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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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試験対策合宿

 一学期の中間試験は五科目、国語、数学、英語、社会、理科だ。

 月曜日と火曜日の二日間が当てられていて、最終日でもある火曜日の放課後から部活動は解禁となる。

 この世界の時代では土曜日も学校があるので、集中して一日勉強に費やせるのは日曜だけという子も多かった。

 私たちの場合は、演劇部も神楽の同好会も、在籍している部活、同好会が共有なのに加えて、塾や水泳、英語教室など、習い事の類いがある子もいないので、時間を合わせるのは容易である。

 というわけで、早速、茜ちゃん待望のお泊まり会が開催されることになった。

 茜ちゃんの我慢が限界だったことと、日曜日にお寺に法要が入っていなかったため、タイミングがよかったのである。

 そんなわけで、二日後に試験本番を控える土曜日から日曜日に掛けて、試験対策合宿という名のお泊まり会が開催されることになった。

 しかも、ありがたいことに茜ちゃんのお爺さまの行為で、日曜日には修行体験として、お掃除や本堂での読経などの体験もさせて貰う。

 合宿場所は前回の勉強会でも使わせて貰った広間を貸して貰うことになっていて、放課後一旦支度で着替えてから皆でお邪魔したときには部屋の隅に人数分の布団が準備されていた。


 ニッコニコが止まらない茜ちゃんは素直に可愛かった。

 お風呂セットにお着替えなど、茜ちゃん以外の全員がそれぞれ大きめの鞄を持っているだけでも嬉しいらしい。

 こんなに全力で喜んで貰えると、何でもして上げたくなってしまうのだが、しかし、今回は遊びでは無く試験勉強合宿だ。

 経験でも、精神性でも、年長者である私が、こころを鬼にして皆を誘導しなければと決意する。

 だが、既にぬいぐるみのもふもふボディに乗り移っているリーちゃんが私の頭に乗ってきて『主様。主様は余計なことを考えない方が良いと思うのじゃ』と私の頭に音を介さず言葉を届けてきた。

 皆に聞き取られないように、私も頭の中で言葉を返す。

『余計じゃ無いでしょう? 年長者の私がしっかり自覚を持って行動した方が良いに決まってるでしょ』

 私の一分の隙も無い正論に対し、リーちゃんは何も言えなくなった。

 心の中で、わかったでしょうと、悪戯っぽく追撃してみると、リーちゃんは『そうじゃのー』と帰してくる。

 どうやら分の悪い戦いはしないというポーズのようなので、これ以上の追い打ちは辞めることにした。


「それじゃあ、試験勉強頑張ろう!」

 私はちょっと気合を入れるつもりで、右手を振り上げて皆に訴えた。

 けど、皆からの反応は余り芳しくない。

 見かねたと言わんばかりの顔でまどか先輩が「ほどほどにいこう、明日まで時間はあるからさ」と言った。

『主様は張り切るとカラ回るからの』

 リーちゃんの追い打ちに、私は何も言い消せない。

 大人しく席に戻って勉強道具を並べていった。

 皆が、ごめんねとか、もう一回やりましょうとか、気を遣ってくれているのがとてもよくわかる木野を使った言葉の数々に、打ちのめされて「大丈夫だから」とだけ返す。

 なんだかもの凄くやるせない気持ちになった分は、英単語の書き取りで紛らわすことにした。


 先ほどの声がけと活入れは失敗したものの、私にはリーちゃんと共に準備した秘密兵器があった。

「皆、見て~リーちゃんと作ったんだ」

 そう説明しながら五枚のわら半紙、私特性の試験予想問題を披露する。

「これって!」

 一番最初に目を輝かせて反応したのはオカルリちゃんだった。

 早く説明してほしいと言いたげな目線に、少し得意な気持ちになった私は「そうです」と一旦、頷く。

 そして「私が予測した試験問題です!」と続けると、今度は拍手が起こった。

 見せて見せてといいながら、取りあう皆の姿にやりきった気持ちになる。

 そんな中、盛り上がる皆の和に入っていない二人がいた。

 当たり前だが、三年生であるお姉ちゃんとまどか先輩である。

 しかし、今回の私に抜け目は無かった。

「はい、まどか先輩とお姉ちゃんのもつ食ってみたよ」

 そう言って三年生の学習範囲を元にした試験予想問題を取り出して並べる。

「凛花……これ、作ったの?」

 目を丸くして聞いてきたお姉ちゃんに「うん」と頷いてから「リーちゃんに手伝って貰ってね」と続けた。

「いや、姫……もうなんて言って良いか、流石にこれは予想外だったよ」

 まどか先輩はそう言って自分の頭の後ろを掻く。

 固まったお姉ちゃんに、なんだか困惑しているまどか先輩、そして、リーちゃんの『主様は余計なことを考えない方が良いと思うのじゃ』という言葉が再生された。

 またやってしまったかもと思いながら二人の変化を伺っていると、お姉ちゃんが「凛花!」と私の名を呼ぶ。

「は、はい!?」

 思わず上擦って締まった声で答えた直後、お姉ちゃんが全力で抱き付いてきた。

「お、おねえちゃん!?」

 上擦ったままの声で声を掛けると、お姉ちゃんは「ありがとう。凛花! これできっちりバッチリ勉強して、凛花の協力に全力で応えてみせるわ!」と力強く宣言した。

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