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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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心証

「娘がお世話になっております」

 お母さんはそう返事を返すと、早速、ここまでの流れを説明し始めた。

 保険医の先生は一通り話を聞き終えたところで「わざわざご報告ありがとうございました」と頭を下げる。

 お母さんも「いえ、昨日もこの子がお世話になっていますし、こちらの方こそありがとうございます」と私の頭を撫でながら頭を下げた。

 そこで話が一段落したのもあって、保険医の先生が私に視線を向ける。

「林田さん、今日は調子はどうですか?」

 柔らかな口調で問われた私は「熱っぽさ、だるさとか、不調を感じるものはありません……多分、元気です」と返すと、笑顔で頷いてくれた。

「それじゃあ、三時間目の授業から参加できそうですね」

「はい」

 少し食い気味に返事してしまったことで、どうやら自分が思ったよりも早く授業に参加したいと思っていたことに気が付く。

 正確には、クラスに合流したい……かも知れないけど……と、そんな事を考えたところで、私はお姉ちゃんのことを思いだした。

 同じクラスのユミリンは直接顔を合わせるのでそれで良いと思うけど、お姉ちゃんは当然ながらクラスが違うので、私が無事登校してきたことを伝えておきたい。

 私はその事を素直に相談してみることにした。


「じゃあ、まずは上履きに履き替えてきた方が良いですね。休み時間にお姉さんの教室に行ってから、教室に戻るのが良いと思います」

「わかりました」

 保険医の先生の判断に同意して頷いてから、私はお母さんに視線を向けた。

 お母さんは「じゃあ、お母さんはこのまま帰るので、一緒に玄関まで行きましょうか」と言ってくれる。

「うん」

 そう返事をするとお母さんは頭を撫でてくれた。

 お母さんに頭を撫でられていると、保険医の先生がニコニコと笑いながら「荷物はここに置いて置いて良いですよ……というより、上履きに履き替えたら、一度、保健室に戻ってきてください」と、これからの支持をくれる。

「わかりました」

 そう答えて、私はお母さんと一緒に来客用の玄関に向かった。


「凛花、何かおかしいなと思ったら我慢せずに保健室に行くのよ?」

「う、うん」

 思わず返事に突っかかってしまったのは、お母さんの私を見る目に疑うというか、反応を窺うような色が混じっていたからだ。

 前の、この世界の私がどうだったのかはその目線だけでなんとなく予想が付く。

 何かあっても我慢をしてしまう傾向があったのだろう……多少、本当に多少だけど身に覚えがあるので、仕方が無いかも知れないなと思った。

 そんな事を考えていると、お母さんは「それじゃあ、お母さんは帰るわね」と言って軽く手を振る。

「うん、送ってくれてありがとう!」

 私も手を振り返して、お母さんが踵を返すのを確認してから自分の昇降口へ向かった。


 流石に昨日使ったばかりなので、自分の下駄箱を間違えることはなかった。

 下駄箱から取り出した上履きをすのこの上に置いて、ローファーからは着替える。

 代わりに下駄箱にローファーをしまってから、保健室へと戻った。


 保健室の扉を開きつつ「失礼します」と声を掛けると、保険医の先生が「あら、林田さんお帰りなさい」と出迎えてくれた。

「お母様は?」

「あ、もう帰りました」

「優しそうでしっかりした、素敵なお母様だったわね」

 元の世界では、トラブルを避けるために、感想を口にしないのが当たり前だっただけに、保険医の先生がお母さんの印象を話してくれるとは思わなかったので、ちょっと驚く。

 でも、素直に嬉しいなと思った。

「ありがとうございます」

 私がそう言うと「ほんと、素敵なお母様で羨ましいわぁ」と言ってくれて、よりくすぐったく思ってしまう。

 上手くリアクションを選べずにいると、保険医の先生はクスクスと笑いながら「身近にいいお手本がいて、ほんと羨ましいわ」と改めて羨ましいと言われてしまって、嬉しくもくすぐったく思ってしまった。


「荷物は置いていっても良いわよ」

 保険医の先生にそう言われた私は少し考えてから「それじゃあ、お願いします」と置かせて貰うことにした。

 お姉ちゃんは今、三年生なので教室は北の棟にある。

 どのみち南棟の自分の教室に戻るときには、保健室のある中央棟を通るので、階段の上り下りがあっても、教科書やノートの詰まった鞄を持っていくよりは良いかなと判断した。

 そんなわけで引き続き荷物を預かって貰うことにした私は、二時間目の終了を告げるチャイムが鳴ったタイミングで保健室を後にする。

 無事登校したことをお姉ちゃんに伝えるたら、一応職員室にも寄って綾川先生にも報告しようかなと考えながら階段を上がっていくと、休み時間を迎えたことで、先ほどまでとは打って変わった活気がそこかしこに溢れ始めていた。

 緋馬織での経験を活かして、燥ぐ先輩方の突発的な動きを回避しつつ、間を擦り抜けてお姉ちゃんの教室に辿り着いた私は、早速入口近くの席にいた女子生徒に声を掛けてみる。

「あの、私、林田凛花って言うんですけど、お姉ちゃん……良枝おね……」

 そこまで言った瞬間に「凛花ちゃんじゃん覚えてるかい!?」と言いながら、声を掛けた女子生徒に抱き付かれた。

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