心変わりの
「なるほどねー」
下校途中、今日の同好会としての活動内容を報告すると、お姉ちゃんはそう言って大きく頷いた。
「私としては異論は無いよ。まあ、アイドルグループの公演の方は、クラスとの兼ね合いもあるから即答できないけど」
まどか先輩はそう言って少し申し訳なさそうに言う。
「あら、私は参加するわよ。凛花と同じグループなんて、良いじゃない」
まるで対抗意識を燃やしているかのようなお姉ちゃんの発言に、まどか先輩は「良枝、ちょっと考えてから話しなよ」と溜め息交じりに切り返した。
「なによ」
口を尖らせて不満をアピールするお姉ちゃんに対して、まどか先輩は「クラスの出し物もあるし、演劇部の文化祭公演もあるだろ? 今回も体育館と多目的室、音楽室で、3ステージは舞台が設置されるとして、時間割がどうなるかわからない。姫をはじめとした皆は一年生、私たちは三年生なんだ。例えばクラスの出し物がステージを使うものだった場合、同好会の割り振りが重なってしまうこともあるかもしれないだろう?」と諭す用に言う。
これに対して、お姉ちゃんは「じゃあ、クラスの出し物をステージを使わないものにすれば良いじゃない」といって明るい笑みを見せた。
まどか先輩は一瞬絶句してから「良枝、クラスのことなんだから、自分の希望だけで決まるわけないだろ?」と溜め息を吐き出す。
「凛花とのステージのためなら、無理を通すけど?」
冗談に聞こえないお姉ちゃんの発言に、私は慌てて「お姉ちゃん早まらないで」と声を掛けた。
「え~~?」
不満そうにこちらを見たお姉ちゃんに「例えば、学校のステージだけじゃなくても、舞を披露することは出来るんじゃない?」と言ってみる。
すると、委員長が「それは良いわね」と言って皆の目を集めた。
「神様に奉納する神楽とは別に、夏祭りの舞台で私たちのオリジナルの舞いを披露させて貰えば、もっと舞手に興味を持って貰えるかもしれないわ」
委員長はそこで少し間を置いてから、更に「より成功を収めれば、鈴木家か、少なくともこの地域の女の子じゃないとって言っている頭の硬い長老方の考えを改めさせられるかもしれないわ」と言い加えた。
そもそも伝統が途切れかけていたのは、志津さんが大学に進学してこの地を離れたから……な、わけだけど、そもそも何故代役を立てなかったのかが、疑問だったのだけど、委員長が言った『長老方』が要因らしい。
結局、私が舞手に選ばれたことで継続することになったのだけど、神子さんが押してくれた……だけで、伝統が途絶えても良いとまで考えていたと思われる『長老方』の意見が変わった……もしくは、主張を封じられたというのは、少し無理があるような気がしてなら無かった。
だからこそ、私は一つの仮定を立てる。
それは『種』が何かしらの影響を与えた可能性だ。
この世界を作ったのは『種』であるのは間違いない。
その意図まではわからないけれど、私を舞手にすることに何らかの思惑じゃないかということだ。
「どうかした、凛花ちゃん?」
考え込んでいた私に千夏ちゃんbが話を振ってきた。
私は何も考えず「長老さん達が、何で私が舞手になることを許可してくれたんだろうと思って」と考えていたことをそのまま口にする。
すると千夏ちゃんは何の躊躇いもなく「凛花ちゃんが可愛いからじゃない?」と言い出した。
「かわ……いや、でも、ほら、家は近いけど、同じ町内の住人じゃないわけでしょ?」
私の切り返しに、今度はオカルリちゃんが「確かに、さっき聞いた反対理由を考えると矛盾してますね」と言ってくれる。
理解を得られたことで、安堵と嬉しさで「そう、だよね!」と強めに反応してしまった。
すると、千夏ちゃんから少し不満そうな声で「単純に凛花ちゃんの可愛さを見て、お願いしようって思ったんじゃないの?」と言う。
「千夏ちゃん、長老さん達が可愛いからって理由で許可出すのは、なんか、嫌じゃない?」
私がそう言うと、千夏ちゃんは「う~~ん」と腕を組んで唸りだした。
その後で千夏ちゃんは「長老さん達っておじさんが多いんでしょ? なら、可愛い女の子が立候補してくれたら、許可しちゃうんじゃない?」と言い出す。
サラリと言い放つ千夏ちゃんに、ちゃんとした反論が出来ず、私は何も返せなくなってしまった。
そんな私に、委員長は「まあ、実際の考えはどうかはわからないけど、皆反対はしなかったんだから良いじゃない」と言う。
更に委員長は「それでも納得出来ないなら、神様の思し召しでいいんじゃないかしら?」と言い加えた。
「あー、神様が凛花様の舞いを所望しているという考えは、不思議としっくりきますね」
頷きながら言うオカルリちゃんの考えは、私の想定に近い。
それが神様か『種』かという違いはあるけど、人知を超えた存在に何らかの意図があって、長老さん達の考えが変わった。
今は考察のレベルで、その意図も読めないけど、多分正解だろうという漠然とした自信はある。
どちらにせよ、練習を重ねて本番を迎えれば何かがわかるのではと、これ以上の考察は先延ばしにすることにした。




