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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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1日目の終わりに

「はあああ、つかれましたあああ」

 わざわざ私とユミリンの席のそばに来てからオカルリちゃんは盛大にそう言い放った。

 今日は試験初日、国語、数学、英語の三教科の試験がいつもの授業時間に合わせて実施されている。

 時刻は普段の三時間目が終わったところだ。

 これから綾川先生がやって来て、軽いホームルームが終わり次第下校となる。

 試験は理科と社会の二科目残っていて、それは明日の一時間目と二時間目に行われる予定だ。

 ちなみに、二年生三年生とは科目の順番が違うらしい。

 少なくとも三年生は、今日は社会、国語、理科の断科目だとお姉ちゃんが言っていた。


「あ、そうだ、綾川先生に聞いたらどうかな?」

 私がそう提案すると、ユミリンが「ん?」と首を傾げた。

「ほら、ユミリン、数学の試験前に、保健体躯のテストのこと気にしてたでしょ?」

 ユミリンは「ああ、そんなこと言ったかも」と覚えていない感じで返してくる。

「え!? 気にしてたでしょ?」

 私がそう追撃すると、ユミリンは「あの時は気になったけど、すっきり忘れてたわ、数学と英語のテストで」と言って頭を掻いた。

 思っていたよりも気にしているわけではないらしい。

「まあ、リンリン、今は保健体躯よりもだ、明日の社会と理科じゃないか?」

 もの凄くストレートな正論に、私は「それはそう」と頷いた。

 確かに、今出なくても良いし、状況を考えれば園に科目が優先になるのは当然だと納得せざるを得ない。

「お、アヤちゃん来たぞ」

 私が頷いたところで、担任の綾川先生が教室には行ってきたので、オカルリちゃんや史ちゃん、私の周りに集まってきてくれていた皆が、自分の席へ戻っていった。


「凛花ちゃ~~~~ん」

 ホームルームが終わるとすぐに駆けつけてきてくれたのであろう千夏ちゃんに抱き付かれた。

「おい、千夏、そんなに勢いよく抱き付いたら危ないだろ!」

 私から千夏ちゃんを引き離しながら、ユミリンが注意してくれる。

 確かに、私はどうにか堪えられるけど、普通の子なら一緒に椅子から転落して怪我してもおかしくない勢いだった。

 お互いの安全のためにも、とても真っ当な指摘だと思う。

 だが、千夏ちゃんは「アンタはずっと、凛花ちゃんの前の席だから良いけど、私なんてクラスは違うは、下の階だわで、大変なのよ?」と抗議した。

 確かに、友達の中で一人だけクラスも、クラスのある階も違うのは疎外感を味わってもおかしくない。

 にも加えて、家族は少し離れてしまっているし、マンションの大家さんは少し怪しい、そんな状況でも、明るく振る舞っている姿に、なんだか胸が熱くなってしまった。

「え、ちょ、凛花ちゃん、大丈夫!?」

 私に向かって慌てた様子で千夏ちゃんが声を掛けてくれて、ユミリンが「オイ、千夏、リンリン泣かしたのか!?」と騒ぎ出す。

「それは、聞き逃せません!!」

 史ちゃんがそう言って間に入ってきて、茜ちゃんが「お~~よしよし、かわいそ、かわいそ」といって私の頭を撫でだした。

 そのまま、オカルリちゃんや加代ちゃん、面白がった中本さんまでもが乱入しててんやわんやの御騒ぎになってしまう。

 結果、何故か、私が教室で号泣した話になってしまった。


「凛花、大丈夫なの?」

 お姉ちゃんが心配そうに声を掛けてくるのは、どう広まったのか、私の号泣話を聞いたからだ。

「大丈夫だよ、そもそも泣いてないし」

 少し恥ずかしくて頬が熱いが、誤解は解かなくてはいけないので、そう伝える。

「と、本人は言っているけど?」

 まどか先輩がそう言って私じゃなく、他の皆に話を振った。

 すると、茜ちゃんが「涙する凛花ちゃんが可哀想でぇ、慰めたのぉ」と言い切る。

「ま、泣いてるじゃない!」

 お姉ちゃんが声を上げたので「泣いてないよ、泣いてない、茜ちゃんがそう勘違いしただけだよ!」と真実を訴えた。

 だが、すぐにそれを肯定してくれる人は現れず、少し経ってからユミリンが「リンリンの自覚とは違うかもしれないが、涙ぐんでは見えた」と言う。

 続いて、千夏ちゃんが「私が……切っ掛け、だよね?」と暗い顔で言うので、私は意を決して思ったこと全てを告白することにした。


「ああ、そういうことね」

 私の説明に納得してくれたらしいお姉ちゃんは、そう言って表情を和らげた。

 一方、私がどういう目で見たのか伝わった千夏ちゃんは「大丈夫だよ、凛花ちゃんもそうだけど、皆がいてくるから、私は元気でいられるんだよ」と言ってくれる。

 すぐにでも不安そうだったマンションの姿を思い出せるだけに、それが強がりのようにも見えて、少し目頭が熱くなった。

「姫は優しいからね」

 そう言ってまどか先輩の手が私の頭を撫でてくれる。

「あ、それ、私の役目!」

 文句を言うお姉ちゃんの声に、私は少し噴き出してしまった。

 心が温かくなる皆のやりとりの言葉を聞きながら、甘w過ぎないようにしようと、私は心中で決意する。

 そんなタイミングで、委員長が「誤解も解けたなら、帰りましょう。未だ、試験は明日もあるんだから、早く凛花ちゃんの家に集合しないとでしょ」と言って話を締めた。

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