表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第八章 準備? 不備?
413/475

次へ

「えーーと」

 活動終了と言うことは、この教室も返すべきなのではと言う当たり前の事に気が付いた私に、大野先生は笑顔のままで「君たちなら悪用しないと信じていますから、下校の際に施錠をして報告に来てください」と言ってくれた。

 中瀬古先生も同意を示すように頷く。

 信じてくれたことが単純に嬉しかったのもあって、頭を下げながら口にした私の「ありがとうございます」は思っていたよりも弾んでいた。

 だからか、大野先生は「まあ、何かあれば私が責任を取りますから、のびのびとやってください。この年寄りの首一つあれば多少のことはどうにかなるでしょう」と言い出す。

 不意打ち気味に放たれたこともあって、ジンと教室内は静まり返り、丁度コートでの練習を始めた大野さんの所属するソフトテニス部のボールを打つ音が響きだした。


「まあ、冗談ですよ」

 にこやかな感じで言う大野先生だけど、今更その言葉でひっくり返せるほど、空気は凍てついてしまっていた。

 中瀬古先生もその空気に苦笑を浮かべて「大丈夫、普通に演劇部の練習をするだけなら問題なんて起らないだろう?」と言ってくれる。

 誰も反応を返せない中、深呼吸をした委員長が「そうですね。信頼に応えるつもりです」と代表して答えた。

 それに続いて皆も一斉に頷く。

 大野先生はゆっくりと立ち上がって「それでは、私は社会科準備室か職員室言いますので、何かあったら読んでください」と言い残すと部屋を後にした。

 続いて立ち上がった中瀬古先生は、大野先生が教室を出て行ったのを確認してから皆に振り向く。

「あー、大野先生は皆を信じているからこそ、ああ言っているだけだから、毛追いすぎないようにな……何というか、子供っぽい悪戯なようなものだよ」

 苦笑いを浮かべ長そう言ってくれたけど、その言葉だけで気を緩める人は居なかった。

 自分の目でその事をはっきり感じ取ったであろう中瀬古先生は苦笑したまま頭を掻く。

 その後で、中瀬古先生は「難しいも知れないが、余り着にしすぎないようにな」と言い残して教室を後にした。


 先生方が去ったところで、私たちは顔を見合わせた後、ほぼ同時に溜め息を吐き出した。

「「「はぁ~」」」

 声が重なったこと、そして直前までの緊張があって、思わず噴き出してしまった私を皮切りに、皆に笑いが伝播していく。

 皆が笑い出すと、不思議と止められずお腹が痛くなるまで笑うことになってしまった。


「まあ、あれよ、いつも通りにしていれば、何の問題も無いわ」

 委員長のザックリとしたまとめに、皆一応に頷いた。

「とりあえず、オーディションに向けて、台本を読もうか」

 私の提案に皆が頷いてくれる。

「あ、でも、役が決まってる人は、オーディション参加しないよね?」

 今居るメンバーで言えば、むしろオーディションに参加することになるのは、私、史ちゃん、茜ちゃんの三人だけだ。

「あれ?」

 冷静に考えた今、練習が必要なのは過半数にも満たないことに気付いた私は「もしかして、練習要らない?」と浮かんだ言葉を口にする。

 そんな私に真っ先に答えをくれたのは千夏ちゃんだった。

「凛花ちゃん。練習はいつでも必要だよ。それに、四姉妹に決まっていても、公演に穴が開かないように別の役も与えられるから、結局、オーディションには参加するし」

「あー……」

 薄らと春日先輩がそんな事を言っていたような気がしてきた私は、思わず千夏ちゃんから目を逸らす。

 対して、千夏ちゃんは軽く溜め息を漏らしてから「そんなわけで、凛花ちゃんたちだけじゃなくて、皆、明日発表される役のオーディションを受けるわけだから、練習は必要なの」と言った。


「じゃあ、改めて、オーディションする役を書き出すわね」

 そう言いながら委員長はどこからか持ってきたチョークで、教室前面の大きな黒板に役名を書き出していった。

 四姉妹の両親に、学校の先生、お隣さんに学友と名前が並んでいく。

 千夏ちゃんからの補足情報によると、同じシーンに登場しないキャラを掛け持ちする可能性があるようで、そこも踏まえて春日先輩は配役準備をしてくれているそうだ。


 委員長が未だ配役の決まっていない役名を書き出して、更に昨日決まった四姉妹の配役も黒板に書いたところで、教室にお姉ちゃん達が遣ってきた。

「お邪魔するわね~」

 そう言って教室には行ってきたお姉ちゃんに続いて、まどか先輩が「丁度、良い頃合いだったかな?」と黒板を見ながら言う。

 更に二人だけでなく「お邪魔します」と言って、金森先輩が入って着た。

 しかも、他の二年の先輩方も、最後には春日先輩と大下先輩も顔を見せる。

「あれ? 先輩方?」

 私が驚いてそう口にすると、お姉ちゃんが「今日は自主練習の日だからね、相談して、こちらに合流させて貰うことにしたのよ」と言った。

 すると、まどか先輩が「こら、良枝、順番が違うだろ」と溜め息交じりに指摘する。

「えー」

 不満そうに切り返すお姉ちゃんを華麗にスルーしたまどか先輩は、私たちを見やりながら「同好会の皆様の迷惑じゃなかったら合同練習を受け入れて欲しいんだけど、ダメかな?」と尋ねて来た。

しばらくの間、予定が立て込んでしまったため、更新が不安定になるかも知れませんが、更新可能な日は16時に掲載しますので、予めご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ