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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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ベッドにて

 とりあえず、養護教諭の水上先生の指示もあって、私はベッドに横になっていた。

 ちょっと身体を起こそうとするだけで「もう少し休んでなさい」という声が飛んでくる。

 しっかりとチェックされているようだ。

 仕方が無いので、大人しく目を閉じて時間が過ぎるのを待とうと思ったのだけど、太ももに触れるシーツの少し冷ややかでつるっとした感触が思いの外が気になって仕方が無い。

 そこで自分が体操服のままだったことに気付いた。

 普段、夜に家で寝る時でさえ、パジャマの図母音を履いているし、この前寝かされた時は制服のスカートを履いていたので、太ももが直接シーツやら寝具やらに直接触れることはなかったのだけど、衣類とは違う感触はもの凄く気になって仕方が無い。

 せめてスカートを履かせて貰おうと身体を起こそうとすると、水上先生の「寝てなさい」って言葉が飛んできた。

 ならば、事情を言えば良いのだけど、太ももに触れる感触が気になるからと説明するのに、もの凄い抵抗があって何故だか言い出せない。

 頭の中では、この世界で体操服で寝れば、当然太ももにシーツが触れるのは当たり前だし、病弱設定の私に体操服姿で、保健室のベッドで横になった経験が無いのはおかしいじゃないかとか、スゴく余計な考えがぐるぐるしていた。

 何に対しての言い訳なのか、と自分で自分にツッコミを入れながら、その一方で、神社の神楽舞台に立った日のように、巫女装束……せめて制服のスカートを具現しようという考えも浮かぶ。

 ただ、体操服のまま、ベッドに寝かされたのを水上先生は見ているし、私の制服は机の上に置かれている状況に加えて、私が起き上がらないように、こちらに注意を払っているのだ。

 その状況でスカートが出現したら、状況がより一層おかしな方向に流れていくのは間違いない。

 ならば、もう諦めてこの感触に慣れるしかないという結論にならざるを得なかった。

 気になるとは言っても、身体を動かさなければ、太ももとシーツが触れ合うことはないし、感触が気になるなんて事は起らない。

 ただじっと、身動きをせず大人しくしていれば、そう自分に言い聞かせ始めたところで、水上先生が「そろそろ起きても良いわよ」と声を掛けてきた。


「え?」

 思わず間の抜けた声を上げた私に、水上先生は保健室に掛けられている時計を指さしながら「一応、20分くらい様子を見たけど、異変は無さそうだしね」と言った。

 別に眠いわけでも疲れがあるわけでも無いので、私はゆっくりと上半身を起こす。

 すると、目の前まで歩み寄ってきた水上先生は丸椅子を引き寄せてそこに座って、私と目線の高さを合わせた。

「気持ち悪いとか、動悸が速くなってるとか、身体が熱っぽいとか異変はあるかしら?」

 水上先生の問い掛けに、私は首を軽めに左右に振りながら「特に異常は無いです」と答える。

「そう? じゃあ、ゆっくり立ち上がってみて」

 そう言いながら水上先生は椅子から腰を上げて、ベッドの下に私が履きやすいように上履きを並べてくれた。

 掛けられていたシーツにくるまれた毛布を避けて、脚を晒すとほんのわずかだけ、涼しい感触が肌を伝う。

 直接触れていた感力は冷たい印象だったシーツなのに、僅かとは言え避けた後に肌寒さを感じるのは少し不思議だった。


 ベッドの上でお尻を滑らせて縁まで移動して、脚を下に降ろした。

 足は上履きの真上に来ていて、目算はバッチリだったのに、上履きまでにはほんの少し隙間がある。

 両腕でベッドに後ろ手で手を付けて、そのままお尻を押し出すように力を込めて、少し、足の裏が上履きの上に着地した。

 上履きのゴムにつま先を引っかけて、片足ずつ持ち上げて、しっかりと履いてから床に降ろす。

 両足が揃って床に付いたところで、お尻を滑らせた時の要領で手でベッドを押して立ち上がった。

「どうかしら? ふらつきとかある?」

 私の様子を確認しながら尋ねて来たみじかみ先生に「大丈夫です」と答える。

 水上先生は「なら、戻っても良いわ」と優しく微笑んでくれた。

「はい」

 返事をした私に、水上先生は「でも、考えすぎて身動きがとれなくなってしまう前に、お姉さんでも、先輩でもお友達でも良いからちゃんと相談しなくては駄目よ?」と苦笑を見せる。

 まさしくその通りでしかないので、私は「はい、気をつけます」と返した。

「ところで、その格好で戻るつもり? 着替えるなら、ベッド回りのカーテンを閉めて着替えなさい」

 ベッド回りに吊るされた式利用の白いカーテンを指さしながら言う水上先生に向けて首を左右に振って「練習に参加するつもりなので、このまま戻ります」と答える。

 水上先生は「えっと、鞄に、制服……持てる?」と心配そうな顔で尋ねて来たので、今度は私が苦笑することになった。

「私のですから、大丈夫ですよ!」

 そもそも登校してる時背負ってる鞄だし、着ている制服なので流石に心配のしすぎだと思う。

 ただ水上先生は心配そうな目を向けたままなので、私は制服を腕に抱えてから、鞄を反対の手に持って大丈夫なことを示した。

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