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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第八章 準備? 不備?
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気遣いと侵入

「なあ、リンリン」

 もの凄く堅めの口調でユミリンが話しかけてきた。

 ユミリンの纏った気配に少し気圧されながらも、どうにか「な、なに?」と聞き返す。

「いくら、いつものメンバーだからって、油断しすぎじゃないか?」

 深刻そうに言いながらユミリンは視線を私の頭の上に向けた。

 対して、私が返答するよりも早く、頭の上のリーちゃんが溜め息を吐き出しながら『だの』と頷く。

 もの凄く申し訳なさそうに、史ちゃんにも「凛花様、皆の不安を解消するためというお考えはとても素晴らしいとは思うのですが……」と言われてしまった。

 更に、腕組みをしたオカルリちゃんは「アレですね、いい人な部分が少し悪い方向に出てしまった感じですね」と、何度も頷く。

 そんな二人に続いて、茜ちゃんが「だからぁ、やらかすのよぉ」と笑い出した。

「うぐっ」

 返す言葉もない私の頭を撫でながら千夏ちゃんが「凛花ちゃんが皆を思って行動できる優しい子だってのは皆わかってるから」と優しく慰めてくれる。

 正直、千夏ちゃんに慰められて落ち着いていく自分を感じてしまい、自分の精神性がかなり幼くなっているのを痛感してしまった。


「リンちゃん……すぐ動きたくなっちゃうのはわかるけど、いったん考えないと駄目だよ?」

 加代ちゃんに、真面目な顔で壮年を押されてしまった私は「ゴメンなさい」と頭を下げた。

「うん」

 一度頷いてから、加代ちゃんは「別に謝ることじゃないけど、一端、リンちゃんの申し訳ない気持ちを受け止めます」と私の目を見て言う。

「だから、リンちゃんも、一端受け止めて、考えるようにしてね」

 強い気持ちを込めて言っているのがわかる加代ちゃんに、私は「気をつけます」と頷いた。

「うん」

 加代ちゃんも頷きで応えてくれて、改めて気をつけなければと思ったところで、横からユミリンが「まあ、リンリンの場合、その都度反省もするし、何が悪かったかもすぐ理解するし、態度も改めようとするけど、いざ事が起きると、全て忘れて動いちゃうからなー」と言ってくる。

 ただ、残念あがら私自身心当たりのあることで、皆にも納得の内容だったせいで、皆、黙って何度も頷き出した。


 信じてくれているのに、信用が無いというもの凄く意味のわからない私のブレ具合に、正直どうしたら良いのかという思いがあった。

 とはいえ、究極的には自分の行動を自分で戒めるしかないのは間違いない。

 頑張ろうとは思うけど、この決意も状況次第で貫けないことを皆が理解してしまっているのが情けない限りだ。

『まあ、主様の失敗はよかれと思ってのことだけに、止めれば良いというわけではないからのう』

 うーむと唸りながら、頭の上でリーちゃんがそう呟くと、皆がほぼ一斉に同意をし始める。

 そうして、仕方が無いとか、止めるのは違うとか、嬉しいは嬉しいとか、様々な意見が出たところで、ユミリンが「ま、結局、近くに居るうちらがどうにかすれば良いって事だよな」と雑にまとめた。

 にも拘わらず、史ちゃんは「そうですね」と頷き、加代ちゃんは「うん、頑張ろうね」と続く。

 オカルリちゃんは「凛花様の手助けになれるなって、むしろ誇らしいですしね」と微笑んだ。

「お、おね……もだちとして」

 皆の前だから『お姉ちゃん』を無理矢理『おともだち』に言い換えた千夏ちゃんは「支えるのは当然だわ」と続けて胸を張る。

 皆の言葉を聞いて、ニコニコしながら茜ちゃんは「凛花ちゃんはぁ、本当にぃ、皆から大切にされてるねぇ」と話を振ってきた。

 少しくすぐったくはあったものの、私は「うん」とだけ答える。

 すると、私の気恥ずかしさが伝わったのか、皆もなんだか恥ずかしそうに視線を逸らしだした。


 私の頭に視線を向けたユミリンが「じゃあ、リーちゃん、偵察よろしくな」と言い出した。

『うむ。良いじゃろう』

 ユミリンに応えたリーちゃんはそう言って私の頭の上で座った状態から四足で立ち上がる。

 そのまま、私の頭を離れるのかと思ったのだけど、リーちゃんは『主様、向かって良いかの?』と尋ねて来た。

「あ、う、うん。お願い」

 聞かれるとは思ってなかったので、少し戸惑ってしまったものの、どうにか返事をすることに成功する。

『では、見てこようかの』

 そう口にした直後、頭の上で、リーちゃんが特別教室に向けてジャンプした。

「あっ」

 思わず声が出たのは、リーちゃんの飛来する先、そこにはリーちゃんなら通り抜けられそうなサイズの小さな窓があったのだけど、それがきっちり締まっていたのである。

 ぶつかると思って目を逸らそうとした瞬間、視界の隅でリーちゃんが窓を擦り抜けたのが見えた。

「え?」

 驚きで声を漏らしながら慌てて視線を戻すと、窓を通り抜けて、窓の向こう側に消えていく狐の尻尾が目に入る。

 思わず「リーちゃん擦り抜けられたんだ!」と衝撃がそのまま声になった。

 直後、ほぼ同時に皆の「「「知らなかったの!?」」」という驚きの声が重なる。

 そして、そのまま、私と皆がお見合いする状況になってしまい、沈黙が訪れた。

 不意に静寂の時が訪れる。

 が、それが長く続くことはなく、誰からともなく噴き出して、私たちはお腹を抱えて笑うことになった。

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