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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第一章 過去? 異世界?
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診察

 私g\一人参加しても意味が無さそうなので、ユミリンやお姉ちゃん、史ちゃんや加代ちゃんにも声を掛けてみるつもりで、後日改めて返事をすることにして貰った。

 看護師さんとしてはすぐに返事が欲しかったみたいだけど、前向きに検討して貰えるだけでもと言って理解してくれる。

 渡辺のお婆さんを始めとしたお婆さん達も、私が参加するならと前向きに検討してくれるそうだ。

 そんな話をしていると、別の看護師さんから、声が掛かる。

 今度は診察の呼び出しで、渡辺さんのお友達のお婆さんが診察室へ向かっていった。


 お婆さん達が人お降り呼ばれたところで、私に順番が回ってきた。

 お母さんと一緒にお婆さん達と別れの挨拶をしてから、診察室へ向かう。

 私の……正確には恭一の記憶としては、小森医院の先生は一人で、女性のお医者さんだった。

 診察室で出迎えてくれたのは、お年を召した男性のお医者さんで、柔らかな笑顔をたたえた穏やかそうな印象を受ける。

 先生の前の黒い革張りの回転する丸椅子に座るように促されて、私は「よろしくお願いします」と口にしてからゆっくりと腰を下ろした。

「えーと、林田凛華ちゃん……今日はどうしました?」

 先生の問いに、私よりも早くお母さんが答える。

「どうも、昨日学校で体調を崩したそうで、二回も保健室にお世話になったらしいんです」

 先生は質問に答えたお母さんに向けて「そうですか」と頷いた。

 その後で、先生はお母さんに視線を向けたまま「ところで、娘さんは月のものは?」と問う。

 すぐにお母さんが、黙ったまま、私の目を覗くように視線を向けてきたので、慌てて首を左右に振った。

「まだ……みたいです」

 お母さんの返事に、先生は「ふむ」と口にしてから、私に視線を向けてくる。

「ええと、凛花ちゃんは、熱っぽいとか、体の調子がおかしいとか、普段と違うなと思うところはありますか?」

 そう問われて、私は「特にないです」と答えた。

 少なくとも自覚症状はないし、一回目はともかく二回目は球魂を体から離したのが意識が飛んだように見えた理由なので、体調が悪いわけではないと思う。

 とはいえ、一応、一般には秘密にされていることもあって、球魂の事を説明できないので、診察に極力正確に答えるしか無いと私は考えていた。


「一応、風邪の症状が無いか見てみましょう。口を空けてくれるかな?」

 先生の指示に従って口を開けると、銀色の薄い金属のヘラが下に押し当てられた。

「うん、炎症は無いねぇ」

 私の口の中、喉の様子を確認した先生は「血圧を測っても良いかな?」と聞いてくる。

「あ、はい」

 そう頷いて自分の腕を見たが、どちらもセーラー服、それも紺の冬服に包まれていた。

「あの、脱いだ方が良いですか?」

 私がそう尋ねると、先生は一応そうして貰おうかな、制服の生地は案外厚いからね」と言うので、私は手首のボタンのスナップを外して、左腕だけ引き抜く。

 首の周りにめくり上げたセーラーを丸めるようにしてまとめ、腕を先生に向けて差し出した。

 先生は私の肘の付け根に聴診器の先を当てると、黒く太い革のベルトを二の腕に巻き付ける。

 手に収まる檸檬型のポンプを右手に握って、聴診器を左手で私の腕に押さえつけながら、ベルトとポンプから繋がる血圧計の目盛りに視線を向けた。


「うーん。血圧は低めかなぁ」

 プシューと空気が抜ける音がして、締め付けていた二の腕の革ベルトの圧迫が解除された。

「心音を聞いてもいいかな?」

 先生がそう聞いてきたので、私は慌ててシャツをめくり上げようと、スカートのベルトに挟み込んだシャツの裾を引き出す。

 シャツをめくり上げて、肌を晒すと、先生はすぐに聴診器を胸に押し当ててきた。

 冷たい感触が数秒おきに位置を変えていく。

 最初こそ冷たかったものの、私の肌から熱が伝わったのか徐々に、ヒヤッとする感覚は無くなっていった。

 お腹の上を含め数カ所で音を聞いた先生は「それじゃあ、反対を向いてくれるかな?」と言う。

 言われるまま、椅子の回転を利用して反対を向くとお母さんが私の背中に手を伸ばした。

 前と違って見えない背中側は上手くめくれてなかったらしく、お母さんがセーラー服とシャツを押さえてくれたらしい。

 改めて聴診器が触れる感覚がして、そこから再び数秒ごとに場所を変えていった。


「呼吸器や心臓の音に異音はないようだから、疲れが出たのかもしれないね」

 先生の言葉に「はい」と答えて頷いた。

 私の認識としては原因は神世界への移動と球魂の切り離しなので、疲れではないけど、先生としてはそう推測するしかないんだろうと思う。

「特に心配は無いと思います……ただ、原因がわからないと心配でしょうから、一応血液検査もしてみましょう」

 先生の言葉に、私が同意するよりも早く、お母さんが「わかりました。お願いします」と答えた。

 すると、先生は「茅野さん」と横にいた看護師さんに声を掛ける。

 呼ばれて近づいてきた茅野さんだと思われる看護師さんから私に視線を移した先生は「茅野さんはベテランの看護婦さんだから、注射痛くないからね」と柔らかな声で微笑んだ。

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