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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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終了報告と下校

「じゃあ、行ってきます」

 私がそう言うと、皆、それぞれ返事をしてくれた。

「昇降口で待っているわ」

「荷物はお任せください!」

 千夏ちゃんと、私の鞄を手にした史ちゃんがそう言った後で、まどか先輩が「私と良枝は校門で待ってるよ」と言う。

 その横で「やっぱり、私も一緒に行った方が良いんじゃ二かしら?」と言いだしたお姉ちゃんに、まどか先輩が「流石に過保護過ぎる」と辟易した顔でツッコミを入れた。

 茜ちゃんは私に笑顔を見せて「みーちゃんをよろしくね、凛花ちゃん」と言う。

 正直、委員長に私をよろしくというセリフを何度か聞いて板野も会って、もの凄く嬉しくなって「任せて、茜ちゃん!」と強めに答えてしまった。

 すると、横から委員長が「じゃあ、凛花ちゃん、お世話になるわね~~」と言って私の肩に両手を乗せてくる。

 ただ、準備していなかったのもあって、後ろに倒れそうになってしまった。

 私がバランスを崩したことに気付いた委員長はすぐに、私の腰に手を当てて支えながら「あぁ、ご、ゴメン、大丈夫?」と困惑した表情を見せる。

「だ、大丈夫、あ、ありがとう」

 私がそう返す間に、腰、肩と手を添えて直立鶴までサポートしてから、委員長は「本当にごめんね……」と言って何かを飲み込むような表情を浮かべた。

 すると、ユミリンが「委員長、リンリンは想像以上にひ弱だから、気をつけないとだ」ともの凄く真面目な顔で言い出す。

「凛花様は、柔軟性とか、反射神経が優れている一方で、絶望的に力は無いですからねー」

 腕組みをして何度も頷くオカルリちゃんの話を聞いた加代ちゃんが「確かに、力が強いリンちゃんはイメージできないかもなぁ」と追認した。

「え、そんなことは……」

 私はそこまで言ったところで、頭に思い浮かべた力を出すための術が能力の使用……つまり端の身体の力じゃ無いことに気付いて、言葉に詰まってしまう。

 そんな私に、まどか先輩が「姫、護りたいと思わせるのも、大事な素養です」と言ってくれたのだけど、私が力が無いことを否定しているわけでは無く、それも魅力と言わんばかりのフォローなので、なんだか素直に受け入れられなかった。


 委員長と私は、一端皆と別れて、教室の鍵を返すのと活動終了の報告の為に、社会科準備室に向かった。

 私は皆の過保護が発動した結果、鞄も体操服入れの袋も、荷物を全部持っていってくれているので手ぶらなのに対して、逆に委員長は自分の荷物は全部持っているので、そこが気になって仕方が無い。

 なのに、唯一持ち運んでいる鍵ですら、委員長からは心配の眼差しと共に「鍵、預かろうか?」と立ち止まって、声を掛けてきた。

「流石に、鍵くらいは持てるよ」

 苦笑しつつ、そう返した私に、委員長は「了解よ」と言うと、再びゆっくりとした歩調で歩き出す。

 少し遅れて反応してもついて行けるほどのスピードだったので、委員長の少し後に付き従うように付いていった。


「わざわざ、ご苦労様」

 中瀬古先生から労いの言葉を受けた私は「いえ、こちらこそ、心配をおかけしてごめんなさい」と返した。

 すると、中瀬古先生は「生徒を心配するのは当たり前の事だし、これでも君たちの同好会の副顧問だからね」と言って笑みを見せる。

 更に顔を見せた小野先生も「我々も君たちのお陰で、地域の伝統を取り戻せる。お互い様だと思って、気にせずに頼って欲しい……むしろ任せきりの方が心苦しいからね」と優しい眼差しで言ってくれた。

 委員長と揃って感謝の言葉を伝えて、無理せず頼ったり相談することを誓ってから、皆を待たせていることを伝えて、この場を後にする。

 鍵の返却と終了報告を終え、任務を達成した私は院長と共に、自分の下駄箱がある一年生用の昇降口へ向かった。


「あ、凛花様、お疲れ様です~」

 まあ先に私たちを見つけて声を掛けてくれた靴を履き替えず上履きのまま待ち受けてくれていたオカルリちゃんに続いて、茜ちゃんが「ミーちゃんもぉ、お疲れ様ぁー」と手を振ってきた。

 すると、史ちゃん、千夏ちゃん、加代ちゃん、ユミリンと、既にローファに履き替えていた皆も下駄箱の影から顔を見せる。

 床に置かれた多分私のであろうローファーを両手で指し示しながら、オカルリちゃんは「ささ、凛花様、どうぞ」と促してきた。

「あ、ありがとう」

 ここは素直に受け入れることにした私は、示されたローファーに歩み寄って、上履きを脱いで履き替える。

 しゃがみ込んで履いていた上履きを持ち上げようとしたところで「そこは、私に任せて、リンちゃん!」と言って加代ちゃんが素早くしゃがみ込んで、揃えて持ち上げる。

 更に、オカルリちゃんと連携して、私の下駄箱に上履きをしまってしまい、私の出番は一瞬も存在していなかった。

「スゴイ連携ね」

 委員長がクスクスと笑いながら、トンと少し高い場所から手を離してローファーを床に着地させる。

 片足ずつ手の届く位置に足を持ち上げて、上履きを脱いでからそのままローファーを履いた。

 両足ともあっという間に履き替えた委員長は、長身を活かして自分の上履きを下駄箱に収める。

 その流れるような動きに目を奪われている間に、オカルリちゃんも手早く履き替えて、最終的に茜ちゃんだけが上履きのままになってしまった。

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