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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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朝食と披露

 皆を起こし、揃ったところで、合宿二日目の朝ご飯が始まった。

 茜ちゃんちの奥にある井戸水はとても冷たかったので、顔を洗った皆は一発で目が覚めたらしい。

 普段から、茜ちゃんもこれで目を覚ましてるようで、まるで蕩けてしまっているかのようなフラフラした歩みだったものが、洗顔を済ませるとかなりしゃっきりしていた。

 まあ、茜ちゃんは普段から歩やっとしたところがあるので、キビキビとまではいかないけど、それでも使用前、使用後はわかりやすい。

 つい笑ってしまったら、プンプンと怒られてしまった。


 食卓には茜ちゃんのお父さんとお爺ちゃんも加わり、最初こそ、静かに食べていたが、大人びていても全員が中学生女子、つい話に盛り上がって賑やかになってしまった。

 お爺さんもお父さんも嫌そうな顔を見せずに笑ってくれているので、不快ではなさそう。

 特に委員長が話を振ってくれていて、こういう場面でも委員長なんだなと思ってしまった。


「凛花ちゃんが神楽舞いをやるのね」

 茜ちゃんのお母さんにそう言われた私は慌てて首を振った。

「い、いえ、私だけじゃ無いです。ここにいる全員でやるんです!」

 私の返しに、茜ちゃんのお母さんは「あら、でも、主役でしょ?」と笑む。

「そ、それは、その……なんというか……」

 返しに困ってしまった私に代わって、お姉ちゃんが「すみません。妹は自己主張するタイプじゃ無くて」と間に入ってくれた。

「あら良いのよ。女の子は控えめの方が可愛いわ」

「そうですね、私もそう思います!」

 手を挙げて参戦してきた千夏ちゃんに、ユミリンが「お前も見習えよ」と茶々を入れる。

 なんだか黒いオーラが見える笑顔で「あんたの方こそでしょ!」と言い返して二人がにらみ合った。

「お二人とも仲良しですね~」

 美味しそうに豚汁を啜りながら言うオカルリちゃんに、声を揃えて「「仲良しじゃ無い!」」という千夏ちゃんとユミリンは仲良しだと思う。

 そんな二人の様子を見ながら食事をしていると、委員長が話を振ってきた。

「ね、凛花ちゃんは皆のお弁当を作ってるのよね?」

 急に話を振られて、思わず「えっ?」と声を漏らしてしまう。

 そんな私に代わって、お姉ちゃんが「そうなのよ」と大きく頷いた。

「あ、私も作って貰ってます」

 ユミリンがそれに続いて、千夏ちゃんも「私もです」と手を挙げる。

「あら、スゴいわね。可愛いだけじゃ無くて、とっても偉いのね。すぐにお嫁に行けそうだわ」

 茜ちゃんのお母さんは頬に手を当てて柔らかく微笑んだ。


「ダメです」

 急にお姉ちゃんがそう言って私に抱き付いてきた。

「私が目の黒いうちは誰にも凛花をあげません!」

「お、お姉ちゃん!?」

 慌てて食器をテーブルに置いて、絡まってきたお姉ちゃんの腕に手を置く。

「く、苦しいんだけど?」

 ギュウギュウと絡めた腕に力を込めて黒姉ちゃんにそう訴えた。

「お姉ちゃん!?」

「凛花~~」

 私の呼びかけに返し、縋り付くような言い方で名前を呼んでくるお姉ちゃんに、何があったのかと動揺してしまう。

「こら、やめなさい」

 まどか先輩の冷静なツッコミの後、抱き付いたお姉ちゃんの口から「ひょっ」と変な声が飛び出てきた。

 直後腕から力が抜けて私の首から離れ、お姉ちゃんの脇腹を押さえに行った。

 ああ、脇腹をつかれたのかと理解した私は、助けてくれたまどか先輩に「まどか先輩、ありがとうございます」とお礼を言う。

 軽く手を振って応えてくれたまどか先輩を目に収めた直後、お姉ちゃんが再びくっついてきた。

「ダメよ、まどかは人たらしだから、絶対泣かされちゃうわ」

 お姉ちゃんの主張に対して、即座に「お前は人聞きの悪いことをいうな!」とツッコミを入れるまどか先輩、この二人もユミリンと千夏ちゃんと同じ仲の良さを感じる。

 時々、そんな皆との絆が自分の中にないせいで、皆が遠い存在に見えるときがあった。


 朝食の後、すぐに勉強と思ったのだけど、目を覚ますためということで、私達は軽く神楽舞いの練習をすることになった。

 お寺で、神楽の練習なんていいのって聞いたところ、茜ちゃんのお爺さんが「昔は仏様も神様も関係なく拝んだものだよ」と笑って教えてくれる。

 そんなわけで、住職直々の許可で、私たちは練習が出来る事になった。

 住人全員で舞うため、まずはお借りした布団を上げ、勉強に使っていたテーブル類や私たちの着替えや勉強道具などの荷物を端に避ける。

 茜ちゃんのお爺さんに、両親という見学者を前に、学校関係者以外に初めて神楽を披露することになった。


「それにしても、よく、音楽持ってきてたね」

 私がそう声を掛けると、神楽舞いの楽曲が収まったテープを持ってきてくれた委員長が「まあ、正直、あり得るかなーと思ってたからね」と笑った。

「さすが、委員長、助かります」

 少し冗談めかして言うと、委員長も「尊敬しても良いわよ」と切り返してきて私たちは笑い合う。

 オカルリちゃんと茜ちゃんがふざけて「はは~~」とか「み~ちゃんさま~」とか言い出したのは想定外だったらしく、委員長は「はぁ」と溜め息を吐き出した。

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