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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第八章 準備? 不備?
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衣装の手配

「正直、このまま明日が本番でも問題ないと思います」

 大野先生はそう言ってくれたけど、私は「ありがとうございます」と伝えてから「まだ衣装や装具を身に付けていないので……」と首を振った。

 私の返しに大野先生は「ふむ」と口にしてから、委員長に視線を向ける。

「衣装の貸し出しとかは、出来そうですか?」

 大野先生からの問いに対して、委員長は「はい。既に準備はしています」と頷いた。

「まず、巫女装束の方は……」

 委員長はそこで一端私の方を見てから「ちょっと調整が要りますので、もう頼んでます。今週末には手配できると思います」と続ける。

 なんとなく委員長の視線の意味はわかったけど、茜ちゃんが「凛花ちゃんはぁ、小柄だしぃ、細いもんねぇ、多少縫わないと着れないよねぇ」とはっきりと言い切った。

 茜ちゃんの話を聞いた私の反応を確かめるように、チラリとこちらを見た委員長は「まあ、しーちゃんと凛花ちゃんは体型がかなり違いますからね」と苦笑気味に言う。

 体格もある程度自分で調整出来る身としては、なんだか申し訳ないなと思うところだけど、委員長は「まあ、丈を詰めるだけなので、そんなに大変じゃないと、氏子会のおばさま方が言っていたから、あんまり気にしないでね」と言ってくれた。

 まあ、この世界に入り込んだ時点で身体の調整をしなかった以上、今更変えたら大事件間違い無しなので、申し出ることはないけど、やっぱり少し心苦しい。

「林田さん。そんな顔はしないでください。むしろ舞手のために何かしたいと思っている氏子さんは多いですからね。針子として協力できることを嬉しく思う人は居ても、迷惑だと思う人は居ませんよ」

 大野先生は優しい口調でそう言ってから「ですよね、木元さん?」と委員長に話を振った。

 委員長は「はい、その通りです」と大きく頷く。

 その上で「むしろ、凛花ちゃんのために縫いたいって言う人ばかりで、三揃えも直してくれるそうです」と委員長は言い加えた。

「でしょう? 皆、林田さんの協力を感謝していて、その気持ちに応えたいんです。だから、迷惑を掛けているなんて思わなくて良いんですよ」

 大野先生の優しい言葉に、私は胸が熱くなるのを感じながら「はい」と頷く。

 ここで、委員長が「でも折角なので、調整して貰う巫女装束の数は倍にして貰いました」と言い加えてきた。


「えっと、なんで、六揃えも?」

 正直理由に見当が付かず、戸惑いだけでそう尋ねていた。

 委員長は「凛花ちゃんの分に、千夏ちゃん、史ちゃん、加代ちゃん。四人だと、予備も含めて六揃えは欲しいでしょ?」と言い切る。

「へ?」

 私は反射で声を出すと同時に、名前の挙がった三人を見た。

 三人とも驚いた素振りはまるでなく、むしろ、やる気に満ちた目をこちらに向けている。

「それって……」

 私がどういうことと尋ねるより先に、中瀬古先生が「もしかして、集団で神楽を舞うんですか!?」と興奮気味に席を立った。

「はい。皆、凛花ちゃんの助けになりたいと言ってくれて」

 大きく頷きながら委員長も三人を見る。

「私は女優を目指してるんだから、神楽舞いを覚えるのも良い勉強になると思うの! というわけで、私が勝手にやりたいと思っただけだから、変に気にしないでね」

 千夏ちゃんはそう言ってくれているけど、私の為という部分だってあるハズだ。

 だけど、気にしないでと言われた以上、私は敢えて触れずに「うん」とだけ返す。

「私は初心者ですし、運動神経も足りないかも知れませんが、それでも、凛花様の支えになればと思って志願しました。もしも、上達しなかったら、遠慮無く外してくださって良いので、練習だけはお供させてください!」

 真っ直ぐに私を見て言う史ちゃんのオモイに、私は簡単に大丈夫だよと返すことは出来なかった。

 だから「一緒に、舞いを任せて貰えるように頑張ろう」と返す。

 史ちゃんは「はい!」と力強く頷いてくれた。

 加代ちゃんは「私も自信は無いし、その……リンちゃんを支えたいって気持ちもあるけど……」と言って、なんだか申し訳なさそうに視線を逸らしてしまう。

 その姿を見て、なんとなく、好奇心か、仲間はずれは嫌だって思いが、動機の中心だったんじゃないかと思って、私は「加代ちゃんも参加してくれるなんて、心強いよ。私も神楽舞いを任せて貰えることになった時、ワクワクしたし、なにより加代ちゃんも、おチビッ子クラブのメンバーだもんね。神楽舞いを通じて連携を高められるね」と伝えた。

 私の考えが当たっていたかどうかはわからないけど、加代ちゃんは黙って何度もコクコク頷いている。

 その様子からは否定的な様子は見られず、内心でホッとしたところで、委員長が「なんだか、言い難いんだけど……」と言い出した。

「言い難い?」

 振り返りながら委員長にそう聞き返すと「参加するのは三人だけじゃないくてね、私たちもだから」と自分を指さす。

「え?」

 てっきり、千夏ちゃん、史ちゃん、加代ちゃんが加わるだけだと思っていたのだけど、そうではなかったようだ。

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