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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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成果

 改めて練習を再開したのだけど、私は監督という役目を押し付けられ、黒板の前に座って皆の練習風景を監督するという体の良い見学にされてしまった。

 頭がキャパオーバーしたせいとはいえ、倒れてしまったのが良くなかったので、甘んじて受け入れている。

 そんなわけで、制服を脱ぐ必要はあったのかスゴく疑問を感じるけど、切っ掛けが自分だけにとりあえず飲み込むことにした。


 足の動き、腕の動きと気になるところがあってわかっていたチーム練習も、私が戻った時には全員が同じ振り付けで舞衣を待っていて、あっという間に習得させてしまったまどか先輩とお姉ちゃんの指導力に舌を巻くことになった。

 出来る方だったユミリン、千夏ちゃん、委員長も、らしさが加わった上で、動きに迷いがなくなっている。

 もう完成と言っても良いんじゃ無いかと思うできあがりっぷりに、正直、リーちゃんというサポートを受けて成り立っている私が、なんだかもの凄く情けなくなってきた。


「どうですか、監督?」

 お姉ちゃんが悪戯っぽい笑みを見せながら尋ねて来た。

 私は軽く溜め息を吐き出してから「皆あっという間に上手くなってて、リーちゃんの手助けで、どうにか形になってる私が情けないかなー」と素直な気持ちを伝える。

 すると、まどか先輩が「姫、未だスタート地点に立っても居ないからね?」と苦笑を見せた。

「え?」

「え、じゃないぞ、リンリン。私らが覚えて舞えるのはまだまだ冒頭部分だけだから」

 そう言ってくれたユミリンに続いて、千夏ちゃんが「残りの舞いも未だ覚えてないし、本番はここからアレンジもするし、フォーメーションも決めるんだから、全然まだまだだよ?」と心配そうに言う。

 なんだか、倒れて保健室に運ばれたのもあって、心配してくれているのだろうけど、チラチラと私の頭に向けられる千夏ちゃんの視線が気になって仕方なかった。

 心配してくれているのがわかるだけに、止めても言い難くて、どうしようかと思っていると委員長が「でも、あれよね。凛花ちゃんに認めて貰えたってコトよね?」と尋ねてくる。

「もちろん、むしろ私が足を引っ張らないかと思ったくらいで」

 頷く私に、史ちゃんが「凛花様は控えめなので、そう言う考えになるのかも知れませんが、私たちは凛花様の舞いを見てお手本にしてるんですよ……少なくとも私よりも遙かに完成してると思います」と言った。

 加代ちゃんも「リンちゃんが戻ってくるまでずっと練習して、ようやくたどり着いたんだから、それだけリンちゃんはスゴいんだよ」と続く。

 それを聞いて思ったのは、撮り方によっては私の言葉は、皆の努力を否定しているように聞こえるんじゃ無いかと言うことだった。

 もちろん、そんな意図は無いけど、受け止める人によってニュアンスは変わって当然なのである。

 そう考えたタイミングで、茜ちゃんが「はい考えすぎぃ~」と言って脇腹を突いてきた。

 唐突な不意打ちに、身体が勝手に反応して、椅子から立ち上がると同時に「ひゃっ」と声が飛び出る。

 私が三を庇うように身体の前で腕を交差して隠したタイミングで、委員長が茜ちゃんに「こら、あーちゃん、不意打ちは駄目よ!」と軽くチョップを放った。

 茜ちゃんは頭を押さえながら「だってぇ~凛花ちゃん、確実にぃ、余計なこと考えてたもん~」と唇を尖らせる。

「そうだとしても、凛花ちゃんは保健室で様子を見たばっかり何だから、悪ふざけでやって良いことじゃないでしょ?」

 困り顔で言う委員長の言葉に、ハッとした表情を見せた茜ちゃんは、私に向き直るなり「確かにぃ、不意打ちして良い状況じゃなかったぁ~、凛花ちゃん、ゴメンなさい~」と言って頭を下げた。

「そ、そんな謝らなくても大丈夫だよ」

 脇を突かれて反応してしまっただけで、身体に異常が出ているわけではないのでそう伝えたのだけど、委員長に「駄目よ、凛花ちゃん、甘やかしたら」と言われてしまう。

 その後は「でも」という私と、委員長の「駄目」の応酬になって、変な時間が過ぎることになった。


「いろいろあったけど、締めは全員で合わせて見ましょう」

 そう言って皆を見渡したお姉ちゃんに、みんなで「「「はいっ」」」と声を揃えて返事をした。

 いつの間にか、仕切りは委員長に加えて、お姉ちゃんとまどか先輩が勤めることになっている。

 さすがというか、私はそこを担ってくれるのは正直助かるのでありがたい以外の言葉はなかった。

 お姉ちゃんは軽く見渡してから、つい先ほど合流してくれた中瀬古先生に視線を向ける。

 中瀬古先生は、私が保健室に運ばれたという話を聞いて、様子を見に来てくれていた。

「それじゃあ、スイッチお願いして良いですか?」

 お姉ちゃんの問い掛けに「もちろん」と中瀬古先生は頷いてラジカセの再生ボタンの指を伸ばす。

 未だリモコン操作できる機材が無い時代なので、ラジカセのスイッチを押す人が欠かせないのだ。

 中瀬古先生が引き受けてくれるまでは、監督という名の見学者だった私が押していたのだけど、どうしても、作業を一つ挟むために、皆で舞ってみるとなると、地味に困るポイントだったので、ありがたい。

 皆の列に加わったところで、中瀬古先生が「それじゃあ、曲を流すよ」と言ってスイッチを押した。

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