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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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紐解かれる

「だとすると……?」

 何を言われるんだろうという不安を抱きながら、それでも言葉の先が気になって、私はお姉ちゃんに続きを促すように言葉を返した。

「凛花に経験があるって、思うじゃ無い?」

 上目遣いで言われた私は言葉に窮してしまう。

 何しろお姉ちゃんの言っていることは完璧に的を射ているのだ。

 上手い返しも思い付かず、リーちゃんも助け船を出してくれなかったせいで、私とお姉ちゃんは見つめ合ったまま、無駄に時間だけが過ぎていく。

 そんな見つめ合いを止めたのは、お姉ちゃんだった。

「もしかして、前世の記憶とかある?」

 もの凄く真面目な顔で聞かれた私は「前世の記憶は……ないよ」と返す。

 その上で「前世の記憶は無いけど、他の世界で生きてきた……大人になった記憶みたいなものは薄らとある」と言い加えた。

 客観的に見て、私の状況が異常なのは、否定の余地もない。

 中学一年生になったばかりで、定期試験は初めて、塾通いもしていないのに、私が独自の勉強法を会得しているのは、常識で考えればあり得ないことだ。

 だから、お姉ちゃんも、そして多分皆も私に対して疑問を抱いている。

 委員長やまどか先輩は敢えて踏み込まなかったけど、この世界では姉妹で、私に近いお姉ちゃんは、敢えて踏み込んだんじゃないかと思った。

 気になるけど聞かないなんて言うのは、好奇心に蓋をする行為で、我慢をしていることに変わりない。

 我慢は続けるほど、溜まっていっていつか爆発してしまうものだ。

 なら、自分がと思ったんだと思う。

 とはいえ、全てをそのまま伝えるのは良くないので、ウソでは無いけど、詳細までは踏み入らない範囲での答えが『他の世界で生きた記憶がある』だった。


「なるほど、なんだかいろいろしっくりきたわ」

 お姉ちゃんはそう言ってあっさりと納得してしまった。

 その事に、思わず私は「え!?」と声を漏らしてしまう。

 すると、お姉ちゃんは軽く笑って「なんで、凛花が驚いているの?」と聞いてきた。

「正直、そんなにあっさり納得して貰えるとは思って無くて」

 何も考えず、私は思ったままを口にする。

 お姉ちゃんは「普通の中学生よりもいろいろ知っているし、小学生時代から凛花が凛花なりに勉強してたのは知っているけど、それにしては洗練されていたじゃ無い?」とスラスラと語り出した。

「その時点で、かなりおかしいけど、凛花はリーちゃんを出現させたり、病院から家を覗き見たり、神社では福を作り替えちゃったんでしょ?」

「う、うん」

 否定することなど出来ず、頷いた私に、お姉ちゃんは「で、私はお姉ちゃん、よね?」と急に話の方向性が変わる。

「え?」

 急に話が飛躍したことで、私は最早まともに頭を回転させられず「うん、そう……だけど……」と返すことしか出来なかった。

「凛花が物心つく前から、凛華と一緒に暮らしてる分けよね?」

「え? たぶん?」

 物心という部分には自身がないせいで、少しぼやけた回答になってしまったけど、お姉ちゃんはそこには興味が無かったようで、話を展開させていく。

「で、私は凛花が勉強方法を編み出すところもそうなんだけど、何よりオカルトの勉強をしていたりとか、不思議な出来事に出会ったところを見てないのよ、()()()()()()()()()()()()

 お姉ちゃんの言葉に、私の心臓がビックリして大きく跳ねた。

 わざと強調されたことで、お姉ちゃんが、過去の私と今の私が違うことに気付いている。

 その事実に、私は身体を膠着させることしか出来無かった。

 頭の中で、サッちゃんことこの世界でのお母さんにしたように、お姉ちゃんにも説明をする時が来たんだろうかという考えがよぎる。

 直後、私の返答よりも早く、オカルリちゃんが「つまり、その時期に記憶に目覚めたということですかね」と口にした。

 自然と皆の視線が自分に向かう中、オカルリちゃんは「凛花様は修行をしたわけでも無く、またオカルト寄りのエピソードも無かったようので、その記憶の目覚めを切っ掛けに、様々なことができるようになったのでは無いですか?」と私に向かって尋ねてくる。

「まあ、そう……かな」

 オカルリちゃんの指摘に頷いてもウソになら無いだろうかと思いながら答えたせいで、少し間延びした返事になってしまった。

 その事を指摘されるかと思ったのだけど、オカルリちゃんは「特別な力に目覚めるのって、憧れますけど、実際、目覚めてしまったら、それはそれで不安になるんじゃ無いですか?」といって表情を曇らせる。

「い、いや、そんなことないよ? リーちゃんも居てくれるし!」

 慌てて両手を振りながらそう訴えると、オカルリちゃんはパッと表情を明るくしてから「そうですよねぇ、良かったです」と大きく長い溜め息を吐き出してから安堵したのがわかる柔らかな笑みを浮かべた。

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