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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第八章 準備? 不備?
411/477

穴埋め

「まず、今、明確にわかっているのは凛花ちゃんの担当する姫巫女の舞いね」

 私は委員長の言葉に大きく頷いた。

「志津さんやビデオから私が学んでいる舞いですね」

 そう返した私に、委員長は「文献に書かれている内容や、以前見たことがあるって言うお爺さんやお婆さん方の情報から、九人の舞手が姫巫女の他に居たというのもわかっているわ」と続ける。

「問題はその舞いの内容が定かじゃ無いと言うことですね」

 オカルリちゃんの発言に対して、委員長は「そう、そこをどうするかってことね」と頷いた。

「えーと、ちなみにですけど、その文献の情報と、お爺さん、お婆さんのお話からだと、どの程度、振り付けの見当が付いているんですか?」

 私が小さく手を挙げてそう尋ねると、大野先生も委員長も目を逸らしてしまう。

「……人数は、わかった……レベルなんですね?」

 二人の様子から私は予測した現状を口にしてみた。

 これに対して、大野先生と視線を交わし経った後で、委員長が「姫巫女とは違う舞いだったって言うのは確実ってところもわかったわよ」と言う。

「つまり、何にもわかってないってことだな」

 言い難かったことを、ズバリとユミリンが言い放ったことで、一気に場の空気が凍り付いた。


 空気が固まったまま居心地の悪い時間が少し過ぎた後で、恐る恐るといった感じで加代ちゃんが委員長に「え、えーーと、ま、舞いはやるのは間違いないんだよね?」と問い掛けた。

「そうね……それは皆に伝えたとおり、やりたいわ」

 もの凄く硬い顔で委員長は頷く。

「ちなみに、舞いの全貌を文献から紐解くのには時間がかかるんですよね?」

 ユミリンと並んで遠慮の無いオカルリちゃんが、ズバリと踏み込んだ。

 これに対して、大野先生が「先ほども言ったように、紐解くつもりでは居ますが、間に合うかは怪しいところですね」と申し訳なさそうに言う。

「元々の舞いはまだ紐解けていないし、間に合わない可能性が高い、それでも凛花様の本番の日は近い、そこで、私たちとしてはどうするか……って事だよね?」

 オカルリちゃんの言葉に、委員長は渋い顔で「ええ」と頷いた。


「じゃあ、もう選択肢は一つしか無いと思うけど?」

 迷いなくそういったオカルリちゃんに皆の視線が向いた。

 それが自分の考えを皆が求めているのだと判断したのであろうオカルリちゃんは「自分たちで振り付けを考える……でしょ?」と委員長に問い掛ける。

 すると、委員長は静かに目を閉じた。

 委員長の反応としてはそれだけだったけど、少なくとも否定の意思は感じ取れない。

 つまり、振り付けを自分たちで考えるしかないと考えていたようだ。


「んー、そもそも、私たちが振り付けを考えても良いのでしょうか?」

 史ちゃんが自分の中に湧いた疑問をそのまま口にした。

 その疑問には、誰もすぐに反応できず、沈黙が続く。

 そんな空気を破ったのは。茜ちゃんだった。

「あんまり変じゃなければぁ、大丈夫じゃなぁい?」

 茜ちゃんは更に「だってぇ、神様に見て貰うのが目的なんだからぁ、神様見てください~って気持ちを込めてぇ、一生懸命頑張ればぁ、怒られないと思う~」と言い加える。

 それを耳にした皆の顔に、それぞれ驚き、納得、同調と、様々な反応が浮かんだ。

 そんな中で、中瀬古先生が「確かにその通りかもしれないな。元々、神楽舞いは神様への感謝を伝えたり、あるいは皆の願いを伝えるために奉納されるものだからね。神様に喜んで貰おうと思う気持ちがあれば、いいんじゃないかなとオレも思うな」と言う。

「まあ、アレだよな。昔の神楽舞いを復活させたいって言っても、内容がわからなければ、どうにか穴埋めしなきゃいけないんだから、そもそも、自分たちで考えるしかない分けだよな」

 身も蓋も無い言い方だけど、ユミリンの言うとおりではあった。

 ただ、委員長だって同じように考えたんじゃ無いかと思うと、煮え切らない感じだったことに疑問が残る。

 だから私は「委員長なら、同じ結論を出してると思うんだけど、何か他に言い難いことがあった?」とストレートに聞いてみることにした。

 委員長は一瞬目を丸くした後で、素早く瞬きを繰り返す。

 それから大きく溜め息を吐き出して、少し黙り込んだ後、ゆっくりと口を開いた。

「私のお婆ちゃんがね」

 なんだか言いづらそうに始まった委員長の言葉がそこで途絶えてしまったので「うん」と相槌を打つ。

 すると、委員長は「子供の頃に見た、完全な神楽舞いをまた見たいって言っててね……それで、自分たちで振り付けを考えるしかないのは理解しているんだけど、ね……」と引っかかりながら口にした。

 また立ち止まってしまった委員長の背中を押すつもりで、私はもう一度「うん」と口にする。

 委員長は改めて溜め息を吐き出してから「勝手だとは思うんだけど、大野先生が解き明かしてくれた振り付けが判明したところは、元々の振り付けに変えて貰いたい……の」と言って私たちを上目遣いで見た。

 私はそんな委員長の考えを聞いてすぐに皆を見渡す。

 皆の様子を確認した私は「それで良いと思うけど」と委員長に告げた。

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