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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第七章 偶然? 必然?
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愛のある

「言い難いんですけどね、凛花様」

 いつになく深刻な声でそう話しかけてきたオカルリちゃんに、私は「え?」と思わず声が出てしまった。

「非常に言い難いんですけど、そのように何でも引き入れてしまうから、お姉様方も配慮せざるを得なくなったんじゃありませんか?」

 オカルリちゃんの指摘がビシッと胸に突き刺さる。

「む、向いてないだけだよ、新人戦、が……」

 どうにかひねり出した返しに、オカルリちゃんは横の首を振ってから、ズィッと下からのぞき込むように顔を寄せて「自覚、ありますよね?」と問うてきた。

「うぐっ」

 ズバリと突き刺さるオカルリちゃんの指摘に、私は言葉を詰まらせる。

 それを見てオカルリちゃんは盛大に溜め息を吐き出した。

「凛花様は自分が許容量を超えるとパンクしてしまう自覚はありますよね? ご自分でも言っていましたから」

 凄みのある圧の強い笑顔を向けながらオカルリちゃんは問い掛けてくる。

 思わず助けを求めて視線を巡らせたけど、皆、心配そうな目を向けてくるだけだった。

「お姉様方は、その点を考慮して、凛花様の抱えるモノが増えすぎないように、調整する意味でも、四姉妹の役を振らなかったのもわかりますよね?」

 オカルリちゃんの指摘したところは、はっきり言われたわけではないけど、言い回しや反応から、読み取れることだけに、頷きたくはなかったけど、圧に負けて頷いてしまう。

 私の反応を見て、改めて溜め息を吐き出したオカルリちゃんは「凛花様。別に凛花様を責めようというのではないのです」と柔らかい口調で言った。

 直前との変化に顔を上げて視線を向けると、オカルリちゃんは困り顔で笑む。

「神社のことで協力してくれる茜さんに、恩返しをしたい気持ちはとっても尊敬する素晴らしいモノだと思います。でも、それで、凛花様が一杯一杯になってしまったら、茜さんが申し訳ない気持ちになりますよね?」

 ズバッと正論で切り捨てられた私は「そのとおりです」と返すしかなかった。

 そんな私を援護しようと口を開いてくれたのであろう茜ちゃんの発言を「待ってぇ、ルリちゃ……」と言ったところで掌を向けて、オカルリちゃんは止めてしまう。

「茜さんが責めないのはわかっていますが、ここは堪えてください」

 オカルリちゃんの言葉に、茜ちゃんは「う、うん~」と戸惑ったように頷いた。


「凛花様。敢えて言わせて貰いますが、相手を思うこと、心から協力したいと思ってすぐ行動に移せることは美徳ですし、凛花様の魅力だと思います」

 真剣な顔でそう言われてしまった私は頬が熱くなるのと同時に、何も言えなくなってしまった。

「けど、心のままに何でも請け負うのは良くありません。凛花様が疲弊してしまうのもいけませんが、折角手を差し伸べられたのに、その相手の助けになりきれないという事態が起るかも知れません」

 オカルリちゃんの言うことはもっともだと思う。

 安請け合いをして、結局、やりきれなければ、迷惑をかけるだけになってしまうのだ。

 どれだけ相手を思っていても、結果が伴わなければ、絵空事に過ぎない。

 自分の浅はかさに思い至ったところで、オカルリちゃんは「では、皆が思っているであろうことを言いますね」と言い出した。

 その発言で、明らかに空気が変わる。

 どうしてだろうと思っている間に、オカルリちゃんが続きを口にした。

「凛花様が手を伸ばしてしまうのは仕方ないことですし、それを止めるなんて出来無いおを私たちは知っています。だから、まず、決めてしまう前に、周りに居る私たちに話してください。そうすれば凛花様だけが抱えないですむように手分けして良い方法を探し出して見せますから」

 晴れやかな表情で、そう言い放ったオカルリちゃんの肩を抱きながら、ユミリンが「おまえ、わかってるなー」とにこやかな顔で笑う。

 史ちゃんも「やりますね。田中る」と腕組みをして頷いていた。

「まあ、あーちゃんのお寺を手伝うのなら任せて、経験もそれなりにあるしね」

 委員長の発言に、どこか慌てた様子で茜ちゃんは「じゃ、じゃあ、私はぁ、神楽ぁ、神楽のおてづだい頑張るよぉ」と挙手をしながら訴えてくる。

「えっと、何だろ、えっと……そ、そうだ、真由ちゃん情報をしっかり伝えるよ!」

 加代ちゃんはそう言って両手の拳を握って、アピールしてきた。

 コミカルで可愛らしいアクションに、思わず口元が緩んでしまう。

 場の空気が和んできた中、千夏ちゃんだけが「私だけ、迷惑しか変えてないかも……」と暗い顔で呟いた。

「クラスも違うし……」

 どうしようもないことまで口にし始めた千夏ちゃんに、私はすぐに掛ける言葉を紡ぎ出すことが出来無い。

 でも、ライバルは違った。

「アホだな、千夏」

「むっ」

 暗い顔をしていた千夏ちゃんが、ただ一言、ユミリンの言葉で顔を不満に染める。

「手柄争いじゃないんだ。今、すぐ役立つことだけが必要じゃない。長く一緒に居れば、助けて貰うことだって、助けになれることだってあるんだ」

 ユミリンはそこでいったん間を置いてから「それとも、リンリンと短い付き合いで終わる気か?」と問い掛けた。

「そんなわけないでしょっ!」

 噛み付いてきた千夏ちゃんを笑顔で受け止めると、ユミリンは「だろ?」と返してから「これからさきな外付き合いなんだから、役立つ機会を待てば良いんだ……まあ、すでにリンリンのことだから、千夏に感謝してるところ、あると思うけどな?」と私を見る。

 なんだか流れに流されてる気もするけど、でも、それ以外の選択肢なんて無いと思った私は「もちろん」と大きく頷いた。

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