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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第八章 準備? 不備?
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杞憂と解決

「それでいい!?」

 驚いた表情を見せる委員長に、私は改めて皆の表情を確認してから「良いと思うよ」と返した。

「自分たちで考えた振り付け、しかも練習している途中で、正しい……というか、文献に書かれてる舞い片側化ったら変えろってことなのよ?」

 強めに言う委員長に、私は「そこは皆わかってると思う」と返す。

「無駄になるかもしれないのよ?」

 この委員長の言葉に、アッケラカンとした長子でユミリンが「無駄にはならないだろ」と言い切った。

 何故という疑問の色の籠もった視線を、委員長は言葉の主であるユミリンに向ける。

「なるじゃ無い。だって振り付けを差し替えるのよ?」

 険しい顔で言う委員長に、ユミリンは飄々とした態度のままで「神楽舞いの時だけじゃなくて、他のステージとかでやれば良いだろ?」と切り返した。

「え?」

 ぽかんとした顔を見せた委員長に、ユミリンは「自分で言い出したんだろ? リンリン達のステージをやるって? その時に採用すれば良い」と続ける。

「え? え??」

 戸惑いと言うよりは混乱で、同じ音を発すだけになってしまった委員長に「神様に奉納する神楽舞いは確かに本番は年に一度だけど、それ以外の場で舞いを踊ったらいけないってことはないだろ?」とユミリンは苦笑気味の表情を浮かべていった。

 対して、委員長は上手く頭を回せていないようで、固まってしまったまま、瞬きだけを繰り返している。

 ユミリンは反応がすぐにはないと判断したのか、話を先生方に振った。

「えっと、神社以外でも舞衣を待っても問題は無いですよね?」

 問い掛けに対して、大野先生と、中瀬古先生は顔を見合わせる。

 目で会話をしたらしく、頷いた中瀬古先生が口を開いた。

「今の話の流れだから詳細が違っていたら言って欲しいが、要するに、神社での神楽舞い意外に、学校でも君たちで舞いを踊っても問題ないか聞かれたってことであってるかな?」

 ユミリンは中瀬古先生の問いに大きく頷く。

 それを確認してから、中瀬古先生は「問題ないどころか大歓迎だ。地域に根ざすというのも学校教育の目的でもあるし、もし可能なら、文献で伝わっている舞いと君たちの考えた舞いとの比較なんかも展示できれば、文化発表としてもとびきりの物になるぞ」と徐々にテンションを上げながら言った。

 大野先生も「神社の宣伝にも繋がりますし、同好会の設立趣旨にも乗っ取っていますし、皆さんの負担を考えた上で、無理のない範囲で取り組めたら良いですね」とにこやかに微笑む。

 と、ここまで話が進んだところで、委員長が「あ~~~」と頭を抱えて声を吐き出した。


「だ、大丈夫、委員長?」

 私がそう尋ねると、委員長はもの凄い勢いでこちらに振り返った。

 勢いよく舞う髪の毛も相まって、少し怖くて、無意識に身体が惹いてしまう。

 そんな私に、グイッと乗り出すように顔を近づけてから、委員長は盛大に溜め息を吐き出した。

「委員長?」

 私が声を掛けるとゆるゆるとした動きで身体を起こす。

 それからもの凄く疲れた顔をして「まさか、いろいろ考えていたことが、取り越し苦労だったなんて」と漏らした。

 すると、オカルリちゃんが「凛花様もそうですけど、頭が良すぎる人って、自分一人で考え過ぎちゃって、行き詰まったりするんですよねー」と言い出す。

 委員長は苦笑顔で「言葉もないわ」と溜め息交じりに言った。

「そんなわけで、ちゃんと相談してください。私たちはただ示して貰った道に従うだけの存在じゃなくて、皆がお互いを支え合いたいと思ってる仲間なんですから」

 胸を張って言うオカルリちゃんに、委員長は「そうね。その通りだわ」と笑みを見せる。

 そんな委員長の反応を見て、茜ちゃんは「えへへ」と笑いながら腕に絡みついた。

「あ、あーちゃん」

 驚いた様に声を上げた委員長だったけど、その表情は凄く柔らかいものに変わる。

 とっても微笑ましい姿に、口元が緩んでしまった。


「そもそも、私たちだけでアイドルグループを作るって話でしたけど、折角なので、同好会と合体させて、皆で舞いませんか?」

 加代ちゃんの発言に、委員長は茜ちゃんやオカルリちゃん、ユミリンと当初の『おチビッ子クラブ』のメンバーではなかった人達に視線を向けた。

 直接声に出す人は居なかったけど、反対する人は居なさそうに見える。

 委員長はそんな面々の反応を確認した上で、加代ちゃんに「先輩達にも話してからだけど、良い案かもしれないわね」と言って笑った。

 なんとなく良いところに着地したなと、ホッとしたところで、私は大事なことを忘れていることを思い出す。

 思わず「あっ」と声が出てしまった私を皆が振り返った。

「皆、なんだか、神楽舞いのことに集中してしまっていたけど、明日も若草物語のオーディションはあるんだよ! 練習しないと!」

 私がそう訴えると、委員長は「確かに、先輩方もいないし、舞いの振りについても話し合いをしてからが良いだろうから、神楽舞いの話は一端ここまでにして、練習した方が良いかもしれないわね」と頷いてくれる。

 その上で、委員長が「というわけで、神楽舞いについての話と練習はここまでにしたいのですが良いですか?」と尋ねると、先生方は「それでは今日の活動はここまでにしましょう」と頷いてくれた。

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