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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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試験勉強二日目

 試験勉強はその後も場所を変えて続けることになった。

 茜ちゃんの家の次に舞台となったのは、我が家である。

 一応、茜ちゃんとしては、うちでと言ってくれていたのだけど、流石に連日は申し訳ないと断わると、それならお泊まりでといいだした。

 昨日、もの凄く幸せそうだったし、断わるのも申し訳ないので、試験終了後の土曜日と約束することで納得して貰っている。

 そんなわけで、今日は我が家で試験勉強となった。


「あら、琴音が勉強教えているの?」

 飲物を持ってきてくれたお母さんは、私たちの配置だけでそう口にした。

 リーちゃんのことといい、お母さんはかなり鋭い。

 まさか席の並びだけで気付くとは思わなかった。

 私がそう思っていると、お姉ちゃんが急に私の頭を撫でてくる。

「え? なに?」

 訳がわからずに目を丸くした私に、お姉ちゃんは「お母さんには昨日の話をしてたのよ」と言った。

 つまり、知っていたのかとわかると、何だという気持ちになる。

 一方で私の思考を完全にお姉ちゃんが読み切っていることにも気付いた。

 自分がどれだけわかりやすいのかと考えると、ちょっと情けない。

 とはいえ、今は試験勉強だと切り替えて、皆で試験の準備に取り込むことにした。


 リーちゃんの協力で、既に多くの問題が用意できていた。

 皆それぞれに問題を解いて、知識と経験を積み重ねる。

 大事なのは、反復することで、問題そのものの内容や解き方を覚えるよりも、問題を解くという行為になれることが大事だ。

 だが、問題集など個人で所有するものにはどうしても限度がある。

 数を熟すことこそが重要なのに、その数を揃えることが難しいのだ。

 けれど、私たちにはリーちゃんという頼りになる存在が居る。

 うちの場合、茜ちゃんのお家と違って、お母さんもリーちゃんの存在を知る共犯者だから隠す必要も無いので、全力指導して貰うことにした。

 こうして明確なメリットを見せることで、茜ちゃんの家に行くのが嫌なわけではなく、リーちゃんの能力が全力で使えるからと納得して貰う。

 実際、茜ちゃんもお泊まりの約束があるのもあって受け入れてくれた。 


 リーちゃんに問題集の生成と指導をお願いしたことで、私は自分お勉強に集中することが出来た。

 正直、テンションが上がっていたと思う。

 何しろ本来の私、京一が生まれる前の時代の試験だ。

 どうしても好奇心がうずく。

 なので、自分の勉強に集中出来るのが、自分で想定していた以上に楽しかった。


 問題を解き進めていると、千夏ちゃんが「凛花ちゃんって、勉強が好きなのねぇ」と言って私の手元をのぞき込んできた。

「うーん。好きかって言われると、そうでもないよ」

 私自身の認識としては、勉強自体を苦手とは思っていないし、知識が増えたり問題が解けるのは嬉しい。

 だが、勉強が好きかと言われれば、迷い無く好きだと言い切れるほどでも無かった。

「いーーや、リンリンは勉強中毒なところがある」

 そう言ってユミリンが横から口を挟んでくる。

「ちゅ、中毒って」

 私が苦笑しながらそう返すと、ユミリンは「勉強してるのにそんなに楽しそうな顔をするヤツはリンリン以外に見たことない」と断言した。

「オカルト話をしているときの、オカルリとかわらない」

 続く言葉に、私は思わずオカルリちゃんを見る。

 視線の先、目が合ったオカルリちゃんは「私はかなりのオカルト好きですからね、似てるという事であれば、凛花様も同様に勉強を好きだと言って良いのでは無いかと思います」と言って微笑んだ。

 更に「凛花様と似ている部分があるなんて、光栄です」と言い加える。

 こんなに喜んで貰うと、否定するのは違うと思うし、自覚が薄いだけで、周りにはそう見えてるということにして、自分の考えに折り合いを付けた。


 根を詰めすぎても効果がでないので、休憩の回数はそれなりに多くなった。

 それでも、お姉ちゃんとまどか先輩以外は初めての試験なので、一人で向かい合うよりはだいぶ良かったと思う。

 この時代では未だ塾に通う中学生は多くはないので、勉強の仕方がわからないという子も少なくなかった。

 自己満足と言えばそれまでだけど、それでも、多少は皆の助けに離れたと思う。

 何にせよ、未だ二日目なので、引き続き勉強を続けて、皆で良い成果を出せれば良いなと思った。


「今日は、皆頑張ったから、ご馳走よ!」

 お母さんの言葉に、千夏ちゃんが「いつも、ご馳走ですよ」と笑いながら言った。

 その言葉に「あら、そう思ってくれたの!? ありがとうね、ちーちゃん」といい手頭を撫でる。

 千夏ちゃんはくすぐったそうに嬉しそうに「えへへ」と可愛らしく笑った。

 母性の愛情に飢えている千夏ちゃんにはとても響いているんだろうし、そこをわかって上での振る舞いなのだろうなと、お母さんの凄さを改めて感じる。

 そうして和やかな雰囲気で夕食は始まり、ワイワイと楽しい時を過ごすことが出来た。

 友達が帰った後はなんだか寂しいことがあるけど、うちにはお姉ちゃんもお母さんも、ユミリンに千夏ちゃんも居てくれるので、賑やかさは続く。

 ただの異邦人なのにと思う反面、まだまだここでの生活が続くのだから、それならば、楽しい方が良いなと今が続くことをこっそり願った。

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