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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第九章 不通? 疎通?
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着替え方

「改めて、見てみると、着替え方っていろいろありますね」

 急にそんな事を言い出したのはオカルリちゃんだった。

 視線を向けると、オカルリちゃんはパッと表情を明るくして「ほら、まどか先輩やユミさんは制服を脱いで下着姿になってから着てますし、委員長や千夏さんはセーラー服の上を脱いで先に体操着の上に着替えてますし、カヨチン、フミキチはスカートのままブルマを履いてますよ」と次々と指さしていく。

「茜さんはセーラー服を着たままで器用に体操服の上を着てますね! なかなか高度な技です!」

 そんな事を言いながら頷いているオカルリちゃんは既に体操服姿になっていた。

「あ、私の着替え方が気になりますか?」

 私が自分のことを見ているのに気付いたのか、オカルリちゃんはそう言って笑みを見せる。

「いや、き、気には……」

 正直、直前まではまったく気になっては居なかったけど、皆の着替え方を分類した上で、気になるかと問われた今は、少し気になっていた。

 とはいえ、堂々と気になるというのもなんだかはばかられる。

 一方、オカルリちゃんは私からの返答を最後まで聞かずに「私は気になりますよ!」と笑みを深めた。

「特に、部長先輩と凛華様、姉妹で同じ着替え方をするのかどうかが!」

 フンと鼻息荒く言うオカルリちゃんに「は、はっきり言われると少し恥ずかしいんだけど……」と告げる。

 すると、オカルリちゃんは「安心してください!」と言って胸を叩いた。

 どう安心しろというのかと思いながら瞬きをしたところで、オカルリちゃんが「言いふらしたりしませんから! ずっと胸の中に秘めておきます!」と言い出す。

「それ、安心できる要素ある?」

 思わず真面目にツッコんでしまったせいで、皆の視線を集めてしまった。

「こら、田中る、リンリンを揶揄ってるのか?」

 ユミリンが真っ先にそう言ってオカルリちゃんに声を掛ける。

 対してオカルリちゃんは「それは誤解ですよ。真剣に、姉妹で着替え方が一緒なのか違うのか気になったので、出来れば見学させて欲しいってお願いしていただけです」と返した。

 すると、ユミリンの視線が私に向いた。

「な、なに?」

 思わず上半身を隠すように腕を胸の前で交差してしまったが、ユミリンは「いや、確かにそう言われる時になるな」と言いながら、お姉ちゃんに視線を向ける。

 視線を向けられたお姉ちゃんは「確かに、家で体操服に着替えたりしないモノねー」とのんびりした口調で頷いた。

 その後で「まあ、私は、まどかと同じかしら」と言いながら躊躇いもなくスカーフを引き抜きセーラー服の上衣を脱ぐ。

 軽く畳んでセーラー服を机に置くと、躊躇無くスカートのファスナーを降ろして、ホックを外し、すぐにブルマを履くと、体操服の上着を着て、あっという間に着替えを終わらせてしまった。


「ま、私はこんな感じよ」

 サラリと言うお姉ちゃんに続いて、まどか先輩が「今回の舞台ではないけど、舞台では早着替えとかもあるし、素早く着替えるにはこれが一番早いんだよ」と言って笑って見せた。

 既にそんなまどか先輩も着替えてしまっている。

「ほら、凛花ちゃん、着替えてないのは凛花ちゃんだけよ」

 後ろから委員長にそう言われて、私だけが未だ制服のままだった。


 出遅れたせいで、私だけが着替えていない状態になってしまった。

 少し急ぎ気味に体操服入れから、着替えを取り出して机の上に並べるのだけど、皆の目がこちらに向いているので、もの凄くやりにくい。

「凛華様、お手伝いは要りますか?」

 私の手が止まり掛けていたからか、史ちゃんがそう声を掛けてくれた。

「え、いや、大丈夫だよ?」

 慌ててそう返すと、史ちゃんは旬として「そうですか」と肩を落とす。

「い、いや、史ちゃん。 普段も一人で着替えてるでしょう?」

 私がそう言うと、史ちゃんは「それはそうですけど、いつでもお手伝いしたいんです」とこれまた真面目な顔で言われてしまった。

 このままでは押し切られると思った私は「大丈夫だから、見てて」と言ってセーラー服に手を掛ける。

「なるほど、凛華様は、上着から着替えるのですね」

 オカルリちゃんの言葉に、私は反射的に「普段から見ているでしょう!」とツッコんだ。

「はっ! 私の視線に気付いていたんですね。お恥ずかしい」

 ほのかに頬を赤くしながらくねくねと動くオカルリちゃんの反応を見て私は慌てて目を閉じる。

 心の中で『動揺しない、動揺しない』と繰り返してから、オカルリちゃんを見ないようにスカーフを引き抜いた。

 そのまま胸当てのボタンを外して、襟の根元にあるホックを外して、左脇にあるファスナーを挙げる。

 お腹側が大きく広がるようになったところで、手早くセーラー服の上衣を脱いだ。

「凛花ちゃんはぁ~ランニングタイプの肌着なんだねぇ~」

 茜ちゃんの指摘通り、私はセーラー服の下には袖の無いシャツを着ている。

 セーラー服用の首がV字になっているシャツや半袖シャツも持っているけど、体操服の上衣が半袖丈なので、袖からはみ出てしまう可能性を考えて今日は袖なしのランニングタイプにしたのだ。

 私はセーラー服の上衣を軽くたたみながら理由を伝える。

「なるほどぉ」

 茜ちゃんをはじめ、皆が説明を聞いて、頷いてくれたことに、私はなんだかホッとした。

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