試験勉強法
まどか先輩の圧に、そのまま流すことが出来ずに、私は言葉に詰まりながらも「や、やり方……勉強の仕方なら、伝えられるかも知れませんけど……」と、忙しなく視線を上下させながら様子を覗いつつ伝えた。
すると、まどか先輩は「ふ~~~ん」と言いながら笑みを深めてから「じゃあ、やり方だけ教わろうかな」といつもの凜々しい感じじゃ無く、どこか艶っぽい言い回しで言ってくる。
思わず頬が真っ赤になりそうな色気を感じる態度に圧倒された私は「わ、わかりました」と恥ずかしいくらい裏返った声で答えた。
まどか先輩としては、それで納得してくれたのか「じゃあ、お願いね、凛花」と名前だけ耳元で残して距離を取る。
そのまま、自分の勉強道具に戻ってしまったまどか先輩の姿を、瞬きを繰り返しながら見詰めることしか出来無かった。
が、その時間もそれほど長くは続かない。
「ずるいわ、凛花、お姉ちゃんも教わりたいわ!」
お姉ちゃんがそう言って迫ってくると、オカルリちゃんが「私も、はーーい、私もお願いします~~」と名乗り出てきた。
こうなると流れが出来てしまう。
千夏ちゃんも「私わからないところがあるの、凛花ちゃん!」と言い、史ちゃんも「お手間をおかけするのは心苦しいのですが、はじめだけでも教えていただければ、後は自分でしますので」と申し訳なさそうに言った。
更に加代ちゃんも遠慮がちに「私も良いかな」と上目遣いで聞いてくる。
何か言わねば状況は収まらないと察した私は「と、とりあえず、私なりのやり方を伝えるから、わからないことは聞いて貰う形で良いかな?」と伝えて、一端落ち着いて貰った。
正直なところ、未だ最初の定期試験も終わってないのに、もの凄く私の評価が高いことには大きな違和感があった。
実際、冗談半分とは言え、年上であるお姉ちゃん達が私に勉強の仕方を聞くなんて、間違いなく普通では無いと思う。
可能性として浮かんだのは『種』の言う私が世界の中心という言葉だ。
てっきり観測者という意味合いが強いのかと思ったけど、もしかしたら、この世界が、私に都合が良いように変わるという意味なのかもしれない。
だとすると、異様に持ち上げられるのもその一環ではないかと思ったのだけど……リーちゃんが『それはどうかのぉ』と言い出した。
『でも、私に都合が良いように、皆が動いてくれているように思えるけど』
私の考えに隊絵師、リーちゃんは『確かに、そう見えるには見えるがのぉ』と含みがあるとしか覆えない返しをしてきた。
『率直に言って貰っても良いかな?』
試験勉強もあるので、考えるのが面倒くさくなってしまった私はそう切り返す。
『もしも、主様の思うままに、世界が変わるのであればじゃ』
リーちゃんはそこで言葉を止めるので、続きが気になって、私は『う、うん』と相槌を打って先を催促した。
『必要以上に周りにもてはやされるのが苦手な主様がもてはやされるのはおかしくないかの?』
私はその意見を聞いて『あー、なるほど』とスゴく納得がいったのだけど、リーちゃんはそこで決着にはしない。
『まあ』
僅か二音で不穏を感じさせたリーちゃんは、そのまま『主様が、心のそこでは喝采を求めていたり、持ち上げられたい願望を抱いているなら、話は変わるがの』と言い出した。
「なっ、ばっ」
私の口から自分でも何が言いたいのか認識しないまま、驚きで声が飛び出る。
結果、私は皆からの注目の視線を集めることになってしまった。
リーちゃんとは頭の中で会話していたので、皆の目からは突然私が騒ぎ出したように映ったと思う。
なので、私はすぐに「あ、頭の中で、リーちゃんと話をしてて」と説明した。
それで納得してくれたのか、皆それ以上何か言うことは無く落着する。
なので、私は必要ないかもとは思ったけど「騒がせてごめんね」と手を合わせてお詫びした。
皆が私の勉強法に興味があるらしいので、それぞれで別れて試験勉強を始める前に、私なりのノートの取り方や授業で気をつけていることなんかを伝えることにした。
私のノートは、見開きの左ページの2/3の位置に縦線を引いていて、線の左側、広い方に板書を映している。
右側の1/3側には先生が授業中に繰り返し説明した単語や黒板には欠かれなかった説明のメモを取るという形で使っていた。
先生が板書で、色替えや吹き出し、下線などで協調した部分はそのまま同じ色、形で書き写している。
一方、私が気になった部分のメモである1/3側はあくまでメモなので、鉛筆のまま記載していた。
そして、見開きの右側は空けてあって、ここに試験勉強に復習として板書と教科書、その他資料を交え、蛍光ペンを駆使して自分なりのまとめを仕上げていく。
と、説明をしたのだけど、私の話を聞いた上で、お姉ちゃんがもの凄く真面目な顔で「凛花って、お姉ちゃんより年上だったっけ?」と想像もしなかった質問をされてしまった。
私も意味がわからず「え?」と反応してしまう。
するとお姉ちゃんは真顔のままで「だって、試験対策まで考えたノートの使い方だし……塾にも行ってないわよね、凛花……だとすると……」とこちらを覗う様な目を向けて来た。




