水筒も持ち込み制限というか、持ってくる場合は部活顧問や担任教師からの許可が必要だった。
飲物についても、水道水を直接の婿が多い。
元の世界では、水筒は必携アイテムなので、妙なところで時代の違いを感じさせられた。




