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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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教師役として

 少し微妙だった空気は、全員が自宅に連絡を付けて、勉強部屋になっている広間に再集合した時には、夕食会を楽しみにする茜ちゃんのテンションの高さですっかり消し飛ばされてしまった。

 本当に楽しみなようで茜ちゃんは、鉛筆を走らせては思い出し笑いをするという高程度を幾度も繰り返している。

 嬉しさがもの凄くあふれ出てるのもあって、私は茜ちゃんを変と思うよりも、微笑ましいと思っていた。

 それは他の皆も同じみたいで、つい釣られて、差はあれども口元に笑みが浮かんでいる。

 取り組む手も、どこか軽やかに感じられた。


 休憩前は社会科だったので、夕飯までは数を熟すしかない国語の漢字の書き取り、数学の計算問題を繰り返し取り込むことにした。

 学校の教材である計算ドリルだけじゃ無く、委員長は自分の持っている問題集を提供してくれたし、私も問題をリーちゃんに考案して貰って、それを紙に書き出すことで、練習問題として皆で挑んでいる。

 もう、いろいろ説明してしまったので、お姉ちゃんやまどか先輩の為にも問題を書き出した。

 リーちゃんが考えてくれたのを書き出しただけで、私は説明は出来ないとしている。

 どこまで信じてくれてるかはわからないけど、お姉ちゃんも、まどか先輩も、練習問題が手に入るならと敢えてツッコまないでくれた。


「あー、これ、答え合わせとか、解説とかはどうしたらいいかな?」

 問題を解き終えたのか、まどか先輩が、そう言いながら私を見た。

 一応、私は問題が解け無い体で出題させて貰っているので、今更私が答えるというのはおかしい。

 実際のところは、皆私が解けるだろうと思っている節がある上に、そこは実際正しいので、開き直って説明して解いてしまうかとも考えたのだけど、ここは一度、リーちゃんに協力を仰ぐことにした。

「ここにあってもおかしくない……」

 私がそう言いながら、リーちゃんの依り代を具現化させる。

 もちろんキツネ姿だけど、普段の毛並みなどを本物に近づけたモノではなく、全体をディフォルめかした2.5頭身くらいのぷにぷにしたもこもこのぬいぐるみの形だ。

 太ももの腕に乗せると丁度私の顎に届くくらいの抱きしめやすいサイズのぬいぐるみの出現に、茜ちゃんが真っ先に反応を示す。

「なぁにぃそぉれぇ~~凛花ちゃん、す、すごぉ、すごぅく、か、かわいい~~~」

 目をキラキラさせてすぐ横まで駆け寄って来た茜ちゃんに続いて、いつの間にか反対の真横に来ていた加代ちゃんが、ワキワキと手を蠢かせながら「さ、触っても良い、リンちゃん?」と尋ねて来た。

 茜ちゃんはともかく、加代ちゃんの訥言の出現に、心臓が爆発するかという衝撃を受けたけど、私は未だリーちゃんに宿って貰ってないので「い、いいよ、はい」と言って加代ちゃんに手渡す。

 加代ちゃんは自らの手の中に収めたリーちゃん用の依り代のぬいぐるみバージョンを抱きしめてその感触を確かめ、その後で全体をなで回しながら手触りを確認していった。

 縫い目なども確認して、上に持ち上げたり前に差し出して自分から距離を遠ざけたり、様々な角度に動かして観察していく。

 その真剣な表情に、誰も加代ちゃんに言葉を掛けられず、ただただ見守るだけになった。


 ぬいぐるみの確認に、満足したのか、加代ちゃんは目を閉じて大きく熱の籠もった溜め息を吐き出した。

 ツヤツヤした表情が満足したのだと物語っている。

 そんな加代ちゃんに、茜ちゃんが「あ、あのぉ、わ、私もぉ、触って良い?」と尋ねた。

 自分に掛けられた言葉にハッとした加代ちゃんは、私に振り返って「良いかな、リンちゃん?」と聞いてくる。

 加代ちゃんの問い掛けに贈れてこちらに茜ちゃんの視線が向いたので、私は「いいよ」と頷いた。

 直後、加代ちゃんから茜ちゃんにぬいぐるみのリーちゃんが譲渡される。

 そして、力一杯抱きしめた茜ちゃんは、力を込めて、緩め手を繰り返して感触を堪能し始めた。

 ぬいぐるみが好きなんだなぁなんて思っていると、千夏ちゃんが「凛花ちゃん」ともの凄く力の籠もった目で私を見ながら声を掛けてきた。

 更に、私に向く目は、史ちゃんに委員長、オカルリちゃんにお姉ちゃん、まどか先輩と、ほぼ全員に増えている。

 明らかに自分たちも触りたいと目が訴えていたので「えっと、リーちゃんには答えを説明して貰わなきゃだから、手短にね」と応えた。

 私の返しに頷いた皆は、黙したまま、まどか先輩が配りだした裏返しのカードを前に静かにジャンケンを始める。

 勝った人から、順番にカードを引いていき、そこに刻まれた数字順に交代で触っていくようだ。

 流石に、ぬいぐるみで時間を掛けるのもどうだろうと思った私は、いっその事人数分出してしまおうと考えて、ぬいぐるみのリーちゃんを量産する。

 わざわざ順番決めをした後で、こういうことをするのはどうかとは思ったんだけど、文句を言う人、不満に思う人は居なさそうだったので、選択はそれほど間違ってなかったと結論づけることにした。

 一応、順番待ちに参加していなかったユミリンの分は不要かなとも思ったんだけど、仲間はずれはどうかと思い具現化する。

 こっそりとありがとうと言われたので、ユミリンも嫌では無かったようで私はホッとした。

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