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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第八章 準備? 不備?
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合同練習

「同好会として、歓迎します」

 委員長はまどか先輩にそう言うと一緒に付いてきた春日先輩に「春日先輩、仕切りをお任せします」と話を振った。

 お姉ちゃんが「え? そこは部長の私じゃないの?」と口を尖らせて文句を言い始める。

 委員長としてもそのリアクションは想定していなかったのか、少し硬直してから、苦笑いを浮かべて「ここしばらく進行は春日先輩でしたので」と真面目に切り返した。

 そのやりとりに溜め息を吐き出しながら、まどか先輩は「面倒くさいから味方するんじゃありません」とお姉ちゃんの頭に軽めのチョップを放つ。

 すると、頭を押さえたお姉ちゃんが私に駆け寄って来て「凛花、見て、暴力を振るわれてしまったわ。お姉ちゃん、苛められているわ」と言い出した。

 今日はどうしたんだろうと思うぐらいの燥ぎっぷりに、一瞬戸惑ってしまった私は、つい「お姉ちゃん、本物?」と聞いてしまう。

 口に出してから、何を言ってしまったんだと我に返ったものの、時既に遅かった。

 シンと、皆が黙り込んで、再びソフトテニス部の練習の音が聞こえてくる。

 直後、まどか先輩を起点に笑いの渦が巻き起こった。


「もう、お姉ちゃんのどこが、偽物だって言うのよ」

 口を尖らせる普段と違って子供っぽいお姉ちゃんに、思わず「言動」と返してしまった。

 その後、沈黙を挟んで、まどか先輩が噴き出してしまい、それが再び皆に伝播していく。

 今回は、私の発言が切っ掛けだったのに加えて、ふざけたつもりでもなかったので、困惑するしかなかった。


「た、確かに、ちょっと、普段より、子供っぽかった、かも、知れない……わねぇ」

 腕組みをして言うお姉ちゃんの耳は、少し赤みを帯びていた。

 私も自分のやらかし出恥ずかしい思いをした経験があるので、なんとなく心境がわかってしまう。

「気にすることないよ、お姉ちゃん! そういう日もあるよ!」

 そう私が伝えると、お姉ちゃんは目を丸くしてから「そ、そうね、ありがとう」とぎこちなく頷いた。

 またもそこで、変な間が生じる。

 笑いに繋がるのを避けるように、お姉ちゃんは慌てて「それじゃあ、練習をしましょうか」と切り出した。

 私も、お姉ちゃんの必死な様子に、慌てて「そうだね!」と同意してから、皆に「早速始めよう」と、練習開始を促す。

 皆も苦笑しながらも合わせてくれたことで、合同……といっても全員演劇部所属な気がするけど……と、ともかく、合同の練習が幕を開けた。


 今回の練習は、四姉妹の配役が決まったので、その八人をA組B組に振り分けて、該当の組に所属していない四姉妹役を含めてくじ引きで役を振る方式で、最終下校時刻と呼ばれる学校を出なければいけない時間の三十分前まで繰り返し台本読みをすることになった。

 A組が先に四姉妹役を務めるので、今日は、メグは松本先輩、ジョーは尾本先輩、ベスに赤井師匠、エイミーに千夏ちゃんの二年生と一年生唯一の経験者の構成に決まる。

 結果、B組は委員長のメグ、ユミリンのジョー、ベスの加代ちゃんに、エイミーのオカルリちゃんという構成になった。

 このA組、B組は暫定なので、夏休み前までに何度か入れ替えをしながら、相性を考慮して最終決定していく。

 春日先輩の仕切りであっという間に段取りも決まり、私たちは台本をてに、役柄決めのくじ引きに挑んだ。


 いつもの四色に数字とアルファベットのカードを使って配役決めをするのだけど、いつの間にか……というか、ここに来る前に用意していたのであろうカードと配役の対応表が既に黒板に張り出されていた。

 青の0なら四姉妹の父のマーチ氏、赤の0なら四姉妹の母マーチ婦人といった具合で、二週目からは同じカードを引いたら引き直しということで、今日のところは同じ役を演じない。

 次々と配役が変わっていくことに対応できるか、まったく自信は無いのだけど、気持ちは挑戦してみたいという思いでいっぱいだった。


 四姉妹だけのシーンを割愛しているのに加えて、台本読みということで動きがない分、一回のペースはかなりはやかった。

 思ったよりも回数を重ねることが出来て、それなりの数の役に挑戦できたのだけど、何故か、ことごとく、男性役が嵌まっていないらしい。

 皆直接は言わないのだけど、私が父のマーチ氏をやったり、お隣のローレンス老人を演じると、なんとも言えない温かい目を向けてくるのだ。

 もちろん、私の被害妄想の可能性も多分にあるのだけど、私が視線に気付くとそっと目を逸らすので、見当違いでは無いとは思う。

 そんなモヤモヤする点はあったものの、合同演習としては、一人が何役にも挑戦できたことで、皆の向き不向きを春日先輩をはじめとしたオーディションの審査側のメンバーも把握出来たようだ。

 明日のオーディションに活かすとも言っていたので、成果はあったのだろう。

 こうして合同練習を終えた私たちは全員で片付けをして、休憩中に顔を覗かせた大野さんともお別れの挨拶をしてから教室を施錠して、大野先生へ報告をしに私は委員長と社会科準備室へ向かった。

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