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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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深夜の語らい

『正直、ちょっと……ほんのちょっとだけど、ずるいなぁって気持ちはあるんだよ……あるんだけど、失敗も出来無いなと思うし、プロ意識って話を聞いてしまうと……ね』

 布団に入って目を閉じた私は、リーちゃんに頭の中で言い訳をしていた。

 対して、リーちゃんは『まあ、わらわの力をどう使うかも含めて、主様次第ではないかの?』と返してくれる。

『そもそも、出来ることをしないというのは、主様自身が自分に設けた制限だからのう。制限をどうするかも主様の気持ち次第だとは思うの』

 リーちゃんは基本的に、私の考えに対してはほぼ肯定してくれるので、その言葉はある意味当然とも言えた。

 なので、だからこそ、敢えて『方針をコロコロ変えるのって、どう思う?』と尋ねてみる。

 すると、元々が機械だからか、普段から返答はかなり早いリーちゃんが、私の問い掛けに対して、黙り込んでしまった。

『そう……じゃなぁ』

 歯切れの悪い返しに、困らせてしまったなぁと申し訳ない気持ちになってくる。

 とはいえ、リーちゃんの意見……というよりも、どう切り返してくるのかが来なって、意地悪な自分を自覚しながらも続きを待ってしまった。


『柔軟性があって良いのではないかの? 凝り固まって一つを貫くよりも、新たに得た情報や考え方を柔軟に取り入れられるということは、よりよい結果に結びつくことが多いからの』

 それがリーちゃんの結論だった。

 もの凄く気を遣って貰っている気がする内容だけど、正直、否定されなかったことに安心している自分がいる。

 が、続くリーちゃんの『とはいえ』の一言に不穏な空気を感じ取った私は、思わず目を見開いてしまった。

 常夜灯の灯った部屋の中、回りで眠り千夏ちゃんやお姉ちゃん、ユミリンの寝息が聞こえている。

 身近に近しい人の気配を感じているのに、不思議と沈黙の中に一人取り残されてしまったような孤独感が私の中に広がり始めていた。

 私はその奇妙な状況に堪えきれず、リーちゃんに『とはいえ?』と続きを求める。

 勿体ぶる様子もなく、リーちゃんは『心変わりは早いような気はするかのう』と言い切った。

 それ自体には自覚があっただけに、リーちゃんならそう評するだろうとは思っていたので、ショックはない。

 むしろ『その通りです』としか言い様はなかった。

 が、リーちゃんのことアガ予想外の方に展開していくのは、ここからだったのである。

『まあ、女心と秋の空という言葉もあるからのう。主様も少女らしい容姿に、心の有り様も重なりだしたのではないかの?』

 その言葉に、私は一瞬思考停止してしまった。


 停止から再起動した私はとりあえず『元々は、男心と秋の空という言葉だったらしいよ』と切り返してみた。

 対して、リーちゃんは『故に、主様にピッタリであろう?』と返してくる。

 少女の身体に思考が近づいたと揶揄してるだけでなく、元々の言葉の『男心』から『女心』に変わったことまで含んだ上でのチョイスだったことに、私は二の句を継げなくなってしまった。

 加えて、この言葉選びの核心は違う。

『優柔不断だとでも、言いたいのかな、リーちゃん?』

『主様、わらわはそんな事は思うておらぬのじゃ。そもそも、主様は即決できるではないか』

 急な肯定に、自分でもチョロいと感じながらも、ちょっと嬉しくなって締まった。

 その隙を突いて、リーちゃんが『だから、言うておるとおり、素晴らしい柔軟性じゃなと思うておるよ』と追撃してくる。

 そこに含みがあるような気がして『なんだか、素直に受け取れないのだけど?』と、言葉の裏に何かあるんじゃ無いかという疑いの気持ちを込めて切り返した。

 すると、リーちゃんは『主様、疑うことは容易く、信じることは難しいという……故に、仕方が無いこととは思うのかが、わらわは主様に信じて貰えぬことが悲しいのじゃ』と言う。

 そんなリーちゃんの言葉を受けて、私の中で疑ってしまったことに対する罪悪感が湧いてきた。

 その罪悪感を心の中で留めきれなくて、私は『その、リーちゃんの気持ちを考えてなかった。ゴメン』と謝罪をする。

 すると、リーちゃんからは『主様……流石に、チョロすぎて不安になるのじゃが……』と、とんでもないことを言い出した。

 リーちゃんの言葉に、思わず「なっ」と声を発してしまった私は、慌てて両手で口を押さえる。

 皆が寝息を立てているのに、変な声を上げれば起こしてしまうかもしれないと、ドキドキしながら周囲の様子を探った。


 不意に声を出してしまったものの、皆を起こしてしまうほどのボリュームでなかった様で、回りから起きる気配がしなかった事に、私は胸を撫で下ろした。

 安堵しながら目を閉じたところで、改めてリーちゃんとの話し合いに突入する。

『チョロいってどういうこと? 私を騙したってこと?』

 いくらリーちゃんとはいえ、少し腹が立っていたので、言葉が強めになってしまった。

 そんな怒り心頭の私に対して、リーちゃんは『わらわは真剣に心配しているのじゃ』と深刻な様子で返してくる。

 想定外の態度に、私は『どういうこと?』と怒りも忘れて聞き返していた。

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