ひとりで
着替えを終えた私たちは早速練習を始めることにした。
最初に皆で私の脚の動きを見ながら振り付けを確認するというので、、私を囲むように円を使って皆が座る。
既に借り出しているラジカセは、オカルリちゃんが操作を担当だ。
タイミング出しは委員長に一任している。
本番でも委員長がタイミング出しをするのか、一緒に舞うことになるので、他の氏子さんが担当するかは決まっていないけど、どちらにせよ、私は合図に合わせて動き出すことに集中挿せて貰う形になる予定だ。
気持ちを整えて、皆の前で一礼をしてから、自分の気持ちを言葉にした。
「それじゃあ、一通り踊ってみますけど、まだまだ完璧とは言えないので、おかしなところとかあったら、教えてください」
言い終えた私が頭を下げると「失敗なんて気にしない気にしない」と明るくまどか先輩が言ってくれる。
「リンリンは完璧を目指しすぎだから、適度に気を抜いたほうがいいぞ」
ユミリンもそう言って声を掛けてくれた。
史ちゃんは「凛華様がお手本を見せてくれるだけで勉強になります! 感謝しかありません!」と強い口調で言ってくれる。
「練習だから、失敗しても良い……でしょ、リンちゃん?」
柔らかく笑みを浮かべながらそう言ってくれた加代ちゃんに、私は「そうだね」と頷いた。
頭でわかっていることでも、改めて言って貰うと、気持ち脳でスゴくプレッシャーが軽減する。
軽く息を吐き出してから、オカルリちゃんに視線を向けた。
「じゃあ、オカルリちゃん」
私が声を掛けると「いつでも良いですよ!」と、オカルリちゃんは両手を頭の上で重ねて腕で丸を描く。
オカルリちゃんに頷いて、委員長に目線を向けると、委員長はスッと手を挙げて、指を開いた。
合わせて茜ちゃんが「五秒前ぇ~~」と声を上げる。
委員長の指が折られて、立てられた指が四本に減ると同時に、茜ちゃんも「四~~」とカウントを進めた。
委員長の立てた指の減少に合わせて、茜ちゃんのカウントも「三、二」と減っていく。
津に一本になったところで、茜ちゃんは両手で自分の口を押さえた。
想像していなかった可愛いリアクションに噴き出しそうになったものの、どうにか堪えて、委員長の指が全て折られる瞬間を迎える。
同時にカチッと大きめの音がして、オカルリちゃんによってラジカセが動き出したのがわかった。
既にタイミングをバッチリ似合わせていたようで、スイッチの音と同時に神楽舞いに使われる曲が流れ出した。
いつも頭の中でタイミングをバッチリと伝えてくれるリーちゃんが不在なので、出だしに気をつけながら、最初に踏み込む右足と、横に薙ぐ動きをする右手に意識を集中して、動き出しを待つ。
神楽の始まりを告げる笛の音を聞きながら頭の中で数を数え、ポンと響く包みの音に合わせて、右足を踏み込み、右腕をゆっくりとに弧を描くように動かし始めた。
最初の一歩を無事音楽に合わせて決められたお陰で、以降は自分でもわかるほどスムーズに舞うことに成功する。
既に一度成功していること、何度もリーちゃんとシミュレーションできたいたこと、いろんな要素が重なって、手の動き、足さばき、どれも今の自分の最高で動貸すことが出来た。
舞いが終わり、ややあって雅楽が余韻を残して消えていった。
やりきった思いで、動きを止めたいた状態から、息を吐き出しながら身体から力を抜く。
思わず「ふぅ~~」と息を漏らしたところで、皆からの拍手が巻き起こった。
「さすが、凛花ちゃん、完璧!!」
「事前の不安なんて不要でしたね!」
千夏ちゃんと史ちゃんが目を輝かせながら拍手してくれる。
「着物……巫女さんの格好じゃないのに、なんだか着ているように見えたよ!」
興奮気味に言う加代ちゃんの言葉に、委員長が「確かに、巫女装束姿が目に浮かんだわ」と腕組みをして大きく頷いた。
「リンリンの足を引っ張らないようにしない撮って思ったよ」
苦笑しながら言うユミリンに、まどか先輩が頷きながら「私たちも練習を頑張らないとだね」と相槌を打つ。
そこへオカルリちゃんが頭を抱えて「あ~~~」と声を上げだした。
「お、オカルリちゃん!?」
予想外の行動に驚いて声を掛けると、オカルリちゃんは床に両手をついて項垂れる。
「ど、どうしたの?」
オカルリちゃんは私の言葉に反応して、項垂れ姿勢のまま、もの凄く悔しそうな表情を浮かべた顔だけをこちらに向けた。
その上で「今日機材を持ち込めなかったのが悔しいのです。凛華様の可憐な舞いを映像記録に残せなかったのが悔しいです」と言い出す。
「……そ、そう?」
オカルリちゃんの語った内容に、それ以上の言葉をひねり出すことは出来無かった。
けど、史ちゃんや千夏ちゃん、委員長に茜ちゃん、加代ちゃんと、残念だと同意の声を上げ始める。
そんな中でお姉ちゃんが「凛華」と私の名前を呼んだ。
視線を向けた私に、お姉ちゃんは「思わず記録に残したくなるぐらい綺麗な舞いだったと思う。姉として私も鼻が高いわ」と言って笑みを見せてくれる。
更に「だから、皆惜しいと思ったのよ」と皆を見渡しながら言った。
そんなお姉ちゃんの目の動きに合わせて皆を見れば、皆から着たいの籠もった視線が返ってくる。
訴えるモノに察しが付いてしまった私は苦笑しつつ「自分でも動きの確認をしたいから、機材が揃ったら撮影してくれる?」とオカルリちゃんに尋ねた。




