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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第八章 準備? 不備?
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練習の場へ

 放課後、お爺ちゃん先生こと大野先生から預かった鍵を持って、私たちは用意してくれた教室に向かっていた。

 先頭は部屋を手配してくれ、大野先生から直接鍵を預かった委員長で、続いて私、史ちゃん、千夏ちゃん、その後ろに加代ちゃん、オカルリちゃん、最後にユミリンと茜ちゃんという構成になっている。

 私としては、新人戦の練習や明日のオーディションの練習に集中して欲しいなと思っていたので、委員長に案内だけして貰ったら解散と思っていたのだけど、結局、お姉ちゃんとまどか先輩を除いたいつものメンバーになってしまった。

 お姉ちゃんとまどか先輩がこちらにいないのは、自主活動日とはいえ、部室を開けるから責任者として離れられないのに加えて、どちらか一人は残っていないといけないらしく、残るのがどちらか決められなかったのである。

 私としては、神楽の練習に向かうので、他の皆には自分の役や明日のオーディションに向けた練習をして欲しいと思って、同行を断わったのだけど、割り当てて貰った教室に興味があるとか、人気が無いところに私一人では不安だとか、好奇心と心配を理由に逆に拒否されてしまった。

 更に、委員長は先回りをして、大野先生から、神楽だけでなく、一緒に演劇部の演技練習をしても良いかと尋ねて、許可を取っていたらしい。

 お姉ちゃんやまどか先輩をはじめとした演劇部の先輩たちがいる部室の方が、練習になるのではとも言ったのだけど、先輩がいなくても、自分たちで考えをぶつけ合って高める練習もしたいと言われてしまっては、それ以上、断わることは出来無くなってしまった。


 委員長は手元の鍵に取り付けられた楕円形のタグにマジックで書かれた文字と、教室の窓にテープで貼り付けられた紙に書かれた教室メイトを見比べて「多目的室3……うん、ここね」と頷いた。

 辿り着いたのは、校舎の角の教室で、普段授業で使っている教室とサイズは変わらない。

 他の教室同様に、手前と奥にドアがあるのだけど、奥側は廊下の隅なのもあって、互い違いに重ねられた机が整然と重ねられて居るせいで、人一人が横向きでやって建てるスペースしかなかった。

 私たちが囲む前のドアの前は開けているモノの、教室内をのぜ蹴るはずの窓部分には紙が貼られていて、委員長が確認した教室名が書かれているので中を直接見ることが出来無い。

 加えて、教室側が南に面しており、私たちの達郎かは北側にあるし、頭上の蛍光灯は問い持っていないので、多少昏く、独特の不気味さがあった。

 この雰囲気にオカルリちゃんは「なんだか、ワクワクしてきますね!」と言って、目をランランと輝かせて、声を弾ませる。

 そんなオカルリちゃんに無邪気な笑顔を浮かべて乗っかったのは茜ちゃんだった。

「学校の怪談とかに出てきそうだよねぇ~」

 楽しそうな二人に対して、不安そうに「だ、大丈夫……だよね?」と声を掛けてきたのは加代ちゃんで、ギュッと唇を真一文字に結んで無言のまま、私の手を握ってきたのは千夏ちゃんである。

 ユミリンは史ちゃんは普段と変わった様子はなく、意外にもすぐに鍵を開けてしまいそうなイメージだった委員長が動きを止めていた。


「委員長、どうかした?」

 私がそう問い掛けると、委員長はピクッと身体を小さく震わせてから、無言でドアの取っ手に手を伸ばした。

 委員長が惹くような動作を見せると、ドアはガッと少し重めの音を立ててて震える。

 一音も発しないので、考えがわからず、私はもう一度「委員長?」と声を掛けてみた。

 私の方に振り返った委員長は少し堅めの顔で「鍵がかかっているか、確認したのよ」と言う。

 なるほどと思った私は「確かに、誰かがスペアの鍵で開けて使ってるかもしれないもんね」と頷いた。

 委員長は私の返しに一瞬フリーズしてから「そ、そうね」とぎこちなく頷く。

 その反応に違和感があるので、もう少し話してみようかと思ったのだけど、茜ちゃんが「みーちゃん。鍵ぃ、早く開けよぉ~」と急かしてきた。

「そ、そうネ、いつまでも廊下に居ても仕方ないものね」

 ぎこちなさは多少薄れたモノの、やっぱり硬いという印象が拭えない。

 そう思ったところで「はい、凛花ちゃん」と言って、委員長が鍵を差し出してきた。

「え?」

 考えても居なかった動きに驚きの声が出る。

 委員長は私の手を取って、掌を上向きにするとその上に空き教室の鍵を置いた。

「この教室をメインで使うのは凛花ちゃんだから、自分で開け閉めできるようにしておいた方が良いわ」

 委員長が開けるんじゃないのと聞く前にそう言われてしまった私は「確かに」と頷いてその問いはウチに引っ込める。

 私が鍵を握ると、委員長はホッとした表情を見せた。

 そこはかとなく周囲に満ちるホラー感に、私が鍵の受け取りを拒否すると思っていたのかもしれない。

 そう考えた私は、周囲を確認してからリーちゃんの仮初めの身体を具現化した。

「入る前に、リーちゃんに安全確認して貰うから、心配は要らないよ、皆!」

 委員長が私に鍵開けを押し付けたと思われないように、私はそう言って皆に向けて、頭を少し前に出して、その上に乗るリーちゃんアピールする。

 その後で、皆が微笑ましい表情を浮かべているのを確認してから、私はドアに向き直った。

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